タイミング法からのステップアップ~保坂先生【医師監修】

通院しながらタイミング法を行って約1年。未だ妊娠できていないとき、ステップアップを視野に入れて今後、どのような治療を選択するのがいいかを三軒茶屋ウィメンズクリニックの保坂猛先生に教えていただきました。

【医師監修】三軒茶屋ウィメンズクリニック 保坂猛 先生
聖マリアンナ医科大学卒業後、大田原赤十字病院、聖マリアンナ医科大学産婦人科医長、ファティリティクリニック東京勤務などを経て、2011年三軒茶屋ウィメンズクリニック開院し、院長に就任。院長をはじめスタッフ全員が、ひとりひとりの患者さんにあわせたケアを心がけているため、「ていねいに親身になってむきあってくれる」と多くの患者さんから支持されている。医学博士、産婦人科専門医、生殖医療専門医。
相談者:りえさん(30歳)
約2年前より自己流でタイミングをはじめ、1年半前より通院によるタイミング法をスタート。通院できないときは自己流でやった月もありました。通院スタートから1年後にヒューナーテストをして問題がなかったため、病院から「人工授精ではなく、思い切って体外受精へステップアップすることを視野に入れてもいい」と説明されました。ちなみに以前、通水検査、精液検査を行い、どちらも良好でした。
今は正規雇用なので、「夏まではタイミング法で。それ以降にステップアップを考えたい」と伝えたところ、「今から少しだけステップアップしてみましょう」と言われ、今月よりフェマーラを服用中です。まだ薬の効果はわかりませんが、今後、どのように治療すればいいでしょうか。

タイミング法を1年続けて妊娠できていない場合、ステップアップ前に卵管造影検査をした方がいいでしょうか。

以前、卵管造影検査と同じく、卵管に詰まりがないかを確認する卵管通水検査を受けたことがあり良好だったということなので、必ずしも受ける必要はありません。ただ、卵管の状態も経年変化をしていくので、前回の検査から1年以上経過している場合は、卵管造影検査を受けた方がいいでしょう。

どのような場合にタイミング法から体外受精へのステップアップがおすすめでしょうか。

人工授精の妊娠率はそう高くはありません。そういったことから少しでも妊娠率の高い体外受精へステップアップするのは有効です。また、排卵のタイミングがうまくコントロールできない、40代前なのに閉経のように永久的に卵巣から定期的に排卵されなくなる「早発閉経」、精子の運動率や数など状態が良くない方については、人工授精をしても妊娠できる可能性が極めて低いので、タイミング法から体外受精にステップアップした方がいいでしょう。

ただ、「タイミング法からいきなり体外受精にステップアップするのは、ハードルが高い…」と、感じる方もいらっしゃるでしょう。そういった不安がある場合、まず人工授精にステップアップしてみて様子を見るという方法ももちろんOKです。ぜひひとりやご夫婦だけで悩まず、かかりつけの病院に相談してみてくださいね。

おそらくりえさんは、ステップアップ後の仕事と治療の両立を心配されているようです。一般不妊治療とART(体外受精や顕微授精)ではどちらが仕事と両立しやすいでしょうか。

どちらも仕事を調整する努力は必要となりますが、当院の場合、採卵は、その日の午前中いっぱいかかるため、お仕事をされている場合は、働く時間を調整していただく必要があるでしょう。

医療機関では、できるだけ早く妊娠できる方法を提案、治療をすることはできますが、治療にあてる時間を捻出することはできません。たしかにどの治療でもお仕事を調律することは大変ですが、患者さんご自身で時間の使い方や働き方などを工夫し、治療にあてる時間を作ることが大切です。

先生からステップアップについてのアドバイスをお願いします

現在、フェマーラを服用し始めたということ。その結果、うまくいかなかった場合は、薬を注射に変えて妊娠率をあげる方法をとるのがいいでしょう。

患者さんによって異なりますが、一般的に30代の場合、タイミング法や人工授精など一般不妊治療を、薬や注射を変えながら1年続けても妊娠しない場合は体外受精にステップアップするのがいいでしょう。この場合、一般不妊治療時に使った薬や注射でどのような反応が起こるかの蓄積が、その後の体外受精の治療で活きてくるため、効率よく治療を進められる可能性があります。

結果が出ていないのに漫然と同じ治療を続けるのは、患者さんにとっても負担になります。治療方針で疑問や不安を感じたら、抱え込まず、医療機関に話をしてみてください。

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