3年前に腹膜炎と腸閉塞。 LUFと診断され このままの治療で大丈夫?

高橋 克彦 先生 慶應義塾大学医学部卒業。1990年に日本初の体外受精専門外来クリ ニック、高橋産婦人科を開業。後に広島HARTクリニックと改名。2000年、 東京HARTクリニック開設。「日本初」の実績を次々と打ち立て、日本の不 妊治療界をリードする。OD-NET 卵子提供登録支援団体の副代表でも ある先生。「卵子提供ボランティアを募ったところ、予想に反して10人を超 える方から応募がありました。そして3組のマッチングが成立。実施に至る にはまだまだハードルがあるのですが、彼女たちの善意を無駄にしないよう 尽力したいと思います」。
愛さん(36歳)からの相談 Q. 33歳の時に盲腸をこじらせ、腹膜炎と腸閉塞になりました。不妊治療歴は6カ月で、3 回のタイミング療法のうち、2回も黄体化未破裂卵胞(LUF)だと診断されました(以前 も3回のうち1回が排卵していませんでした)。現在36歳ということもあり、1人目が早 く欲しいと思っているのですが、なかなかうまくいきません。 今後は、HGC注射から点鼻薬に変更し、排卵を促す方法にするのですが、このまま治療 を続けてもいいのでしょうか? また、子宮の中の状態を調べてほしいと先生に言うと、 「超音波で見るかぎり、ポリープもないので必要ない」と。今後、点鼻薬でも排卵しなけ れば、体外受精しかないと言われましたが、本当にそうなのか不安です。

不妊の一番の原因は卵管

愛さんは、今の治療内容に不安を感じているようですが。
高橋先生 こう言うと何ですが……。
最近の先生方は、きちんと診察・診断・治療というステップを教育されていない方がいらっしゃいますね。
私が愛さんを診たら、まず卵管癒着を疑います。
それは「盲腸をして腹膜炎と腸閉塞になりました」ときちんと書いてありますから。
不妊の一番の原因は、卵管の機能の問題です。
ですから、まず子宮卵管造影検査をします。
あるいは、超音波で見れば卵巣の位置がわかります。
また、癒着がある場合は子宮を動かせば、かなり痛がると思います。
これらの検査を最初にすれば、相当の情報が得られるはずです。今の先生からも、PMSがひどいこともあって、癒着があるのではないかと言われていますよね。
しかも、愛さんは腸閉塞を併発されていますから、これは大変な情報です。
きちんと検査すべきですよ。
以前に腹部の手術をしている場合 は、卵管の癒着がかなり疑われます。
盲腸を手術し、さらに腹膜炎を起こしていて、腸閉塞を併発しているというのは、かなり卵管癒着に影響を及ぼしていると思いますので、まずは一番に卵管癒着を疑い、子宮卵管造影をするべきです。
LUFについて見解を求められていますが、それは担当医が診断されていますから、そうでしょう。

LUFとは?

ところで、LUFについて、もう少し詳しく教えてください。
高橋先生 基本的には皆さん、基礎体温を測って排卵しているかどうかを調べますよね。
基礎体温上では、低温期と高温期の2相に分かれ、体温が上昇することであたかも排卵したかのように見えます。
しかし、超音波画像を見ると卵子を排出しないまま黄体化してしまった卵胞が、高温期になっても卵巣内に残されているのが確認できることがあります。
ただ、黄体化しているのでプロゲステロン(黄体ホルモン)の値は低いですが、分泌されています。
排卵した形であるけれど、物理的にみると卵子が放出されていない。
このような状態を、黄体化未破裂卵胞(LUF)といい、機能性(原因不明)不妊の一因だといわれています。

年齢も考えて、専門クリニックへ

今後どうしたらいいでしょうか?
高橋先生 まずは子宮卵管造影か、腹腔鏡検査をして、癒着がひどいなどの異常が見つかれば、手術で癒着を治療することが可能なのか、あるいはそのまま体外受精に進むのか。
36 歳という年齢も考慮して、体外受精が可能なクリニックで相談して、総合的に判断してもらうのがいいと思います。
LUFに関しては、二次的な問題 だと思います。
LUFの患者さんは時々当クリニックにもいらっしゃいますが、排卵誘発剤、HCGを投与することによって解決できるので、基本的にはそれほど本題ではありませんよ。
※PMS:月経前症候群
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。本サイトの全ての記事は医師監修です。