Eさん(43歳)
顕微授精で次に移植を控えています。
流産後、遺残卵胞と、自然周期で移植周期を進めていたところ、子宮内膜が厚くならなかったことで移植ができず、次の周期まで待つことになりました。
転院して1度目の移植はホルモン補充周期で着床。稽留流産でしたが着床したので、次にまた自然周期でいくか、ホルモン補充周期でいくかどちらがいいのでしょうか。
第一子の妊活では、人工授精でクロミッドを使用していましたが、その時には内膜が薄めと言われました。
私は厚くならないタイプなのかもしれないと思い、ホルモン補充がいいのか迷っています。
転院前の病院では、自然周期での移植で化学流産、稽留流産、着床なしでした。
自然周期の方がわずかに流産率が下がると聞いて、自然周期を選んだのですが、次の周期ではどちらがいいかわからず、悩んでいます。
ウィメンズクリニックふじみ野の林 直樹先生に伺いました。

1983年、東京大学医学部卒業。埼玉医科大学総合医療 センター(川越市)などを経て、現職。「体外受精、顕微授精も高いクオリティで対応していますが、できる限り自然に近い不妊治療をご提供したいと考えています。 患者さんはそれぞれお悩みも違いますから、どんなこと でもまずご相談を。時にはご要望に沿えず、厳しいこと を申し上げるかもしれませんが、常に患者さんにとって ベストな治療法をご一緒に見出したいと思っています」。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
●次の移植では、自然周期とホルモン補充周期のどちらが適していますか?
排卵が規則的にある方では、私は自然周期を第一選択としてお勧めしています。ただし医療機関やご本人の都合により、移植日程の調整が難しい場合には実施できないことがあります。ホルモン補充周期の場合は通院回数ならびにスケジュール調整は容易です。
●子宮内膜が厚くならない原因として考えられることは何ですか?
子宮内膜が厚くならない原因には2通りあります。以前の子宮内操作(流産手術や子宮鏡下手術など)の影響で、子宮腔癒着や慢性子宮内膜炎などが生じ、子宮内膜そのものの機能が低下している場合、卵胞の発育不全もしくは卵胞と思っているものが嚢胞(遺残卵胞も含め)である場合です。後者の場合は次周期以降に良い卵胞が発育していれば、当然内膜も厚くなっていることが期待できます。もちろん元々厚くならない方もいると思います。過去に妊娠・出産歴がある方であれば、たとえ生来厚くならない方だとしてもそれは着床には影響していないと思われます。
●ホルモン補充周期での内膜の厚さを改善する方法はありますか?
単に使用するホルモン製剤の量を増やすだけでは対処できません。濃厚血小板浮遊液注入(PRP)やG-CSF注入など方法が国内外で試されていますが、確たるエビデンスのある治療法はまだ開発されていません。
●自然周期での流産率が下がる理由について詳しく教えてください。
最近では自然周期の方が流産率や生児獲得率が良好であったとする報告が増えています。一方で両者に差がないという研究もあり、現時点では完全に結論が出ているわけではありません。排卵後に形成される黄体からはプロゲステロンだけでなく、リラキシンをはじめとするさまざまな生理活性物質が分泌され、子宮内膜や胎盤形成、母体の血管や循環機能に良い影響を及ぼしている可能性が考えられています。
●クロミッド使用時の内膜菲薄化について、考えられる対応策は何ですか?
クロミッド使用時に内膜が薄くなることについては、有効な手段はありません。内膜の厚みにこだわるのであれば、クロミッドを使用しないことです。クロミッドによる抗エストロゲン作用はその周期限りであり、次周期まで持ち越すことは通常ありません。
●最後にアドバイス
43歳という年齢で胚盤胞が着実に得られていることは、大きな強みです。この年齢では胚盤胞の約80~90%が染色体異数性を有するとされ、着床不全や化学妊娠、流産の最大の原因となります。以前に妊娠・出産歴があることから、子宮側に重大な着床障害が存在する可能性は高くありません。そのため、子宮内病変がないこと(必要に応じて子宮鏡検査や慢性子宮内膜炎の評価など)を確認したうえで、PGT-Aを選択肢の一つとして検討する価値は十分あります。PGT-Aによって最終的な累積生児獲得率が向上することは現時点では証明されていませんが、正常な染色体をもつ胚を優先的に移植できるため、流産や化学妊娠を減らし、妊娠までの時間や移植回数を減らせる可能性があります。特に複数の胚盤胞が得られる方では、PGT-Aの利点をより生かしやすいと考えられます。
43歳では「子宮よりも胚」が成否を左右する割合が非常に大きくなります。子宮環境を整えることはもちろん大切ですが、それ以上に良好な胚を得て、その中から染色体が正常な胚を選んで移植するという考え方が重要になります。