凍結胚の移植を2個同時か、1個で移植するか迷い中

福田 勝 先生(福田ウイメンズクリニック)順天堂大学医学部・同大学院修了。米国カリフォルニア大学産婦人科学教室留学後、順天堂大学医学部産婦人科学教室講師を経て、1993年福田ウイメンズクリニック開院。2018年11月に、より最寄り駅に近く、広々とした場所にクリニックを移転したばかり。
ももたさん(45歳)からの相談  2年前に2個同時に凍結胚移植をして着床しましたが、化学流産に。現在、凍結胚(8cell、G1)1個保存中です。2個同時に移植したほうが妊娠率がアップすると聞いたため、もう1個凍結し、一緒に移植したいと思っています。ただ昨年から生理周期も19~21日と短く、卵胞も育たず半年採卵できない状態…。次の移植で妊活を卒業予定ですが、今ある1個だけで移植するか迷っています。昨年、子宮腺筋症が再発しましたが、移植前にできることがあればお教えください。

相談者は2個同時に凍結胚の移植をすると妊娠率が上がると思っています

凍結胚を1個戻すよりも2個同時に戻したほうが妊娠する可能性は高くなります。おそらく相談者のももたさんは2年前に2個同時に凍結胚を移植し、その際に着床した経験(その後胎囊確認できず化学流産)をしているのもあり、「2個同時戻し」を希望をされているのではないかと思います。初期胚移植の場合は2個移植が多く行われます。

ただ、昨年頃から生理周期が19~21日と短くなってきているとのこと。閉経が近づく=生理の間隔が長くなると思っている方もいるようですが、実際はその逆で閉経が近づいてくると生理周期が短くなることが多いです。年齢から推測すると、なかなか採卵できない、採卵できたとしても妊娠に結びつく卵子が採れないという状況が続く可能性があります。

9年前子宮腺筋症を患い昨年再発。子宮腺筋症は妊娠に影響する?

子宮腺筋症とは、本来なら子宮の内側にだけある子宮内膜が、内膜の外側にある子宮筋層に発生するトラブルです。子宮の壁を厚く、固くしてしまうのが特徴。出血量が多くなり、ひどい生理痛がみられます。不妊の原因の一つでもあります。移植前に子宮腺筋症の治療を進めておくのは時間がかかり、年齢を考えると難しいと思います。

次の移植で妊活卒業も考慮。アドバイスをお願いします

45歳なので、採卵できるのを待ったり、子宮腺筋症の治療をするよりも、今ある1個の凍結胚をできるだけ早く移植するのがいいでしょう。生理周期が短くなっているのは卵巣機能が低下しているサインなので、移植する際はホルモン補充周期できちんと子宮内膜の状態を整えてから移植することが大切です。

過去にうまくいった事例に倣いたいという気持ちはわかりますが、時間をかけたり、先延ばしにすれば妊娠に結びつく卵子が採れるという保証はありません。もし妊娠成立した場合、高齢になればなるほどトラブルを引き起こす可能性は高くなり、分娩時もリスクが上がる傾向にあります。そのためにも納得のできる早い時期に1個ある凍結胚を良い条件下で移植するのがいいと思うので、ぜひかかりつけの先生に相談してくださいね。

先生から
妊娠、出産のことも考え、できるだけ早い時期に今ある凍結胚の移植を!
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