【Q&A】胚盤胞がなかなかできず、良好な胚盤胞を移植しても妊娠できない~永尾先生

いちごさん(30歳)

不妊治療3年目。AMH3.01です。

2年前に子宮内膜症(チョコレート嚢胞が右側卵巣に2つ、左側卵巣に1つ)と診断され、卵管造影検査にて右側卵管が閉塞、左側卵管が狭窄していることがわかり、タイミング法、人工授精は実施せず2021年5月から体外受精を始めました。
2021年5月?2023年3月までの間、採卵は10回実施。(アンダゴニスト法、ショート法、ロング法、クロミッド、レトロゾールを使用した低刺激法を実施済)毎回2~10個程成熟卵が採れ、受精するものの、受精2~3日目で成長が止まってしまい、胚盤胞凍結がなかなかできません。
これまで胚盤胞になったのは、5日目胚盤胞(グレード3BB)が2つ、5日目胚盤胞(グレード4AB)が1つの計3つです。

移植は2021年5月?2023年3月までの間に計7回実施。
初期胚移植(3日目8分割グレード3、3日目6分割グレード4)、二段階移植(凍結2日目8分割グレード3と凍結5日目胚盤胞グレード3BB)、新鮮胚移植(5日目胚盤胞グレード4AB)等を実施しても一度も着床すらしませんでした。
なお、移植䛿自然周期、ホルモン周期どちらも実施済です。

これまでNK細胞活性、Th1/Th2、第Xll凝固因子活性、プロテイン、25-OHビタミンDのどれも異常なし。食生活を見直し、毎日適度な運動や、サプリメント(葉酸、ビタミンD、ラクトフェリン)、漢方薬を服用中。
夫も不妊外来通院中で、サプリメント及び漢方薬を服用中。精子運動率は平均で50%程度を維持しております。

また、夫の精子DNA損傷率がやや高いことから(16%未満正常値のところ18.6%)、ミグリス、卵子に負荷がかからないよう、顕微授精(Piezo)を実施しても胚盤胞がなかなかできません。

今後の治療方法も踏まえ、良好な胚盤胞を獲得するためにどのような治療方法が適しているのか教えていただきたいです。
よろしくお願いいたします。

永尾光一先生に解説してもらいました。

永尾光一 先生 (銀座リプロ外科・東邦大学泌尿器科教授)
昭和大学医学部形成外科学講座研修医、川崎病院形成外科部長、博慈会記念総合病院泌尿器科部長、カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学等を経て、東邦大学医学部泌尿器科教授に就任。精管、動脈、リンパ管、神経など“大事なもの”を1本1本確認しすべて残すことができる日帰り顕微鏡下精索静脈瘤手術「ナガオメソッド」を開発するなど、男性不妊で悩む多くの患者に、より低侵襲で早く確実な治療を提供。日本形成外科学会専門医、日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本生殖医学会生殖医療専門医。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください

■精子DNA損傷について教えてください。なぜ起きるのでしょうか。

精索静脈瘤、感染症、ライフスタイル(精巣の温度上昇)、喫煙、肥満、などで発生する活性酸素によるストレス(酸化ストレス)によって精子のDNAが損傷を受けます。

■精子DNA損傷が起きている場合、受精卵の分割や発育に影響はありますか?

精子DNA損傷は、自然妊娠、体外受精、顕微授精の成績を低下させ、反復流産の原因になります。動物実験では生児に問題が発生したとの報告があります。
精子と卵母細胞の両方が、胚のDNAの形成に等しく寄与します。
したがって、正常な精子クロマチン構造は、親の遺伝物質を安全かつ健康に伝達するために不可欠です。

精子のDNA構造に欠陥があると、受精とその後の胚の発生が損なわれます。

精子DNA損傷を改善するためにできることがあれば教えてください。

精索静脈瘤手術、感染症治療、ライフスタイル(精巣の温度上昇)の改善、禁煙、肥満予防、抗酸化サプリの服用などがあげられると思います。

■先生であれば、このカップルが良好胚盤胞を得るためにどのような検査や治療を勧められますか?

男性のエコー検査で精索静脈瘤の早期発見と適切な治療をお勧めします。
精索静脈瘤は男性不妊の原因の40%もあります。
根本的に治すことができる疾患です。
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全記事、不妊治療専門医による医師監修

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