長すぎる低温期に悩んでいます。このまま閉経してしまうのでしょうか?【医師監修】

不妊治療を続けるにあたって、 年齢が高くなるにつれて気になる閉経。 絹谷産婦人科の絹谷先生にお話を伺いました。

【医師監修】絹谷 正之 先生 愛媛大学医学部卒業。広島大学医学部産科婦人科学教室入 局。その後、東京の山王病院リプロダクションセンターにて 高度生殖補助医療研修、顕微授精を修得。1999 年にはカ ナダ、アメリカにて高度生殖補助医療研修を行う。2000 年、 絹谷産婦人科副院長、2002年より院長に。広島県産婦人科 医会常務理事。ISO9001やJISART(日本生殖補助医療標 準化機関)の認定を2010 年~2011年に取得。「広島カー プの優勝を今年こそは……と期待して、気分転換をかねて野 球観戦に行きます。逆にストレスがたまらないといいのですが (苦笑)」と先生。年間10 試合以上は観に行くそう。

ドクターアドバイス

◎ 低温期が4週も続く場合は早めに受診して
◎ 卵巣機能が低下している場合は検査と治療を
みなみさん(41歳)Q.昨年、自然妊娠したものの流産してしまい、今年いっぱいは不妊治療を続けよ うと思っています。これまでは30日前後で生理がきていて、基礎体温もきちん と低温期・高温期と分かれていました。昔から低温期が少し長く、高温期が短 い傾向はあったものの、病院では「排卵がある」とのことでした。しかし今回は、 前回の生理から今日まで 25日、低温期が続いています。このまま高温期になら ずに生理がきてしまう? もしかして閉経? と不安です。低温期が続き、高温 期にもならず、生理もこなかった場合、どれくらいのタイミングで病院に行ったら いいでしょうか? このような場合、不妊治療を諦めないといけないでしょうか。

早すぎる診察はない

みなみさんは、いつもより低温期が長く続いていることに不安を感じていますが、どう思われますか?
絹谷先生 通常の流れは、低温期が続いて、排卵が起こり、体温が上がって生理がきます。
したがって、もし生理があったとしても、高温期にならなければ、実際には排卵はなかったということになります。
ですから高温期にならない場合は、厳密にいえば生理ではなく、不正出血ということになります。
みなみさんの場合は、きちんと体温を測っていらっしゃるようなので、そういうことではないとは思いますが。
低温期が、場合によっては4〜5週間続いた後でも、高温期がきて生理がくれば、排卵があったといえるでしょう。
みなみさんは「どのくらい低温期が続いたら、病院に行ったほうがいいでしょうか」と質問されていますね。
待っていれば高温期がきて、生理がくるかもしれませんが、一般的には2週間くらい経てば高温期になるのですから、4週間近くも低温期が続くのはおかしいですよね。
この時期に病院に行って診察してもらって、「診察に来るのが早すぎる」などと言われることはないでしょう。
高温期が少し遅れた程度なら、「もう少し様子をみてみよう」ということになるとは思いますが、低温期が 25 日続いているみなみさんの場合は、そろそろ医師に相談されてもよいと思います。

卵巣機能の低下?

では、低温期が続き、もし排卵がない場合は、不妊治療はどう続けたらいいのでしょうか?
絹谷先生 低温期が長いということは排卵しにくい状態にあり、排卵障害ということになり、排卵障害の治療をする必要があります。
そのためには排卵しない、またはしにくい原因を調べないといけませんが、みなみさんのように今まで排卵が順調だった人が、今回、低温期が長く続いている場合は、下垂体や視床下部による単純な原因ではなく、 41 歳という年齢も考慮すると、卵巣機能の低下によるものかもしれません。
卵巣機能の低下は、どのような検査や治療をしますか?
絹谷先生 いろいろな検査を組み合わせますが、中心になるのがAMH(抗ミュラー管ホルモン)検査です。
もし卵巣機能の低下と診断されれば、一般的には排卵誘発剤などを使用して排卵させる方法になると思います。
ただ、 40 代の方の卵巣は、おそらく今までかなり頑張ってきた状態。
そこへさらに「頑張れ!」と誘発剤を投与することになります。
また、カウフマン療法という、卵巣ホルモンを同期的に投与して人工的にホルモンバランスを整え、投与をやめるとリバウンド効果によって卵巣が働き出すという方法もあります。

基礎体温表は必要?

みなみさんはずっと基礎体温を測っていたようですが、基礎体温表はあったほうが治療に役立つのでしょうか?
絹谷先生 これは医師によって考え方がさまざまです。
超音波を使えば大丈夫という先生や、基礎体温はあてにならないという先生もいらっしゃいますが、僕はとても大切だと考えています。
基礎体温は、最も簡単で安上がりな検査になるからです。
もちろん超音波検査なども行いますが、患者さんが基礎体温を測ってくれていると、診断にとても役立ちます。
患者さんご自身が、ご自分の体を知ることにもなりますしね。

閉経の兆候…

40 代で月経不順になると、閉経が頭に浮かんでしまいます……。
絹谷先生 閉経は、排卵がなくなって卵巣機能が途絶える、なくなるという現象のことをいいます。
閉経した 50 〜 60 代の方は、低温期のままになります。
ですから低温期が長く続く場合は、閉経の兆候といえます。
ただ、ある日突然、閉経を迎えるわけで、気が付いたら「あれが最後の排卵だったんだ」と思うことになるのです。
それがいつかくるということですね。
閉経に向かって、すべての女性が同じ経過をたどるわけではありませんが、一般的には、閉経が近づくと生理の周期が長くなります。
以前は1カ月くらいだったのが、2カ月、3カ月と周期が変わってきます。
閉経かな? と思っても急に出血があったりしながら、だんだんと周期が長くなっていくようです。
その後、周期が短くなる方が多いようです。
そして、1年くらい生理がこなくなると、閉経と判断されます。
つまり閉経は、1年間月経が起こらない状態が続いて初めて診断されるので、あらかじめ閉経を診断することはできません。
ただし、 40 歳未満の方に起こる早発閉経には、きちんとした診断基準があります。
一般的には、 50 歳になる手前あたりから閉経を迎える方が多いようですから、みなみさんの 41 歳という年齢では、まだ閉経という可能性は低いと思いますが、可能性がまったくないとも言いきれません。
無排卵の場合は、前述したような排卵誘発やカウフマン療法などの治療法もありますから、まずは、早めに医師の診察を受けることをおすすめします。
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