不妊症検査は何をどこまですればいいのでしょうか【医師監修】

検査で「異常なし」と言われたのに妊娠に至らない……。 そんなとき、どうしても焦ってしまいがちですが、検査や 治療とどう向き合っていくべきか、浅田義正先生に伺いました。

【医師監修】浅田 義正 先生  名古屋大学医学部卒業。1993年、米 国初の体外受精専門施設に留学し、主 に顕微授精を研究。帰国後、日本初の 精巣精子を用いた顕微授精による妊娠 例を報告。2004年、浅田レディース クリニック開院。2006年、生殖医療 専門医認定。結果重視のアカデミック な視点で、最新の治療法を次々と取り 入れている頼もしきドクター。不妊治療 についてわかりやすく、親しみやすく理 解してほしいと、近々マンガ本の著書を 上梓するそう。今年8月には、遠方か らも通いやすい名古屋駅前に、体外受 精治療専門の分院を開業予定。

ドクターアドバイス

検査では、不妊の根本原因はわかりません。 治療によって原因を確かめながら、進めていくのです。
あいこさん(主婦・年齢秘密)からの投稿 Q.不妊検査は、皆さんどこまでされているのでしょうか? 私はひと通りの検査をして異常なく、 ※ イミング療法で半年が経ちました。 私が受けた検査は、初診日に血液検査を1回、排卵日近くに ※ ュナーテストを 2回、主人の精子検査1回、 ※ 宮卵管造影検査1回。基礎体温は安定していて 高温期も10日以上あるのですが、これ以上の検査は必要ないのでしょうか。 検査結果に異常がないなら、なぜ妊娠できないのかな……と思ってしまいます。 

不妊基礎検査について

まず、あいこさんが受けた検査について、どう思われますか?
浅田先生 初診日の血液検査というのは何の検査かわかりませんが、ホルモンの値を調べるのであれば、月経周期の何日目頃に測定できるかがだいたい決まっています。
それから、ヒュナーテストはすごく古典的な検査で、抗精子抗体があるかどうかを調べるのであれば、血液検査で調べられます。
卵管造影検査は、僕はレントゲンではなく超音波で造影剤を流します。
そのほうが痛くないので。
それと、基礎体温はあまりあてにしていません。あくまで参考資料ですね。

原因は、分からないことが多い

あいこさんは、治療以前の検査自体にも不安を抱いているようです。
浅田先生 おそらくドクターから「不妊症検査とは何か」という説明がなく、迷ってしまったんでしょう。
当院では、初診前の説明会で、スライドを使って詳しく説明します。
まず、妊娠を希望して、2年間以上性生活を行っているにもかかわらず妊娠の成立をみない場合が不妊症といえます。
どこかが悪いから「不妊症」なのではなくて、結果が出ていなければ「不妊症」なんですね。
しかし、どうしてそうなるかというと、原因はわからないんです。
従来の原因分類では、男性側の原因なら精子がない、もしくは少ない、性交がうまくいかない、女性側の原因なら卵巣や卵管、子宮がうまく働かない、病気など……。
しかし、こういった分類があっても、これら以外の「その他」の項目にあてはまる人が多い。多くの人は原因不明なんです。
いろいろな要因がありますが、今一番大きな原因といえるのが、社会の問題。
晩婚化・晩産化で不妊現象が出てきている。これは加齢の影響といえますね。

「見かけの原因」と「本質的な原因」

基本的な検査で異常がなくても、妊娠できるわけではないんですね。
浅田先生 「見かけの原因」と「本質的な原因」とを分けて考えないと見誤りをします。
基本検査は見かけの原因を見つけるものですから、「異常がない」という結果は「治療の流れのスタートラインにつける」というだけの話なんです。原因がないと誤解しないようにしてください。
この結果は、今のところはすぐに人工授精体外受精をしなければならない状態ではない、というだけなんです。
治療を進めていくなかで、もしもっと「本質的な原因」があった場合は、人工授精や体外受精も必要かもしれないということです。
「検査では不妊の根本原因はわからない」と思っておいたほうがいいと思います。

不妊症の本当の原因

僕は独自に「不妊症の本当の原因」を具体的に4つ挙げています。

ピックアップ障害

排卵した卵子が卵巣からうまく飛び出せないとか、卵子がちゃんと卵管に入らないことです。
それは卵巣や卵管周囲の癒着が原因になります。

受精障害

2つ目の「受精障害」は、精子と卵子が出会っても受精卵ができないケース。
精子が悪いのか、卵子が悪いのか、簡単にはわかりません。

卵子の質

3つ目は「卵子の質」で、卵子そのものが古くなっているということ。
ヒトの卵子は胎児のときから存在していて、 20 年 30 年、場合によっては 40 年経ってから受精卵を作るわけです。体外受精などを行ってみると、高齢の方の卵は途中までしか育たず、多くはダメになってしまう。
なぜかというと、細胞分裂のときに染色体異常を起こす率が高くなるからです。

着床障害

そして、4つ目の「 ※着床障害」は、子宮筋腫が多くあったり、※ 子宮腺筋症などが原因で、子宮内膜の状態が悪かったり、まだよくわかっていませんが、着床のしくみに異常がある場合です。

治療を進めて分かることがある

それでは、「異常がないのになぜ……?」と思い悩まず、治療を進めてみることが大切ですね。
浅田先生 妊娠というのは、排卵された卵子が卵管に取り込まれて、精子が子宮を通り抜けて卵管まで行き、そこで卵子と精子が出会って受精が起こり、受精卵が発育しながら子宮に運ばれ着床して、妊娠反応が陽性になって、そこで初めてうまくいったということがわかります。
しかし、この過程はミクロの世界のことですから、どこまでがうまくいっていて、どこからうまくいかなくなったかは、確かめようがない。
普通なら、誰でも「悪いところだけ治して自然に妊娠したい」と思うでしょうが、不妊治療の多くは悪そうなところをバイパスして妊娠しようという治療になります。
だから、治療方法を変えてみて、結果が出るかどうかで逆に判断する。
治療の流れとしては、基本検査をして、タイミング療法で様子をみて、半年で結果が出ないようであれば、排卵していても排卵誘発をしたほうがいいですし、治療の方法もステップアップしていくわけです。
それでも結果が出なければ人工授精、体外受精に進む。
こういうお話を2時間近くかけて説明することで、治療を非常にスムーズに行うことができています。
事前に説明を聞くと、安心して治療に臨めますね。やはり先生との信頼関係が大事なんですね。
浅田先生 不妊治療というのは、いいかどうかを確かめて進んでいくものではありません。確かめながら進んでいくのです。
ドクターとの信頼関係がなければ、一歩も前に進めませんよね。

ですから、もしもその先生と信頼関係が築けないという場合には、ドクターを変えてみるのも一つの方法でしょうね。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。本サイトの全ての記事は医師監修です。