二人目不妊。着床のためにできることは?

2回移植で良好胚盤胞を移植するも陰性。通院先の限られた選択肢のなかで、着床率を上げる方法に悩むみかんさん。今後の治療の方向性や検査のタイミングについて、リプロダクション浮田クリニックの浮田祐司先生に教えていただきました。

みかんさん(29歳)からの質問 2回の採卵の末、4BBの胚盤胞を2回アシストハッチング有りで移植しましたが、かすりもせず陰性でした。hCG は0.0です。AMH正常、主人の検査も異常なしです。私は無月経で薬を飲まなければ、生理が来たことはありません。hCGを注射しても排卵出来ません。保険治療の回数も残り4回となって焦っています。 1度目は自然周期で移植しましたが、すぐに生理が来てしまいました。 2度目はホルモン補充で移植しましたが、かすりもしません。セカンドオピニオンで別の病院に行ったら、「ホルモン補充が足りないので、これでは絶対に妊娠できない」「2個移植でないと妊娠しない人もいる」と言われました。ルトラール1回1錠を3回、エストラーナテープを隔日3枚です。移植前に先生にウトロゲスタンの処方をお願いしましたが、取り扱っていないと言われました。また、病院の方針でSEET法、2段階移植、2個移植、移植後から判定日までの注射や検査はやっていない、と言われました。自宅でやっていることはお灸、早寝早起き、サプリ(ビタミンD、葉酸ラクトフェリン、DHA)、高タンパク低糖質の食事、毎日湯船に浸かる等です。一人目は自然妊娠でしたが、着床の窓等、反復着床不全に関わる検査を受けたほうが良いでしょうか? また、2個移植に可能性はありますか?ウトロゲスタン含む各種膣剤という選択肢がない中、どうにかホルモンを十分に補充することはできますか?
リプロダクション浮田クリニック 浮田祐司先生   兵庫医科大学付属病院、府中病院、兵庫医科大学篠山病院に勤務後、兵庫医科大学付属病院 産婦人科の助教に。英ウィメンズクリニックで不妊専門医療に携わった後、2020年開院。一般不妊治療から高度生殖医療までクオリティの高い治療を提供する県内有数の施設として、妊娠から出産まで手厚くサポート。

違う刺激法を試したり卵子の質を高めるサプリの摂取を

 

Q.みかんさんの治療状況について、どのように思われますか?

ご相談内容の中では、ご主人の精液所見や抗精子抗体は異常がないのに、顕微授精をされている理由が気になります。もう一つは、2回の採卵で胚盤胞が2つだけということです。この方の年齢とA M H(結果は異常なし)を考えると、胚盤胞の個数が少ない印象はありますね。このあたりに改善の余地があるのではないかと思います。

たとえば、採卵は2回とも同じ卵巣刺激法、または1回目と2回目は違う方法でされているかによって、胚盤胞の到達率は変わってきます。もし同じ刺激法でされているなら、次の採卵は違う刺激法に変えてみるのも一つです。それと同時に葉酸やビタミンDのサプリメント以外に、卵子の質の向上が期待できるP Q Qを取り入れてもいいと思います。

必要な治療を受けるために転院を視野に入れるのも一つ

 

Q.2度の移植は陰性で、通院先では使えるお薬や治療法が限られているそうです。

1回目の移植は自然周期、2回目はホルモン補充周期でされています。もともとお薬を飲まないと月経が来ない方なので、排卵障害があるのかもしれません。この方にはホルモン補充周期が向いていると思います。

いま使われている黄体ホルモン補充は、おそらくルトラールという飲み薬だけですね。これに天然型黄体ホルモンのウトロゲスタン膣剤を組み合わせると着床率、妊娠率が上昇するという報告があります。通院先では取り扱いがないとのことですが、有効な手段の一つですので、保険診療であればルトラールとウトロゲスタン膣剤の併用はおすすめしたいところです。

その他に、飲み薬の量を増やす方法もあります。ただ、保険診療ではこの選択肢は現実的ではないかもしれません。最近は黄体ホルモンの注射もありますが、通院先では移植後の注射は行っていないとのこと。そうなると現状の方法を繰り返すしか選択肢はなくなります。さらに、移植方法(SEET法、2段階移植、2個移植)についても、今の段階で実施するかどうかは別にしても、この先うまくいかない時は、どれも選択肢として検討される治療法です。このことを踏まえると難しい選択にはなりますが、必要な治療を受けるために、転院を視野に入れるのも一つかもしれません。

3回移植して結果が出ないときは積極的に子宮内膜の検査を

 

着床の窓や反復着床不全の検査は受けたほうがよいですか?

良好胚盤胞を2回移植しても妊娠に至っていないので、検査の考慮はされますが、まずは先にお話しした卵巣刺激法の見直し、卵子の質を上げるサプリメントの摂取、飲み薬と膣剤を併用したホルモン補充周期など、条件をきちんと整えたうえで、3回目の移植をされてみてはどうでしょうか。それで妊娠に至らないときは、積極的にERA検査と採血による反復着床検査、慢性子宮内膜炎検査を受けられるといいと思います。

妊娠や出産に適した体重をめざしましょう

 

二人目不妊は多いのでしょうか?また、その他のアドバイスをお願いします。

一番多いのは一人目を妊娠してから年数が経ち、女性が年齢を重ねることで不妊症になるケースです。この方はまだ29歳ですし、一人目を授かっておられるので、二人目の妊娠の可能性は十分あります。転院も検討されながら、諦めずにトライしてほしいと思います。

それと身長160cm、体重40kg(BMI 15.6)はかなり細めです。低体重は月経不順や不妊症の原因になります。詳細なデータが分かりませんが、ここに原因が隠れていることも考えられます。食事に気を使っておられるので、高タンパク、低糖質を突き詰めているのかもしれません。体にとっては糖質も必要ですので、偏りすぎると必要な脂肪がつきにくくなります。体重は少なすぎても、多すぎても良くありませんが、妊娠後のことも考えて適正体重(BMI 18.5〜25)を目安に、あと10 kgは増やすようにしたいですね。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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