皆さんの治療に関する相談を全国のドクターにお聞きして、誌面でアドバイスをお届けする人気企画「ジネコ セカンドオピニオン」。
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お話を伺った先生のご紹介

保坂 猛 先生(三軒茶屋ウィメンズクリニック)聖マリアンナ医科大学卒業。聖マリアンナ医科大学産婦人科医長、同大学産婦人科非常勤講師。ファティリティクリニック東京勤務を経て、2011年三軒茶屋ウィメンズクリニックを開院。

キラキラさん(38歳)からの相談 不妊治療2年目、人工授精2回のあと採卵し、初期胚2個、胚盤胞移植4個を凍結しました。その後、4回連続で胚盤胞移植をしましたが、着床に至りませんでした。残りは初期胚2個。この初期胚を1個移植するか、2個同時に移植するか迷っています。2個移植する場合のデメリットがあれば教えてください。また、今までの移植の着床不全は、受精卵の染色体異常だろうということですが、胚盤胞が残り少なかったためPGT-Aは勧められませんでした。免疫寛容検査でth1=29.0、th1/th2=13.2のためタクロリムスを服用していました。最近、月経量が少なくなり、色味が茶色っぽくなっていることも気になっています。

ドクターアドバイス

  • 新鮮胚を2個同時に移植するデメリットは多胎になる可能性があること。
  • 月経量の減少や色味の変化よりも超音波で子宮の状態を確認することが大事。

初期胚を2個同時に移植するデメリットがあれば教えてください。

 

同時に2個移植するデメリットを挙げるとしたら、一卵性双生児が産まれる可能性があることです。また、可能性はかなり低いですが三つ子が産まれるということもあります。万が一そうなると、母体や胎児のリスクは当然高まりますので、それは頭に入れておいて頂いたほうがよいと考えます。

逆に2個入れるメリットですが、2個移植すると一見妊娠率が上がりそうに感じますが、過去のデータでは、妊娠率は変わらないことが分かっています。

キラキラさんの治療歴について詳細がわからないため、一般的な意見でお答えしますが、凍結胚を移植する場合、初期胚より胚盤胞移植のほうが妊娠率は高いとされています。キラキラさんのご年齢38歳の場合、初期胚移植で20~25%、胚盤胞移植で40~45%の妊娠率です。なぜ胚盤胞のほうが妊娠率が高まるかというと、初期胚から胚盤胞までの2日はより強いエネルギーが必要で、生きていくための染色体が非常に強くなるためだといわれています。とはいえ、治療歴を見て胚盤胞移植で妊娠しない場合は、今回のように初期胚で移植するという選択ももちろんあるので、ご担当の先生はいろいろな可能性を試していらっしゃるのかと思われます。

月経の色味や量も気になっているようです。

 

当クリニックでも、不妊治療を始めたとたんに月経量が減ったり、色が変わったりして心配される方は多くいらっしゃいます。治療を始めると、薬によってホルモンの状態が変わるため、少なからずこのような症状は起こりえます。ただ、大事なことは超音波で月経の周期を観察する、排卵がきちんときているか、内膜の厚みがきちんとあるか確認すること。担当の先生に超音波で見てもらい、問題なければ心配はいらないでしょう。

キラキラさんに今後できる治療や検査はありますか?

 

子宮卵管造影、免疫寛容検査などもされて、PGT-Aは勧められなかったとのこと。時間的な余裕がないことやAMHが低いこともあったのかもしれませんが、キラキラさんがどうしても気になるようでしたら再度担当医の先生に意志を伝えてみてもよいかもしれませんね。自分でやってみたいと思ったら、納得のいく治療をぜひ受けて頂きたいです。

今後できる提案としては、タイムラプスを使ってより良い胚を選別することがひとつ。あとは胚盤胞の生存率を上昇させ、着床率を上げるとされるエングリオグルーというヒアルロン酸を含んだ培養液を凍結胚に添加してみるなどの方法が考えられます。

さらにPRP療法といって、患者さんの自己血から抽出した高濃度の血小板を子宮内に注入するという方法があります。これにより子宮内膜が活性化され、受精卵が着床しやすい環境が作られ着床しやすくなるといわれているものです。

まだ方法はありますので、どうぞあきらめずがんばってください。

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全記事、不妊治療専門医による医師監修

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