体外受精で気になる痛みと副作用について

体外受精は妊娠率の向上が期待できる一方、治療を検討していくなかで、痛みや副作用を心配する人も少なくありません。

園田桃代ARTクリニックの園田先生に、体外受精で起こりやすい痛みや副作用とその対策についてお話を伺いました。

園田桃代ARTクリニック 園田桃代 先生 1995年 佐賀大学医学部卒業後、福岡大学医学部産婦人科学教室入局。1998年 福岡大学医学部大学院、2002年 福岡大学医学部付属病院 不妊内分泌グループを経て、2005年 IVFなんば・大阪クリニック勤務。2010年 園田桃代ARTクリニック開設。プレチェック外来から、一般不妊治療、体外受精などトータルな医療体制で、明るく前向きな「仕事と妊活の両立」をサポートする。

体外受精で痛みや副作用をともなう治療とは?

体外受精では妊娠の確率を上げる目的で注射薬などの排卵誘発のお薬を使い、できるだけ多くの卵子を育て採卵します。そのため、自己注射を打つときや、採卵の穿刺(体外から卵巣に針を刺して卵子を吸引する)するときに痛みを感じることがあります。

なかでも採卵のときの痛みの感じ方には個人差があり、患者さまの状況やご希望によっては静脈麻酔などを使い、痛みを感じることなく行うこともできます。また、穿刺の状況によって採卵後にお腹のなかに出血をともなうことがありますが、ほとんどは少量の出血で自然におさまります。

また、注射薬の影響によって起こりやすい症状の一つがOHSS(卵巣過剰刺激症候群)です。程度に差はありますが、よくある症状には卵巣が腫れて腹水がたまり、下腹部に違和感や痛みを感じることがあります。さらに、症状が重くなると胸水がたまったり、血栓症を引き起こすこともあるため注意が必要です。

OHSSをコントロールし、質の良い卵子をたくさん採る

排卵誘発法には自然周期、低刺激、高刺激があり、一般的に注射薬を使った高刺激になるほど卵巣への負担は大きくなります。とくに卵巣の機能がよく、お薬に反応しやすい人はOHSSを発症しやすくなります。

OHSSを回避する目的で、自然周期や内服薬による低刺激を選択する考え方もあります。ただ、低刺激では採れる卵子の数が1〜2個に限られることや、そのなかで質の良い卵子に出合えないこともあります。

一方、注射薬を使った高刺激では、ある程度のOHSSの症状は避けられませんが、質の良い卵子を複数個採卵できる可能性が高くなります。

当院では、

①注射薬の種類の選択、投与量や投与日数を調整する

②採卵前に卵子の成熟をうながすお薬(トリガー)の選択を検討する

③採卵のときの手技的な工夫をする

④採卵後にお薬を投与する

などの工夫でOHSSの重症化を予防し、またOHSSが発症しても速やかに改善するなど、副作用をコントロールし、バランスを考えた治療を行っています。

お薬を使ってOHSSを軽減し、早期に改善する

たとえば、当院の患者さまの分析データでは、採卵前に卵子の成熟をうながす注射薬(HCG)を、点鼻薬(GnRHアゴニスト)に変えることにより、OHSSの重症度を低く抑えられています。また、人によっては点鼻薬を使ってもOHSSを発症することがありますが、その場合でも注射薬よりも点鼻薬を使用したほうが、OHSSが早く改善されることがわかっています。

また、注射薬で卵巣を刺激すると血中のエストロゲン値が上昇します。するとOHSSの重症度が高くなるため、速やかにエストロゲン値を下げる必要があります。通常、採卵後にまったく処置をしない場合は10日〜2週間後に月経がきますが、採卵後にOHSSを悪化させる血管増殖因子(VEGF)を抑える作用のあるカバサールと併用して、エストロゲン値を下げるレルミナ(GnRHアンタゴニスト)という内服薬を投与すると、早い人では3〜4日で月経がきます。採卵後に月経がくるとOHSSは改善されていきます。早く月経がくるほど、それだけOHSSが早く改善されているという目安になります。

卵子凍結で2人目、3人目の妊娠も期待できる体外受精

当院は、「質の良い卵子をたくさん採って、妊娠のチャンスをたくさんつくる」ことを大切にして治療に取り組んでいます。その意味では、体外受精で前向きに排卵誘発を行いつつ、そのときに起こりうるOHSSをうまくコントロールしながら妊娠のチャンスを広げていくことは、患者さまにとっても良いことだと思っています。

また、お一人目のお子さまの治療のときに、複数個の受精卵を凍結しておくことができれば、将来2〜3人目のお子さんを希望されても、その時点の年齢よりも若い受精卵で妊娠を期待することができます。体外受精は将来のライフプランを考えるうえでも有意義な治療法だと思います。

園田先生からのメッセージ

いろんな心配や不安を抱えて体外受精を検討される方もいらっしゃると思います。そのような患者さまに対しては、私をはじめスタッフが治療の内容やその過程で起こりやすい痛みや副作用についても丁寧にお伝えし、不安を和らげるサポートも行っていきます。体外受精は妊娠の可能性が広がる治療です。「痛みや副作用が心配だから」といって治療を諦めてしまうのではなく、こういった情報を前向きに受け止めて、治療にのぞんでいただきたいと思います。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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