はじめての不妊治療は わからないことがいっぱい。 今回は「生殖補助医療(ART)」を テーマにご紹介。 俵先生がわかりやすく レクチャーします!

俵 史子 先生 浜松医科大学医学部卒業。総合病院勤務 医時代より不妊治療に携わり、2004 年愛 知県の竹内病院トヨタ不妊センター所長に 就任。2007年、 俵 IVFクリニックを開業。 浜松医科大学医学部産婦人科非常勤講師。 2月に生殖医療専門医の資格を取得。仕事 の後はホットヨガで疲れをしっかりリセット し、体調を整えて、万全の態勢で毎日患者 さんを迎える。
ゆうさん(会社員・30 歳)Q.抗精子抗体の数値がかなり高く、体外受精しかないと言われました。 先生には、体外受精をするか旦那と相談して、 決めたら詳しい説明をしますと言われました。 体外受精についていろいろ検索すると、採卵時、体に 大変な負担がかかると書かれていてとても気になりました。 体外受精について何も知らないことで不安が増しています。 教えてください。

卵管異常や男性不妊が原因なら ARTで妊娠率が高くなります

タイミング療法や人工授精など、一般不妊治療の次のステップとして、生殖補助医療(ART)があります。
ARTとは、「体外受精」や「顕微授精」など、体の外で卵子を扱う治療のことをいいます。
この治療は、一般不妊治療では妊娠が不可能な場合に進む治療です。
実際にどんな方が適応になるのか、ご説明していきましょう。

❶卵管の異常

 卵管の閉塞、卵管や卵管采の癒着、卵子の移送異常など。

❷卵子の質の低下

 年齢的な要素、長期にわたる排卵誘発剤使用の影響(治療期間の長い人など)、子宮内膜症など。

❸受精障害

 乏精子症、奇形精子症、精子無力症、受精機能障害(卵子の中に精子が入らない)など、男性側の要因がある場合。

❹着床障害

 子宮内膜異常、月経周期の異常、子宮奇形子宮筋腫子宮内膜症、自己免疫疾患、ハッチング障害など。
これらの原因のうち、❶卵管の異常、❸受精障害はARTに進むことで、妊娠の可能性が高くなります。
また、「検査では大きな問題がないのに妊娠に至らない」という原因不明の方にもARTをご提案することがあります。
ステップアップをすることで、一般不妊治療の過程ではわからなかった問題を見つけられることもあるからです。
それから、❷で挙げた年齢的な要素の問題ですが、これから不妊治療を受けられる方のなかには「年齢が高くても体外受精を受ければ必ず妊娠できる」と考えていらっしゃる方もいるかもしれません。
当院で体外受精を受けられた方の妊娠率データによると、 35 歳くらいまでが約 45 %、 35 〜 40 歳くらいまでが約 40 %、 44 〜 45 歳になるとひとケタ程度とぐっと下がります。
40 代半ばに近づくと、体外受精に進んだとしても妊娠率の大きな上昇は期待できないため、ARTに進むメリットは少なくなってきます。

排卵誘発から胚移植まで ART治療の流れ

次に、ART治療の流れについてご説明します。
ARTは卵巣で卵子を育て、卵子を体の外に取り出し、体の外で精子と受精させて、受精卵を育ててから子宮に戻す(移植する)という治療法です。
一般不妊治療と比べて注射や検査の回数が増えたり、採卵や移植ということもプラスされるので、お仕事など生活上のスケジュール調整が多少必要な場合もあります。
また、経済的にも負担が大きくなるので、事前にご夫婦できちんと話し合って治療に臨むことが重要です。

「いつまでも」ではなく 目標の回数を決めて

体外受精や顕微授精などのARTは、「○回まで」という回数の制限はありません。
とはいえ、回数を積み重ねれば、いずれ妊娠できるというものでもありません。
1回で妊娠される方もいれば、多数回トライされても結果が出ない方もいらっしゃいます。
通常、採卵回数とともに妊娠率は下がる場合が多くなります。
この採卵回数と妊娠率の関係は、排卵誘発方法で異なってきます。
注射の誘発剤を多く使用する刺激周期では、最初の数回の採卵でほとんどの方が妊娠成立されますが、クロミフェンを中心とした低刺激周期では、5回以上の採卵回数で妊娠に至る方も稀ではありません。
施設によって誘発方法も異なりますので、治療を受けられている施設で採卵や移植の回数と妊娠率の推移などを教えていただくのもいいと思います。
当院では、刺激周期も低刺激周期も取り入れており、AMHなどで卵巣予備能力を評価しながら誘発方法を選択しています。
また、過去のデータをもとに、「○回までに妊娠に至らない場合は、治療継続をおすすめできません」といった治療の区切りの時期についてお話しすることもあります。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。