【Q&A】着床障害を疑うべきでしょうか?~石川聖子先生【医師監修】

うっちーさん(35歳)

橋本病でチラージン服用中。4回ともアンタゴニスト法。体外受精4回目、陰性でした。
1、2回目着床すらしなかったためCD138検査をしたところ、慢性子宮内膜炎とわかり治療し完治しました。その後、3回目移植で陽性を頂きましたが8週目で稽留流産と診断されました。(hcg38と低いスタートでした)流産後の4回目も着床すらしていませんでした。移植後はデュファストン、バイアスピリン、ジュリナを服用。ウトロゲスタン、エストラーナテープ継続。1回目5BB、2回目5BB、3回目4AB、4回目4AC全てアシステッドハッチング、エンブリオグルーあり。
着床障害なのでしょうか?
今後、受けた方がいい検査はありますでしょうか?
また、転院した方がいいのでしょうか?
保険も残り2回なので正直、焦っております。よろしくお願い致します。

銀座レディースクリニックの石川聖子先生にお聞きしました。

銀座レディースクリニック 院長 石川 聖子 先生
1996年東京医科大学、2000年東京女子医科大学大学院医学研究科卒業。米国留学、東京女子医科大学生殖内分泌・不妊外来・ARTチーフ等を経て、銀座レディースクリニック院長に就任。医学博士・日本産科婦人科学会産婦人科専門医・日本生殖医学会生殖医療専門医。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
うっちーさんのご相談内容を拝読して、疑問に思うところがありました。まず、「4回ともアンタゴニスト法。体外受精4回目」ということは、アンタゴニスト法で毎回胚盤胞移植1個だけ、ということでしょうか。一般に、35歳ならAMHがよほど低値か、胚盤胞到達率が低くない限り、アンタゴニスト法なら1回の採卵で複数個の胚盤胞が凍結保存出来て、そのうち最も良い胚盤胞から移植すると思います。

また、「1回目5BB、2回目5BB、3回目4AB、4回目4AC全てアシステッドハッチング、」とのことですが、Gardner分類5BBの胚盤胞は既にハッチ(孵化)しているので、アシステッドハッチング不要という考え方もあります。

胚移植が不成功に終わると、直ぐに「内膜がいけない、内膜が炎症を起こしている」とか、犯人捜しをしてそれを治せばよいというロジックに陥りがちですが、妊娠した人すべての内膜が「正常」なわけでもありません。それにうっちーさんは一旦は妊娠が成立していますので、さらなる「着床障害の検査」は可能ですが、必要はないと私は思いました。胚移植1回あたりの着床率が最も高いのは着床前診断(PGT-A)を行って正常核型と診断された胚盤胞ですが、それでも着床率は65%程度です。

いずれにしましても、保険診療の胚移植があと2回となりますと、
・次の胚移植では可能な限り良い胚を良い状態の内膜に移植したい
・胚移植当たりの生産率せいぜい50%なので、(かつ、2人目が欲しくなったときのために)できるだけ複数の胚盤胞を凍結保存しておきたいということに尽きるのではないでしょうか。

私が主治医なら胚移植当たりの妊娠率は決して100%にはなり得ないことを再認識していただきました上で体外受精をもう1回行いますが、うっちーさんはまず主治医の先生とよく話し合って、納得のいく選択をされたらよいと思います。転院は必要ないと思います。でも納得がいかなかったときは、今までの検査や治療内容を記した「診療情報提供書」を作成していただいてください。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。本サイトの全ての記事は医師監修です。