40代の不妊治療の進め方は?

40代の 不妊治療の進め方は?

30代との違いは何ですか?

医療技術が発達し、高齢妊娠・出産が可能になっていると感じるかもしれません。

しかし、30代に比べると、妊娠しにくいなどのさまざまなリスクがあるのは事実。

そこで、40代の方に知ってほしい知識や治療方法、治療への心構えについて厚仁病 院・松山毅彦先生にお聞きしました。

 

松山 毅彦 先生 東海大学医学部卒業。小田原市立病院産婦人科医長、東海大 学付属大磯病院産婦人科勤務、永遠幸レディースクリニック副院 長を経て、1996年厚仁病院産婦人科を開設。日本生殖医学会 生殖医療専門医。2016 年 4月からスタートしたメールサービス。 病歴管理システムともリンクさせ、患者さんに採卵後の培養、胚 凍結の状況をお伝えしています。今後はセキュリティの問題をクリア し、個別の内容にも対応したいと思っています。

ドクターアドバイス

ネット情報に踊らされ ることなく、まずは受 診して検査を。できる だけ早く自分の状況を 知ることが大事です。

見た目は若くても 卵子や卵巣機能は老化

40 歳を過ぎて妊娠・出産したと いう芸能人の話をテレビで見るこ とが確かに増えたと感じます。

ま た、最近の 40 代の方は外見的には 若いという印象が私自身にもあり ます。

しかし、体の中身はどうで しょうか。卵子はもちろん、子宮 や卵巣などの器官は若い方と比べ て当然、老化しています。

「私は若く見られるから、卵巣も 子宮も若い」と思っていらっしゃ るのでしたら、それは間違いです。

毎日新しい精子がつくられる男性 に対し、女性は生まれた時にすで に決まった数の卵子が存在してい ます。

実年齢が上がっていくと同 時に卵子も年齢を重ねていくため、卵子も老化が進み、分割がう まく進まず、不妊の原因の一つと なります。

ただ、悲観的になるこ とはなく、 40 代でもきちんと生理 がきていて排卵していれば、妊娠 できる可能性はあります。

女性の社会進出やキャリア志向 の高まりにより、 40 代で初めて妊 娠・出産を考える女性が多くなっ ています。

その背景には、「いつ かは子どもを産みたいけれど、 20 代、 30 代はキャリアを優先したい」 という考えがあるようです。

しか し、妊娠力を考えると 40 代の妊娠・ 出産は大きなリスクがあることも 事実。

それ以前に、年齢と同じだ け年を重ねた卵子は、受精卵や胚 にならないことが多くなってきま す。

また、実年齢と卵巣年齢は必 ずしもイコールではなく、卵巣年 齢が実年齢よりさらに高いこともあります。

パートナーと共に 早めの検査がカギ

卵巣年齢の目安を知ることがで きる検査に「AMH検査」があり ます。

AMH検査は、卵巣予備能 を知る指標になるといわれていま す。

AMH検査の数値はあくまで も目安であり、妊娠の可能性を決 定づけるものではありませんが、40 代からの不妊治療は、 20 代、 30 代の人に比べ、妊娠する可能性が 低くなるのは事実。

卵子の老化を 考えると、検査に消費する時間す らも惜しいと考える人も少なくな いでしょう。

迷っている間にも確 実に卵子は老いていきます。

妊娠 力を高めるためにも、 40 代からの 不妊治療は、AMH値なども参考 にパートナーや医師とよく話し合い、最も可能性が高いと思われる 治療法を選択することをおすすめ します。

※AMH : 抗ミュラー管ホルモン

年齢でなく、 個別に治療方法を選択

一般的な不妊治療ではタイミン グ法を 5 ~6回行っても妊娠に至 らなかった場合、人工授精に移行 することも多いです。

しかし、 40 代からの不妊治療は時間との勝負 といっても過言ではありません。

1 ~ 2 回のタイミング法で妊娠し なかった場合、すぐに人工授精へ ステップアップするということも あります。

さらに、早めに体外受 精に移行するというほうが得策と いう考え方もあります。

これまで の治療歴や過去の病歴、AMH値 などの検査内容などから患者さんの全体像をつかみ、医師は個別の 治療方針を立てていきます。

転院 した場合、過去の治療内容やデー タを転院先の医師に提示すること ができれば、同じ検査や治療をく り返すという時間的ロスを省くこ とが可能です。

当院では体外受精は、患者さん の体への負担が比較的少なく、か つ質の高い卵子を採取する目的か ら、卵巣刺激は低刺激で採卵を基 本としています。

クリニックによっ ては治療方針としてむしろ刺激周 期を選択する場合もあるようです。

移植法にはホルモン補充周期と自 然周期の2つの管理法があります が、当院においては自然周期での 移植成績も悪くありません。

「 40 代 だからこの方法がいい」というの はありません。

年齢によって誘発 方法や移植の方法を変えるという ことではなく、さまざまな治療の バリエーションから、その方に合った治療法を選んでいくことが大切 になってくると思います。

何がベストな治療法か ご夫婦、医師と相談を

自分の卵巣の状態を知り、改善 すべき生活習慣は見直し、妊娠力 を上げる努力をすることは必須で す。

もし子宮や卵巣等に疾患があ るのであれば、そちらの治療を優 先させるのか、不妊治療も並行し て続けるのか、医師と相談のうえ、自身が理解したうえで選択した治 療を行いましょう。

また、男性側 に不妊の原因があることもありま す。

これまで男性側の検査を受け ていないのであれば、できるだけ 早めに検査をしましょう。

40 代の妊娠は決して不可能なこ とではありませんが、自分にとっ て何がベストな治療法なのかを見 極めることが大切です。

ご夫婦お 二人が後悔することのないように しっかりとコミュニケーションを とりながら、医師と共に治療計画 を立てることをおすすめします。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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