低AMH、高FSH、片側卵管閉塞です

Q AMHが低く、FSHは高め。 卵胞も1つしか育っていません

岡 親弘 先生 慶應義塾大学医学部卒業。その後、同大学産婦人科に入局。 不妊症・不育症の研究治療を行い、「ローズレディースクリニック 等々力」院長を経て、2000 年に不妊症専門クリニック「東京 HARTクリニック」を開院。2005 年アメリカ生殖医学会にて、 ヒト胚盤胞のガラス化保存法とAS の有効性についてHARTグ ループとして発表し、日本人で初めて表彰される。いきつけの居 酒屋では、若い世代の人とも積極的に交流を持つという岡先生。 その時に黙ってスマホをいじっているカップルを見ると、「もっとお 互い目を合わせて語り合えばいいのに」と不思議に思うとか。

ドクターアドバイス

●卵巣の機能が低い場合、背景に子宮内膜症が隠れていることも。

●前胞状卵胞が5個以上見えた時にうまく刺激していけば、チャンスは十分あります。

ゆうこさん(34歳)からの相談 Q.34歳でタイミング法で半年間治療し、今月から体外受精を 始めることにしたのですが、その際にAMH値が1.0ng/ml しかないことを知りました。アンタゴニスト法で治療するこ とをすすめられ、毎日注射と内服薬を飲んでいたのですが、 卵胞が1つしか育っておらず、FSH値も29mIU/mlあり、 採卵中止となりました。ネットで調べると普通の人は卵胞が 20個とかできていて、採卵もそのくらいの数が採れるとい うのを見てショックを受けています。先生に聞いたら「毎回 1つのこともあるけれどやるしかない」とのことでした。私 は体外受精でも妊娠することは難しいのでしょうか。とても 自分が情けなく、悲しくてたまらないです。

34歳でAMHが 1.0ng/ ml しかないというこ とですが、その数値でも妊娠の可能性はあり ますか?

岡先生 AMH(抗ミュラー管ホルモン)は卵巣に残っている原始卵胞の数を知る目安になると考えられています。

34 歳で 1.0ng/ ml は 確かに低めの数値ですが、年齢的にはまだお若いので、出てくる卵子にはいいものがある と思います。

44 歳で 1.0ng / ml だったら採れる 卵子が少なくなってくるのに加え、採卵できても染色体異常などが増えてくるので、妊娠・出産率は下がってしまうかもしれません。

しかし、 34 歳なら質のいい卵子がちゃんと採れ るはず。

工夫して採っていけば、 0.5ng / ml で も何とかなるはずです。

では、AMH低値については心配ないとい うことですね。

岡先生 少し気になるのは卵胞が 1 個しか育っていなかったり、FSHが 29mIU / ml ま で上がったということです。

34 歳でAMH が 1.0ng / ml あったら、そこまでの状況には なりにくいと思うんですね。

もしかしたら背景に子宮内膜症などの病気 があるのかもしれません。

たとえばチョコレート嚢腫があると血流が悪くなるので、刺激をしてもなかなか反応しなかったり、卵胞が増えてもそれは炎症性のもので、中に良い卵子が入っていなかったり、空っぽだったりというケースが増えてきます。

そのへんの検査はされているのでしょうか。

背景に何もなければゆうこさんに合った治 療を行えば妊娠・出産の可能性はあるので、悲観することはないと思います。

では、どのような方法で進めていけばいい のでしょうか。

岡先生 AMHが 1.0ng/ ml だったら、7個く らい採卵していくのが目安になってくるで しょう。

まず、月経が始まってから2~3日目にエコーで前胞状卵胞が何個見えるか確認します。

5個以上見えたら、その時に注射を打って育てていく。

できるだけ卵子の数を確保したいというこ となら、 Duo Stimulation という方法もあります(当院ホームページ参照)。

採卵から5日後くらいにまた卵胞が育ちやすい時期が来るので、そこからまた刺激を始めれば1回目と同じようにいくつか卵子が採れるはずです。

たとえば6個×2回で 12 個確保できれば、妊 娠のチャンスはぐんと上がりますよね。

また、FSH値が高い周期は反応が悪い周 期だと考えてください。

29mIU / ml もあるのに クロミッドⓇを飲んだら、さらにFSH値が40 、 50 と上がってしまうので、刺激は行わず、 タイミング法や人工授精で臨んだほうがいいでしょう。

あせって無理をしてしまうと、逆に卵胞はうまく育ってくれません。

体外受精はまだ1回目とのこと。ゆうこさ んのようなケースは1周期で結果を出すのは難しいかもしれませんが、半年程度のスパンでみて、いい周期を見つけて採卵すれば、妊 娠のチャンスは十分あると思います。

お一人ひとり条件は違うので、ネットの情報に振り回されず、前向きに今後の治療に臨んでいただきたいと思います。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。本サイトの全ての記事は医師監修です。