【Q&A】FTせずに体外受精でいい?~中島先生【医師監修】

うささん(32歳)

現在はタイミング法。
右卵管狭窄のため、4月以降はFTもしくは体外受精をすることを勧められています。
年齢や子宮筋腫の再発を考えると、FTを挟まずに体外受精の方が良いのでしょうか。
自然妊娠へのこだわりや、妊娠に対する強い焦りはないですが、子宮筋腫の既往もあるため適切な判断が知りたいです。

福岡ARTクリニックの中島章先生に伺いました。

【医師監修】中島 章 先生 先生 (福岡ARTクリニック)
鹿児島大学医学部卒業。久留米大学病院産婦人科、国立成育医療センター周産期診療部不妊診療科(現・国立成育医療研究センター)などを経て、2025年9月、福岡ARTクリニック開業。サッカー観戦が趣味で、特にアビスパ福岡を応援しているそう。

※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

ご相談内容について、これまでの検査結果やご年齢、治療経過を踏まえて総合的にお答えいたします。

右卵管狭窄が妊娠に与える影響について教えてください。

まず右卵管狭窄が妊娠に与える影響についてですが、今回のように卵管造影検査(HSG)である程度の疎通性改善がみられている場合、右側で排卵した周期でも妊娠の可能性が全くないわけではありません。卵管の機能はやや低下している可能性はありますが、自然妊娠や人工授精による妊娠も十分に期待できる状態と考えます。そのため、現時点で直ちに高度生殖医療に進むのではなく、一般不妊治療を一定期間検討することには十分な意味があります。

②子宮筋腫の既往がある場合、体外受精の方が効果的でしょうか?

次に子宮筋腫の既往がある場合の治療選択についてですが、筋腫そのものよりも、術後の影響として卵管周囲に癒着が生じている可能性が重要になります。このような場合、卵管の機能的な働きが低下している可能性があり、FT(卵管鏡下卵管形成術)による改善効果はやや限定的となることがあります。一般的に閉塞症例ではFTの疎通率は約85%、その後の一般不妊治療で約40%が妊娠し、そのうち約8割が半年以内に妊娠するとされていますが、今回のように術後癒着が関与している可能性がある場合には、狭窄解除の成功率は50%程度と見積もるのが現実的です。
また、約15%に再閉塞が起こることも考慮する必要があります。したがってFTは有効な選択肢の一つではありますが、積極的に優先すべき治療というよりは、あくまでオプションとして位置づけるのが妥当と考えます。

③FTを挟まずに体外受精を選択するメリットを教えてください。

FTを挟まずに体外受精を選択するメリットとしては、卵管機能に依存せずに妊娠を目指せる点が挙げられます。特に癒着の影響が疑われる場合には、卵管を介する過程を省略できる体外受精の方が合理的であり、治療の確実性は高くなります。
一方で、現在のご年齢(32歳)とAMHの値(3.71)からは、時間的に大きく急ぐ必要はなく、段階的に治療を進める余裕がある点も重要です。

④自然妊娠を目指す場合、どのような生活習慣を心掛けるべきですか?

自然妊娠を目指す場合の生活習慣については、すでに葉酸やビタミンDの補充をされており非常に良い状態ですので、これを継続してください。
それに加えて、子宮筋腫の既往がある方では鉄欠乏が隠れていることもあるため、貧血の有無やフェリチン値の確認を行い、必要に応じて鉄分補充を意識されるとよいと思います。
また、本格的な月経開始の3〜7日前から茶色の帯下が続くという点については、黄体ホルモンの分泌や子宮内環境に関わる問題が隠れている可能性がありますので、ホルモンバランスの再評価に加え、子宮鏡検査で出血しやすい病変がないかを確認することをお勧めします。さらに、排卵期から黄体期にかけて卵管の腫大(軽度の水腫など)がないかについても、超音波で丁寧に評価しておくことが重要です。

⑤先生でしたら、年齢や病歴を考慮した最適な治療法をどのように提案されますか?

最後に治療方針についてですが、私であれば、現時点では焦って治療を進める必要はないと考えます。まずは前述のように子宮内や卵管に異常がないことを再度確認し、問題がなければそれらの精査と並行してタイミングを2周期、その後に人工授精を3-4周期程度、左右に関わらず実施しながら、高度生殖医療についての計画書作成など、準備を同時にすすめていくことで効率的に妊娠を目指すことができます。

総合的には、右卵管狭窄はあるものの妊娠の可能性は十分に残されており、まずは一般不妊治療を段階的に行いながら、必要に応じて体外受精へ進むというバランスの取れた治療戦略が最も適していると考えます。
FTについては、ご本人のご希望や治療への考え方に応じて検討する「選択肢の一つ」として捉えていただくのがよいでしょう。

 

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