京野先生の男性不妊講座

ふたりdeふにん治療 Vol.1

「ふたりで始める不妊治療」不妊の原因は、女性だけでなく、男性にもある場合があります。

でも男性不妊についてはよく知らないという方も多いのではないでしょうか?

そこで今回から、男性不妊の治療も行う 京野アートクリニック・京野アートクリニック高輪の京野先生に 男性不妊の治療について、わかりやすく解説していただきます。

京野 廣一 先生 福島県立医科大学卒業後、東北大学医学部産科婦人科学教室入 局。1983年、チームの一員として日本初の体外受精による妊娠出産 に成功。1995年レディースクリニック京野(大崎市)開院、2007年、 京野アートクリニック(仙台市)開院。そして2012年秋、東京・高輪に新 クリニック「京野アートクリニック高輪」を開院。100年以上継続するク リニックを目指し、真摯な姿勢で生殖医療に取り組む。

 全体の3~4割は男性に 不妊の原因があります

まず「不妊」と聞くと、女性側だけの問題と思われがちですが、不妊症全体の3~4割は男性側に、2割は双方に原因があるといわれています。

だからこそ、女性だけではなく、ご夫婦揃って検査を受けることが重要です。

当院では、通常の不妊外来のほか、男性専門の不妊外来も週に1回設けていますが、受診を希望される患者さんの数は増えているようです。

昔より男性不妊患者の数が増えているかははっきりわかりませんが、海外の統計では、男性の精子の数や運動率が年々低下してきているというデータもあるようです。

その表れか、WHOの精液検査の診断基準も以前より正常値の値がゆるくなってきています。

環境ホルモンや食品に含まれる添加物、デジタル社会による精神的ストレスなども、男性の生殖能力の低下に影響を及ぼしているのかもしれません。

どちらかに原因があっても 治療は二人で受けるもの

男性不妊は、大きく2つの種類に分けられます。

1つは、主に精神的な要因によるもの。

ストレスやプレッシャー、過去の失敗体験などから引き起こされる勃起障害や射精障害。

性行為そのものができないというケースです。

もう1つは、乏精子症や無精子症、精子無力症や精子奇形症など、生殖器の機能的な要因による不妊です。

「精子がまったくいないというのはまれなこと」と思われるかもしれませんが、一般男性の100人に1人、不妊男性の5人に1人が無精子症だといわれています。

昔は男性不妊の治療法はほとんどありませんでしたが、1992年から行われるようになった顕微授精をはじめ、徐々に研究が進み、適切な治療を行って赤ちゃんを授かっているご夫婦もたくさんいらっしゃいます。

諦めずに治療に臨んでいただきたいですね。

早く妊娠を実現するためには、女性はもちろんのこと、ご主人も早めに検査を受けていただくことが重要です。

ずっと奥さま側に原因があると思って検査を受けずにいたら、実はご主人側に問題があったというケースもあります。

そういった場合、後からご主人の治療をしても、女性の年齢が高くなっていると、それだけで妊娠率は下がってしまいます。

「夫が検査を嫌がる」という声もよく聞きますが、左ページに挙げているように、男性の検査は女性の検査に比べてずっと負担が軽いものです。

内容についてきちんと理解していれば、怖かったり、恥ずかしいことはないと思います。

不妊治療はどちらかに原因があっても、「二人で一緒に受ける」という心構えが大切です。

ご夫婦一緒に不妊について理解を深めて気持ちをシェアし、その後の治療もスムーズに進めていただきたいですね。

こんな時 どうする?初診はふたりで一緒に行こう!

二人の気持ちを一つに、足並みを揃えて治療を進めていくためには最初が肝心。

できれば初診は、ご夫婦一緒に受けられることをおすすめします。

男性は、知識や現実的なデータに影響されることが多いので、不妊治療に懐疑的だったご主人も、医師から直接話を聞くことで治療について納得が得られるかもしれません。

初診者向けに説明会や勉強会を実施している施設であれば、二人で参加して情報を共有しましょう。

また、男性も早めに精液検査を受けることで、不妊原因を早期に究明できることもあります。

もし悪い結果が出て、それを奥さまから伝えにくいという場合は、まずはご主人だけで病院に行き、直接医師から結果を聞いて詳しい説明を受けてはいかがでしょうか。

男性不妊の検査

男性不妊の検査には精液検査をはじめ、さらに生殖機能や精巣の状態を詳しく調べるために、泌尿器科や男性 不妊専門外来では以下のような検査を行います。

不妊原因のほか、がんなど命に関わる病気が見つかることも あるので、気になることがあったら男性も早めの受診をおすすめします。

精液検査

検査方法  病院、もしくは自宅で精液を採って、精子の状態を 調べます。精子の状態は体調などによって変わるこ とがあるので、1回の検査で結果が悪かった場合は再 検査、再々検査をして診断します。

わかること  精液の量や精子濃度、運動率、正常形態精子の確率、 精液中の白血球、色などをチェック。結果は、タイ ミング法→人工授精など、治療方法や治療の順番を 検討する目安にもなります。

視触診

検査方法  泌尿器科や男性不妊専門外来では、睾丸の視診や 触診も重要な検査の1つ。ほとんどの場合、男性 医師が行い、痛みなどをともなうことはないので ご安心を。

わかること  睾丸の大きさや形、重さ、瘤がないかどうかなど、 目視や触感で外側から異常を調べていきます。瘤が 顕著に認められる場合は、視触診だけで精索静脈瘤 だと判明することもあります。

超音波検査

検査方法  睾丸に超音波機器を当てて、精巣や精巣付近の状 態を詳しく調べていきます。女性の超音波検査の ように痛みや違和感はなく、短時間で終わります。

わかること  超音波で精巣やその上の精索部の血管の状態など をみることで、病気がわかることがあります。静 脈が太く拡張し、瘤のようなものがある場合は、 精索静脈瘤が疑われます。

血液検査

検査方法  採血をして、LHやFSH、PRL、テストステロンな ど、血中のホルモンの値を調べます。

わかること  LG、FSH(下垂体から精巣を刺激するホルモン) の分泌が低下して生殖機能に問題を起こしている ケースも。女性同様、男性もホルモン状態をきち んと調べて不妊の原因を探ります

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