タイミング法を継続するか、体外受精に進むか悩んでいます

吉田 仁秋 先生 獨協医科大学卒業。東北大学医学部産婦人科学教室入局、不妊・ 体外受精チーム研究室へ。米国マイアミ大学留学後、竹田総合病院産 婦人科部長、東北公済病院医長を経て、吉田レディースクリニック開設。 2016年1月12日に移転・リニューアルオープンの新クリニックの準備に 多忙な日々を送っている吉田先生。仙台駅東口徒歩4分とよりアクセス が便利に。「卵管鏡や腹腔鏡など手術治療に加え、アロマや鍼灸なども 充実。患者さんの希望に合うオールマイティな施設を目指します」

卵管の機能を調べる検査や 詰まりを改善する方法は ありますか?

ポッキーさん(38歳)からの相談 Q.3カ月半前からタイミング療法を始め、4周期目が終わったところです。7カ月 前に右卵巣のチョコレート嚢腫腹腔鏡手術で剥がす治療を受けたのですが、卵管や子宮、腸まで癒着があり、結局、剥がせませんでした。また、左側の卵巣 にも2㎝大のチョコレート嚢腫が見つかり、「卵管と卵巣が慢性的に腫れている 状態です」ともいわれました。その後に行った子宮卵管造影検査の結果は、左 卵管の通りが悪く、右卵管は良好とのこと。ただ、手術の影響なのか、右側の 卵子の育ちが悪いことを指摘されました。現在の不妊治療において、両卵管が きちんと機能しているかどうかを確認する術はあるのでしょうか。また、左側の 卵管の詰まりを改善できる治療はありますか? 体外受精もすすめられましたが、 「なるべく自然な形で子どもを授かりたい」というのが私たち夫婦の希望です。

子宮内膜症の影響

腹腔鏡手術をしてみたら癒着がひどかったということですが、ポッキーさんの卵管、卵巣は今、どのような状態なのでしょうか。
吉田先生 チョコレート嚢腫で腸などへの癒着もひどく、卵管も卵巣も慢性的に腫れている状態ということは、かなり重い子宮内膜症なのだと想像できます。
どの時期に計測されたのか不明ですが、卵巣の予備能を示すAMH(抗ミュラー管ホルモン)の値が1・ 77 と書かれていますね。
通常は 40 歳で3程度で すから、これはかなり低い数値。
子宮内膜症の既往があり、手術によっても低下した可能性もあります。
その結果、卵子が育ちにくくなっていることが考えられますね。

卵管鏡検査手術

両卵管がきちんと機能していれば、このままタイミング法を継続するか、人工授精での治療を考えているそうですが、どうしたら卵管の機能を調べることができますか?
吉田先生 卵管の機能を調べるための検査として、一つは子宮卵管造影検査というのがあります。
これはすでに受けられているようですね。ほかに、中をしっかり診るのであれば卵管鏡検査をおすすめしたいと思います。
細い管を入れて卵管の内部を調べて、詰ま りがあるか、また、卵管絨毛がちゃんと機能しているかどうかを確認します。
絨毛がなくなって内部が水道管のようにつるつるになっていると卵子が進んで行きませんし、子宮外妊娠の可能性も出てきます。
この検査は全身麻酔で行う腹腔鏡検査とは違い、外来で手軽に受けることができて日帰りで済みます。
右卵管は通っているということですが、それはただ通っているだけで、機能しているかはわかりませんから、1回は卵管鏡検査手術を受けて、卵管の中をきちんと調べてみたほうがいいかもしれません。

年齢と妊娠率を考慮して

機能していれば、一般不妊治療でも妊娠の可能性はあるのでしょうか。
吉田先生 ご希望ならば続けてもいいと思いますが、問題は子宮内膜症です。
この病気は生理があるかぎり進行していきますから、今後も卵巣の状態は悪くなっていくばかりです。
それもポッキーさんの場合はかなり重症で、現状、卵巣の予備能も低下しているので、早めに対処していくことが必要でしょう。
できるだけ自然な形での妊娠を望んでいらっしゃるということですが、はっきり申し上げると、卵管の状態を調べたり、人工授精を考えている余裕はないかもしれません。
治療するなら今が勝負の時。やはり、体外受精など積極的な治療も視野に入れたほうがいいと思います。
年齢的にも3カ月後には 39 歳。
子宮内膜症という既往がなく ても急ぐ必要があり、このまま半年、1年と一般不妊治療を続けて 40 歳になって体外 受精にステップアップしたとしても、妊娠率はぐんと下がってしまいます。
それでも抵抗があるようでしたら、まずは卵管の検査を受けて状況を把握し、先生の説明をよくお聞きになって納得してから次の一歩に進んではいかがでしょうか。
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