低刺激〜高刺激でも胚盤胞まで育ちません。
次の排卵誘発法について低刺激、中刺激、高刺激のどの卵巣刺激法を試しても、胚盤胞に到達しません。
このような方に向いている卵巣刺激法や、それ以外に卵子の質を上げる方法はあるのでしょうか? 久保みずきレディースクリニックの石原尚徳先生にお話を伺いました。

久保みずきレディースクリニック 石原 尚徳 先生 高知大学医学部卒業後、神戸大学医学部大学院修了。医学博士。兵庫県立成人病センター、兵庫県立こども病院の勤務を経て、2008 年より久保みずきレディースクリニック菅原記念診療所勤務。不妊治療から周産期・小児医療まで、地域に根ざした総合的なサポート体制が整う同クリニックで、不妊治療/婦人科、産科を担当する。

ドクターアドバイス

●低刺激〜中刺激で採卵の回数を増やしましょう。
●卵子の質を上げるために、適切な体重管理が大切。
●治療を3周期続けても結果が出ない時は転院も。

パンダさん(41 歳)からの相談 現在、採卵を継続中ですが、転院後は胚盤胞まで到達しません。今回はショート法で3 日目からFSH 注射を開始しました。11日目からフェリングⓇを3 日注射して、15 日目に5 個採卵しました。その後、顕微授精を行い、3 個受精、凍結0 です。「高刺激が合っていなかったのでは?」と培養士が言うほど、状態は良くありません(G1 が1個、G2 が2個、G3 が2個)。ショート法の前に低刺激と中刺激を行いましたが、どちらも採卵前に排卵。それ以外の卵子を1つ採卵しましたが妊娠に結びつきません。以前はショート法で胚盤胞までできていたのでショックが大きいです。次回は中刺激がよいでしょうか?

年齢とAMHに合わせた刺激法でいい卵子に出合うまで根気よく採卵を

──卵巣刺激法はどのように選択されますか?

石原先生●一般的には年齢とAMH(抗ミュラー管ホルモン)の値によって使い分けられることが多いと思います。AMHは卵巣の中に残っている卵胞の数を示す一つの目安になります。たとえば、AMHが基準値よりも低い場合は、卵巣に残っている卵胞数が少なくなっていると考えられます。

通常、年齢が高い方には高刺激のショート法やアンタゴニスト法を試し、それでいい結果が得られない時は、次に低刺激を検討します。一方、年齢が若い方、AMHの値が高い方、PCOS(多囊胞性卵巣症候群)の方には、アンタゴニスト法を選択します。さらに、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)のリスクが高い方には低刺激や中刺激で排卵します。

ちなみに当院では低刺激と高刺激の2つに分けて考えていますが、施設や医師によっては低刺激の途中に注射薬やアンタゴニストを併用することを、中刺激と呼んでいるのだと思います。

──パンダさんには、どのような卵巣刺激法が向いていると思われますか?

石原先生●これまでに低刺激〜高刺激までやるべき刺激法はほぼ試されていますね。もともとお薬の種類が限られていますから、どうしてもできることは限られてきます。あとは、いかに良い卵子に出合えるかだと思います。

パンダさんのAMHは0・38ng/mlとありますが、この値は同年齢の基準値よりも低めです。どの時期に検査されたのかはわかりませんが、治療歴に「低刺激で体外受精を行い、異常受精だった」とあります。その後、顕微授精もされていますので、次は低刺激〜中刺激で顕微授精を行うといいかもしれません。何よりも採卵の回数を増やしながら、良い卵子に出合うまで根気よく続けていくことだと思います。

高刺激の場合は、次の周期に卵巣の腫れが残ることがあるため、次の採卵まで最低でも1周期はお休みが必要になります。採卵をお休みしている間にいい卵子が育つ可能性もありますから、できるだけ妊娠のチャンスを失わないことが大切です。

体重過多は卵子の質を下げる原因に!食事と運動で適正体重に近づける努力を

──治療以外に卵子の質を上げる方法はありますか?

石原先生●葉酸や鉄分を含むマルチビタミンやコエンザイムQ10、ラクトフェリンなど、サプリメントもかなり摂られていますので、あとは体重管理でしょうか。ストレスで体重が増えているのかもしれませんが、身長158cm、体重67kgをBMI(体格指数)に換算すると、26・8になります。BMI の標準値は22ですので、あきらかに体重過多ですね。いわゆる肥満型にあたる方は卵子の質が低下する傾向にあります。まずはBMI を25未満に減らすため、食事のコントロールと運動の両方をおすすめします。いつもお話ししていることですが、ウォーキングやヨガなどの有酸素運動を1日30分程度、週3〜4回行うといいでしょう。

──5年以上治療をされていて、その間に転院を3回されています。さらに、今後の転院についてはどう思われますか?

石原先生●長く治療をされていますので、精神的にも大変だと思います。なるべく一人で抱え込まず、パートナーのサポートをはじめ、通院施設でピア・カウンセリングなどがあれば利用されるといいと思います。

また、卵巣刺激法は各施設によって薬剤を使うタイミングや調整法が異なります。なかなか結果が出ない方が、転院してすぐに妊娠されるケースもありますので、パンダさんも3周期試しても結果につながらないようであれば、ほかの施設に替えてみるのも一つだと思います。同じレベルの治療を提供されていることや、通院のしやすさなどを考えて信頼できる施設を選ばれるといいでしょう。

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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。