不妊治療ABC、初診や検査では何をするの?

これから不妊治療を始める方に、不妊治療専門・秋山レディースクリニックの 秋山先生が不妊治療の基本をお伝えしていきます。 第 2 回目は、初めての診察や検査ですることについてです。

秋山 芳晃 先生 東京慈恵会医科大学卒業。東京慈恵会医科大学附属病 院、国立大蔵病院に勤務後、父親が営んでいた産科医院 を継ぎ、不妊専門病院として新たに開業。O型・やぎ座。小 学校の頃にサッカーをやっていたという先生。今でもサッカー 観戦は大好きで、コンフェデレーション杯のテレビ観戦では 寝不足ぎみになられたそう。「ワールドカップがとても楽しみで すね。特に日本人では遠藤選手が本当に上手だなぁと、注目 しています」。

初診に行く時の心得!

●既往歴や今までに受けた検査は把握しておく
●検査料金は病院ごとに違うのでHPで確認を
●卵管に問題なければ治療はタイミング指導から
ぬーたろさん(専業主婦・ 21 歳) Q.生理不順や無排卵などで、2年ほ ど前、産婦人科に通っていたことが あります。子づくりを開始してから 約1年経つので、一度病院に行こう か悩んでいます。そこで、病院のH Pで費用などを確認しようとします が、どう見たらいいのかわかりませ ん。一般的に、最初にする検査は何? また毎回する検査はありますか?
病院に行くと、最初はタイミング 法で指導してもらえるのでしょう か。わからないことだらけです。

初診はお話を 聞くことからスタート

初めてクリニックに来た方には、まず、問診票を書いていただきます。
普段のご自分の月経周期はどのくらいかをメモでお持ちいただくとスムーズに書けると思います。
また、他の病院で検査を受けたことがある方は、検査名と結果をわかる範囲でまとめてきていただけると、今後の検査や治療の方針を決める参考になります。
既往歴の欄には、どこまで書くか迷われると思いますが、かかった病気が不妊症と関係するかはご自身ではわからないですよね。
手術した場所が卵管や子宮を支える靭帯に近いと、影響があることも。
ですから、小さい時からのわかる範囲の既往歴をすべて書いていただいたほうがいいでしょう。
当院の場合はまず、問診票をもとに、カウンセラーがお話を聞きます。
状況を確認しながら、妊娠の成立についてを一通りお話しして、不妊の原因は男性側、女性側でどんな問題があるのかをご説明します。
そして、どの時期にどういう検査をするかをお話しします。
もちろん、一通りの知識がある方には省略したり、前の病院で検査をされている方は、まだしていない検査のことだけをお話しする場合もあります。

検査には月経周期に あわせるものと いつでもOKの検査が

次は、検査についてお話ししましょう。
検査の時期は、月経周期に合わせて3つに分かれています(左ページ図参照) 。
①卵胞期(月経〜排卵前期)
②排卵期
③黄体期(排卵後1週間後くらい)
卵胞期には、ホルモン検査で脳の下垂体から出るホルモンと、卵巣から出るホルモンの値を測ります。
排卵の影響を一番受けにくい、生理開始2日目〜5日目に測ることで、その方の本来の、卵巣機能の予備能力がわかります。
次に、生理が終わってから排卵までの間に、 子宮卵管造影検査で卵管が通っているかを調べます。
この検査は、子宮の中に管を入れるので、子宮に少し傷がつくことが。
排卵が近いとその時期の妊娠に影響する可能性もあるので、排卵までに余裕がある時期に検査をします。
ヨードが入っている造影剤を使うため、ヨードアレルギーや甲状腺の病気で造影剤の使用を禁止されている場合は、この検査はできません。
代わりに、水を使う通水検査を行うことがあります。
子宮鏡検査では、子宮の中にファイバースコ ープを入れて、子宮内にポリープや子宮筋腫がないかを見ます。
この検査は超音波で何回か見ていき、そういった異常が疑われる場合に行います。
排卵期には、卵胞ホルモン測定を行います。
卵胞が成熟すると分泌される女性ホルモンのエストロゲンが、ピークの排卵の時期にどれくらい出ているかを調べる検査で、排卵直前に行います。
また、このホルモンが十分に出た時に分泌されるLHというホルモンと卵胞の大きさ(超音波卵胞測定)の関係も確認します。
ヒューナーテストと頸管粘液検査は、密接に関連しているため同時に行います。
ヒューナーテストでは、性交渉後に病院に来てもらい、顕微鏡で頸管粘液を見て、精子がいるかどうかを調べます。
この検査は、時によって結果に違いが出ることもあるので、結果が悪い場合は何回か行うことも。
頸管粘液検査では、頸管粘液の伸び具合や、サラサラしているか、量などを調べます。
黄体期の検査は、排卵して5日〜1週間くらい、高温相の半ばに行います。
排卵確認は、超音波で卵巣の中に卵胞がなくなっているかを確認します。
同時に、着床する場所である子宮の内膜が、妊娠に適した厚さになっているかを確認します。
ホルモン測定では、高温相を維持し、着床や妊娠を助ける黄体ホルモンと、着床を妨げ流産の原因になるプロラクチンを測定します。
当院の場合、貧血、コレステロール、子宮内膜症の腫瘍マーカーなどの一般的な血液検査、若い女性に病気が多い甲状腺の検査もこの時期に一緒にします。
その他の、精液検査、クラミジア抗精子抗体、感染症、卵巣年齢(AMH)などの検査は、月経周期に関係なくできます。
このように、いつ初診に行くかで、どの検査 から始めるかが変わります。
基本的に月経周期に関係なくできる検査は、初診時にする可能性があります。
また、検査の費用は、病院によって違います。
保険適用の検査か自費なのかも、病院やその方の状況によって変わります。
今回ご説明した検査の内容をご参考に、ご自分が通う病院のホームページなどで確認しておくとよいでしょう。
こちらからおすすめする検査は、このようにたくさんありますが、基本的には、検査と治療はご本人の意思に沿って進められます。
まずは、病院に行って、相談するところがスタートラインになるでしょう。

基本はタイミング指導から ただし年齢によっては 変わることも

ぬーたろさんは、生理不順がひどいそうなので、まずはホルモン検査や、排卵日を特定するために超音波検査が必要でしょう。
まだ21 歳と若いので、基本はタイミング指導からでいいと思います。
ただ、卵管がふさがっていると自然妊娠できないので、卵管の検査はしておくといいでしょう。
タイミング指導で妊娠しない場合は、次の検査をすることになります。
また、年齢が高い方や卵巣年齢が高い方の場合は、先に一通りの検査を受けることをおすすめします。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

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