漢方で体質改善するのと 不妊治療どちらがいいの?

 

渡辺 由美子 先生 兵庫医科大学卒業。兵庫医科大学附属病院、国立泉北病院、京都 大学医学部附属病院、国立京都病院での勤務を経て、醍醐渡辺クリニッ クで産婦人科医として勤務。同じ女性の患者様がリラックスして治療に 臨めるような雰囲気づくりを日々心がけているという先生。休日は本を読ん だり、映画を見たりとインドアでゆったり過ごされることが多いそう。
 

ドクターアドバイス

●漢方治療は、あらかじめ期限を決めて試されるとよいでしょう。

●卵巣機能の低下を考慮し、体外受精を検討されるのもひとつです。

しまこさん(32歳)からの相談 Q.不妊検査でFSH が 15mlU/ml と高 めで AMH が 2.13ng/ml でした。タイミング法で排卵誘発剤を飲み、 HMGやHCG注射、ヒスロン Ⓡ服用を数周期しましたが妊 娠に至りません。副作用がつらく、今は不妊鍼灸院にだけ 通っています。不妊治療の前は、高温期は36.6~8℃ が10~12日続きましたが今は36.4~36.5℃です。 ホルモン治療を受けたからでしょうか? ホルモン治療を やめて半年近く経ちます。このたび以前の病院ではなく、 漢方を処方してくれる不妊治療病院にホルモンの再検査 を依頼しました。漢方薬は体質改善が望めると聞きました。 引き続きタイミングは診てもらうつもりですが、またホル モン治療をするのは抵抗があります。ホルモン治療なしで、 漢方薬で体質改善したほうがいいのでしょうか? 

高温期の体温が上がらないのはなぜでしょ うか。

排卵誘発剤の影響は考えられますか?
渡辺先生 しまこさんは治療を終えて半年 経っていらっしゃることと、AMH(抗ミュ ラー管ホルモン)が 2 ・ 13ng / ml と低めで、 FSH(卵胞刺激ホルモン)が 15mIU/ ml と 高めですので、卵巣機能が低下していると 考えられます。
高温期の体温の低下につい ては、排卵誘発剤の影響よりも卵巣機能の 状態により体温が安定しないということが 考えられます。
ホルモン剤の効き目は人それぞれで、高温 期の体温が低下する人もいないわけではあり ません。
ただ、この方はすでにホルモン治療 をやめられてから半年が過ぎていますので、 お薬の影響は考えにくいと思われます。

鍼灸や漢方治療を選択されることについて はいかがでしょうか?

渡辺先生 当院でも患者様によって漢方や 鍼灸を併用することはあります。
鍼灸や漢 方治療が有効であるかもしれませんし、試 されるのはよいと思います。
不妊治療をや めて休んでいる期間に、ストレスから解放 されてパッと妊娠される方もなかにはい らっしゃるようです。
一方で、鍼灸や漢方治療でも妊娠に至らな い方もいらっしゃいます。
試されるのであれ ば 10 カ月、1年間とあらかじめ期限を区切っ て治療されてみてはいかがでしょう。
鍼灸や 漢方治療を試されている間にどうしても年齢 を重ねてしまいます。
しまこさんの場合は先 ほどもお話ししたように、もともと卵巣機能 が低下していると考えられますので、さらに 低下していく可能性が考えられます。

今後の治療を迷っておられるようです。

先 生からアドバイスをお願いします。
渡辺先生 ご本人のお気持ちもあるかと思い ますが、たとえば 10 カ月〜1年間の期限を目
安に鍼灸や漢方治療で結果が出なかった場 合、体外受精も選択肢の一つとして考えてい ただいたほうがいいと思います。
自然排卵し た卵子が必ずしも赤ちゃんになれるものかど うかはわかりませんし、排卵誘発剤を使って 複数個排卵したほうが不妊治療としては有効 だと思います。
排卵誘発剤には飲み薬や注射剤で卵巣を 刺激することで、卵胞を育て排卵を起こす 作用があります。
その一方で、人によって 吐き気、お腹の張りなどを感じる方もいらっ しゃいます。
副作用がつらいとのことです が、排卵誘発剤にはいくつか種類がありま す。
ホルモンの状態は一人ひとり異なるた め、当院では卵胞の数や大きさだけでなく、 ホルモンの値を検査・検討し、副作用につ いても考えながら、それぞれの方に適した 排卵誘発法を提案しています。
しまこさんの場合、鍼灸や漢方治療を間に 挟まれるのであれば、そのぶん年齢を重ねて ホルモン値のデータも変わってくると思いま す。
その時の状況によりますが、副作用が心 配ということであれば飲み薬を使った低刺激 法からスタートし、副作用の出方を慎重に みながら治療をすすめていかれてはいかがで しょうか。

 

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全記事、不妊治療専門医による医師監修

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