治療前に行われる検査の種類?   費用はどれくらいかか?    レディースクリニック北浜の奥裕嗣先生に教えていただきました。

 

浜  先生 1992年愛知医科大学大学院修了。蒲郡市民病 院勤務の後、アメリカに留学。Diamond Institute  for Infertility and Menopauseにて体外受精、 顕微授精等、最先端の生殖医療技術を学ぶ。帰国 後、IVF大阪クリニック勤務、IVFなんばクリニック副 院長を経て、2010 年レディースクリニック北浜を開 院。医学博士、日本産科婦人科学会専門医、日本 生殖医学会生殖医療専門医。

 

女性の初診はまず内診と超音波検査を行い、現状の体の状態を調べます。初診の結果を受けて基本検査に進んでいきますが、基本検査には不妊治療に「間接的な検査」と「直接的な検査」があります。

間接的な検査は、治療前に悪性腫瘍やそのほかの大きな病気が隠れていないかを確認する目的で行われます。子宮頸がん検査や、貧血、肝機能、腎機能を調べる生化学検査があります。さらに梅毒やB型・C型肝炎、H  I  V  などの感染症を調べる検査、風疹抗体検査、血液型不適合妊娠を予防するための血液検査を行います。

直接的な検査には、FSHLHエストロゲンの数値から卵巣予備能を調べる血中ホルモン検査があります。また、卵管因子は約 40%の方に見つかりますので、子宮卵管造影検査を必須にしています。当院に転院されてきた方のなかには、前の施設で子宮卵管造影検査を受けずに治療を進めてしまった結果、時間的にも経済的にも遠回りな治療をせざるを得なくなった方もいらっしゃいます。卵管の詰まりなどの疑いがわかってから検査をするのはもったいない話だと思います。この検査は二次的な細菌感染を防ぐために、必ずクラミジア抗原検査後に行われます。さらに  C A 1  2  5検査で子宮内膜症の有無を確認します。

これらの検査には「保険適用の検査」と「自費の検査」があります。子宮頸がん検査、血中ホルモン検査、子宮卵管造影検査、C A 1  2  5  検査は保険で受けられます。基本的に保険適用となる検査はできるだけ受けておかれるといいと思います。

治療方針の目安になる任意の自費検査もあり

 

治療前に受けていただきたい自費の検査もあります。それがAMH検査と抗精子抗体検査です。A MH(抗ミュラー管ホルモン)検査は卵巣予備能(卵巣年齢)を調べる検査です。たとえば、体外受精を行う場合、AMH、FSH、LH、E2の値は卵巣刺激の注射剤の種類や量を検討するための目安になります。また、年齢が若くて検査に問題がない方は、タイミング療法(半年)から人工授精(半年)という基本の流れで行われることが一般的です。しかし、AMHの値が低くて卵巣年齢が高い方には、治療スピードを速めたり、ステップアップする時の目安となります。

抗精子抗体検査では約2〜3%の方に陽性が認められます。数値にもよりますが、とくに    を超える強い陽性反応のある方は受精障害の可能性があります。このような場合、タイミング療法や人工授精での治療がむずかしいため、最初から顕微授精の適応となるなど、治療方針を検討する時の参考になります。そのほかのホルモン検査としては、プロラクチン検査や甲状腺ホルモン検査があります。

不妊原因の約半数は男性因子男性も早めに検査を

 

男性は精液検査をはじめ、女性と同じ理由で感染症検査、血液型検査、血中ホルモン検査をおすすめしています。とくにFSH、LH、テストステロンの数値を調べる血中ホルモン検査では、FSHの値が15~20ng/ml   と高い場合、非閉塞性の無精子症などの睾丸機能の低下が推測されます。そのため男性も早めに検査していただくことが大切です。

さらに男性に必ず受けていただきたいのが風疹抗体検査です。女性の多くは風疹の予防接種をされていますが、    30〜50代の日本人男性の約  40%は風疹抗体をもっていません。一番の問題は、抗体のない男性が抗体のない妊婦さんに風疹を移してしまうことです。たとえ奥様に抗体があっても、ほかの妊婦さんに移す危険性もあります。当院では、ご主人様に「日本から風疹を撲滅しましょう」というお話をし、検査を受けていただいています。

ただ、一回の予防接種では抗体がつきにくく、抗体が    倍以下では感染するリスクがあります。このような方にも風疹抗体検査をおすすめします。その結果、抗体がついていなければ、また予防接種が必要になります。風疹抗体検査や予防接種の多くは助成制度の対象になっています。お住まいの地域の自治体に確認されるといいと思います。

保険適用不妊検(例)

時 

  • 採血検査

月経2~5日目…1,320円(保険適用)  黄体化ホルモン、卵胞刺激ホルモン、 卵胞ホルモンなどのホルモン検査

から 排卵

  • 子宮卵管造影検査

月経6~10日目…約7,000円(保険適用、カテーテル代含む)  卵管の癒着の有無や子宮のかたちなどを調べる検査

排卵期

  • 超音波検査(エコー)…※ 1,600 円(保険適用)

※超音波検査はひと月における実施回数により料金が若干異なります。

※超音波検査は患者さまにより来院の回数が異なります。

黄体期

  • 採血検査

排卵後5~8日目…6,560円(一部保険適用)   黄体ホルモン、プロラクチン、甲状腺機能検査など

経時期に関係 (例)

  • CA125 検査…960 円(保険適用)

CA125は子宮内膜症、卵巣腫瘍などを 検査する腫瘍マーカー

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