ゆさん(34歳)
不妊専門クリニックに通院しており、現在、凍結胚盤胞が6個あります。できるだけ早く妊娠・出産につなげたいと考えています。
これまでに8週での流産1回、39週での原因不明の死産を経験しており、次こそは無事に出産までたどり着きたいという思いが強くあります。そのため、不育症検査を含め、慎重に治療方針を考えたいと思っています。
現在34歳、凍結胚はIDAscoreが低めの胚が多いこと、またAMH(1.67)が低いこともあり、
・不育症検査を先に行ったうえで、現在凍結している胚を優先して移植していくべきか
・今後のために、先に採卵を行ってから移植に進んだほうがよいのか
どちらがより妊娠・出産につながりやすいのかで悩んでいます。
年齢やAMH値、これまでの妊娠歴を踏まえたうえで、今後の最適な治療の進め方について、専門的な視点からアドバイスをいただけますと幸いです。
小川誠司先生に教えていただきました。
東京ARTクリニック 院長 小川 誠司 先生
2004 年名古屋市立大学医学部卒業。2014 年慶應義塾大学病院産婦人科助教、2018 年荻窪病院・虹クリニック、2019 年那須赤十字病院産婦人科副部長、仙台ART クリニック副院長を経て2023年9月、藤田医科大学東京 先端医療研究センターの講師、2024年4月に准教授に就任。2026年2月から東京ARTクリニックの院長に就任。藤田医科大学客員准教授。日本産科婦人科学会専門医。日本生殖医療学会専門医。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
●不育症検査を行うタイミングについて、先生のご意見をお聞かせください。
ゆさんは妊娠39週での原因不明の死産をご経験されています。妊娠22週以降の後期死産は、1回でも不育症検査の対象となります。そのため、次回の胚移植に進まれる前に、一度しっかりと不育症の検査を受けられることをお勧めします。妊娠前のタイミングのほうが正確に評価できる項目も多く、今の時点での検査が望ましいと思います。
●凍結胚のIDA scoreが低い場合の移植の優先順位はどうすべきですか?
移植胚の優先順位は、まずガードナー分類のグレードを最優先します。同じグレードの胚が複数ある場合は、IDA scoreの高い胚を選択されるのが一般的です。ゆさんの場合は、まず4AAの胚から移植されることをお勧めします。

●先に採卵を行うべきか、移植を進めるべきか、先生でしたらどのように提案されますか?
この判断は、これまでの流産・死産の原因が「受精卵側」か「母体側」かによって考え方が変わります。受精卵側の可能性が高い場合は、先に採卵を行い、PGT-Aによって正常胚を選別する方法が考えられます。一方、母体側の可能性が高い場合は、不育症の対策を行った上で移植を先行するのが良いと考えます。ゆさんの場合、年齢が比較的お若いこと、また39週まで妊娠が継続していた点を踏まえると、母体側の要因が関与している可能性が高い印象です。まずは十分な不育症検査を行い、異常が見つかれば適切な治療・対策を行ったうえで次の移植に進まれることをお勧めします。もし不育症検査で特に異常が認められなかった場合には、受精卵側の要因を考慮し、現在凍結されている胚をPGT-Aに供することも選択肢の一つになります。
●AMH値が低い場合に推奨される採卵方法を教えてください。
AMHが低い方は、一般的には低刺激(クロミッドやフェマーラの内服のみ)、あるいは中等度の刺激(クロミッドやフェマーラの内服に加え、隔日で排卵促進剤の注射)が推奨されます。ただ、刺激法の選択は、AMHだけでなく、年齢や、開始する周期のAFC(前胞状卵胞数)を考慮する必要があり、ゆさんは年齢がお若いため、高刺激(連日注射)により、より多くの卵子が得られる場合も少なくありません。実際には、これまでの薬剤に対する反応性も踏まえて、主治医の先生と相談しながら決められた方が良いと思います。
●年齢やAMH値を考慮した最適な治療方法を教えてください。
まずは十分な不育症検査を行いましょう。凝固因子や、自己抗体(ネオセルフ抗体も含めて)だけでなく、免疫検査(Th1/2、NK活性)、子宮鏡、慢性子宮内膜炎検査(CD138免疫染色検査)、子宮内フローラ検査(子宮内細菌叢)など、できる検査は一通り実施した上で、次の治療方針を考えます。
上記に異常がある場合は、治療・対策をして、凍結されている4AA胚を移植されることをお勧めします。
異常がなければ、凍結胚をPGT-A検査に出すか、あるいは再度採卵を行なって、PGT-A検査を行い、正常な受精卵を移植することが選択肢となります。IDA scoreが高い方が正常な胚である可能性は高くはなりますが、より正確な判断をするためにはやはりPGT-Aが必要になります。