流産を繰り返すのは夫婦いずれかの染色体異常が原因では?
AKさん(38歳)人工授精で妊娠・出産しましたが、出産前に2度流産の経験があります。出産後に2 人目を妊娠しましたが10 週で3度目の流産をしました。この時NIPT(出生前検査)でターナー症候群が見つかり、主治医からは「出産経験があるので卵子・精子に問題はなく、偶発的な胎児側の染色体異常による流産」で、卵子の老化も原因の一つといわれました。私かパートナーに染色体異常があるのではと心配です。
蔵本ウイメンズクリニック 蔵本 武志 先生 久留米大学医学部卒業、山口大学大学院修了。山口県立中央病院産婦人科副部長、済生会下関総合病院産婦人科部長を経て、1990 年オーストラリア・PIVETメディカルセンターへ留学。帰国後、1995 年蔵本ウイメンズクリニック開院。JISART(日本生殖補助医療標準化機関)前理事長。久留米大学医学部臨床教授。
一般的に流産の原因とは?
蔵本先生●流産の原因の約7割は受精卵の染色体異常が原因といわれています。受精卵の異常の多くは卵子側にあることが多いですが、精子側に問題がある場合も時々あります。男性の年齢が非常に高い場合や喫煙が多い場合などです。また、女性が30代後半になりますと、徐々に卵子の質が低下し、受精卵の染色体異常が増えてきます。AK さんは38歳ですから、卵子の老化も考えられますし、パートナーの男性は50代で喫煙の習慣があるそうですから、そこも気になるところです。
出産前後に流産を経験。夫婦どちらかの染色体異常を心配されていますが、どのようにお考えになりますか?
蔵本先生● AK さんは、3度目の流産の原因について、ターナー症候群だったとのことですが、これは主治医の先生もおっしゃられたように、偶然のもので、お二人どちらかの染色体異常というわけではないと思います。
それより、不妊の原因となる病名に「抗リン脂質抗体症候群」とあるのが気になります。抗リン脂質抗体が陽性なら、血管の末端で血液が固まりやすくなり、妊娠した場合胎盤への血行不良となり、流産しやすくなるからです。私は、これが大きな原因の一つではと考えます。
一度、血液凝固の検査を詳しく行うことをすすめます。通常、検査結果が陽性で、3回以上流産した場合は、抗凝固剤である低用量アスピリン(バイアスピリンR)製剤の服用や、低分子ヘパリン製剤の自己皮下注射を行うなどの治療を行うとよいでしょう。
先生なら今後どのような治療を?
蔵本先生●まず血液凝固系の詳しい検査を行ってください。どうしても心配でしたら、採血をしてお二人の染色体検査をされてもいいかと思いますが、私はそこに問題はないのではと思います。今後、一般不妊治療で妊娠されない場合は、より妊娠率の高い体外受精を行うことも選択肢です。
40歳前の治療開始なら胚移植は6回保険でできます。どうしても妊娠できない場合は、自費診療になりますが、体外受精をして胚盤胞まで発育させ、胚の染色体数の異常がないかを調べるため、胚盤胞の将来胎盤となる細胞を7細胞程度生検して、正常染色体数の胚を胚移植するPGT -A(着床前胚染色体異数性検査)を行い、染色体の数の正常なものを胚移植する方法があります。これですと着床率はだいぶ高くなり、流産率は約10%程度となります。