
▶︎卵巣囊腫の手術前の採卵について現在37 歳。出産経験がありますが、あと1人だけ子どもが欲しいと思い、治療を始めて半年が経ちます。AMH は0.16ng/ml と低く、両側に卵巣囊腫があるため、手術をする予定です。今までに3回採卵し、2個の3AA を凍結中。主治医から手術前にあと1 個凍結を目指すことを提案されていますが、凍結卵が2つある状態でも採卵したほうがいいのでしょうか。手術を受ける病院は既に受診済みで、最短1カ月で手術できると言われています。アドバイスをお願いします。

医学博士・産婦人科専門医・日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医・日本生殖医学会生殖医療専門医。2018 年、体づくりができるフィーカレディースクリニック(東京・日本橋)を開院。佐藤病院院長、高崎 ARTクリニック・フィーカレディースクリニック理事長を務める。専門分野だけでなく、栄養学や抗加齢医学などの知識も深く、患者さんにも積極的に生活習慣の改善を指導。
ゆゆさんは、両側卵巣囊腫とのことで採卵後に手術を予定されているそうですが、卵巣囊腫とはどんな病気でしょうか。
佐藤先生●卵巣囊腫は卵巣に液体などがたまる良性腫瘍で、漿液性・粘液性・皮様囊腫などがあります。なかでもチョコレート囊腫は子宮内膜症によるもので、不妊の原因となり卵巣機能低下を招くことがあります。
3AA の凍結胚が2つあるものの、主治医から採卵を提案されているそうです。
佐藤先生●卵巣囊腫といっても種類によって対応が変わります。卵巣に水や脂分が溜まっている囊腫の場合、手術をしたことで卵巣機能が悪くなることは少ないです。ただ、チョコレート囊胞のような内膜症を引き起こしている場合は、手術によって卵巣機能が落ちたり、ケースによっては術後に採卵できない可能性も。そのためゆゆさんの主治医のように手術前に採卵したいと考える場合があります。
佐藤先生のお考えはいかがでしょうか。
佐藤先生●いただいた情報だけだと、ゆゆさんの卵巣囊腫の状態がどの程度かわからないため、はっきりとしたことは言えません。通常であれば、すでに3AA の凍結胚があるので、それを先に移植し、それがダメだった場合に新たに採卵する方法がいいでしょう。
ただ、気になるのは、ゆゆさんのAMHです。37歳で0・16ng/mlと数値が低いため、手術後、卵巣の働きが悪くなってしまうと、採卵しても採れないという懸念もあります。おそらく主治医は、そういった状況も考慮して手術前の追加採卵を提案しているのではないかと思います。
通常、保険診療だと凍結胚があるうちに採卵することはできないと思いますが…。
佐藤先生●そうですね。何の疾患もないのに貯卵するのは保険診療で認められていません。ただ、今回のケースのように、卵巣囊腫の手術によって卵巣機能が低下する可能性が高いと考えられる場合は、保険診療内で追加採卵できる場合もあります。
手術前に胚をもう1つ凍結できた場合、妊娠率は上がりますか?
佐藤先生●手術する前に採卵し、それが胚盤胞まで発育して凍結できれば、妊娠できる可能性のある胚が2個から3個に増えるので、妊娠できる確率は高くなります。
卵巣囊腫の手術をすると、妊娠しやすくなりますか。また、どのような手術方法が多いか教えてください。
佐藤先生●患者さんの状態によってケースバイケースですが、卵巣機能が落ちるため、最近ではチョコレート囊胞のような子宮内膜症だと手術をせずに温存して経過観察する傾向が多いようです。ですから、手術をしたから妊娠しやすくなるかというと、一概にそうは言えません。おそらく主治医が手術をすすめているのは、「妊娠した後」のことを考えているのでしょう。卵巣囊腫は茎けいねんてん捻転を起こしやすい特徴があります。捻転すると激しい下腹部の痛みや嘔吐などの症状がみられます。妊娠中に発生し、手術するとなると大変なので、今のうちにやっておこうという考えです。
手術方法としては、腹腔鏡手術で行われることが多いでしょう。チョコレート囊胞のような内膜症の場合、卵巣に古い血液が溜まるため、子宮や腸、腹膜などの周りの組織と癒着している可能性もあります。そういった場合でも妊孕性を高めるために、卵巣機能の温存に配慮しながら、悪い部分だけ取り除くことができる専門性の高い医師がいる医療施設で手術を受けることが望ましいでしょう。
手術を受ける場合、どのくらい入院しますか。また手術後、どのくらいで妊活を再開できるようになりますか。
佐藤先生●施設によっては日帰りで受けられるところもありますが、一般的には3泊4日~4泊5日程度の入院が必要になります。手術後は、一時的に卵巣機能が悪くなります。ただ、その後にちゃんと生理が戻ってくるようになれば、妊活を再開してもいいでしょう。概ね手術後、1~2カ月と考えておいてください。手術前に採卵するかどうかは、手術によって卵巣にどんな影響が出るか、その可能性を主治医に聞きながら、相談のうえ決めるといいでしょう。