【医師監修】伊藤 哲 先生 順天堂大学医学部、同大学院修了。 順天堂大学医学部産婦人科学講師、 国際親善総合病院産婦人科医長を経 て、1999年あいウイメンズクリニッ ク開院。日本生殖医学会生殖医療専 門医。O型・おひつじ座。今回の相 談にあるような「早発卵巣不全」の 患者さんも数多く訪れるという同クリ ニック。難しい症例も積極的な治療 で妊娠への希望をつなぐ。
はるよこいさん(36歳)からの投稿 Q.2人目不妊でタイミング療法から始めましたが、1年以上結果 が出ないため、クロミフェンを服用しながら人工授精に挑戦中 です。血液検査はLH:10.0、FSH:35.0、 ※ エストラジオール: 21.0 前後なのですが、医師からは「FSH 値が高いので、体外受精や顕微授精をしても無理だろう」と言われました。FSH値 を下げて妊娠する方法はないのでしょうか?
FSHの正常値
まず、この方の血液検査の値を見て、先生はどう思われますか。
伊藤先生 担当医の先生からFSHが高いと言われたそうですが、確かに 35 というのは異常に高い数値です。
FSHの正常値は 30 未満で、ほとんどの方は6〜 10 くらい。閉経前の方でも 12 とか 13 程度です。
ですから、この方はほとんど卵巣が反応していない「※早発卵巣不全(POF)」ではないかと思われます。
現在、生理4日目から5日間、1日1錠クロミフェンなどを服用して人工授精に挑戦されていますが……。
伊藤先生 FSHがこの値のままでクロミフェンを使っても、まず効くことはないと思います。
タイミングを含め、同じような治療をもう2年近くされているというのは、僕はちょっと疑問に感じますね。
もし卵ができる可能性があるならば、もう少し先の治療をされたほうがいいのではないでしょうか。
カフマン療法
具体的にはどのような治療法になりますか。
伊藤先生 少しでも卵胞が残っている方でしたら、カウフマン療法をおすすめいたします。
これは、ホルモン不足を補いながら、生理周期がきちんとくるようにする療法。
通常の低温期にあたる時期に卵胞ホルモン(エストロゲン)、高温期にあたる時期に卵胞ホルモン+黄体ホルモン(プロゲステロン)を投与して、規則的な月経周期を人為的に作り出します。
カウフマン療法は3ヶ月、6ヶ月という単位でみていくのですが、そのなかで一度治療をやめて 10日前後の時期に血液を採って、FSHが下がってきているか、エストラジオールがちゃんと上がるかどうか調べます。
卵ができてくる方であれば、エストラジオールが高くなり、だいだい 50 くらいの数値にはなってくるんですね。
カウフマン療法によって、まだ妊娠への期待は持てるということでしょうか。
伊藤先生 カウフマン療法を行えばほとんどの方が排卵するというわけではありませんが、現在の治療を続けるよりは、このような積極的な治療法をとられたほうがいいのではないかと思います。
はるよこいさんの担当医の先生は体外受精や顕微授精は無理だとおっしゃっているそうですが、カウフマン療法で卵が1個でもできれば採卵して、確率の高い顕微授精にトライすれば、妊娠するチャンスはまだあると思います。
※エストラジオール(E2) : 卵胞ホルモン。 ※早発卵巣不全(POF):40歳未満という早い時期に、ゴナドトロピン高値、エストロゲン低値となり、卵巣が機能しなくなるもの。