ホルモン補充周期と自然周期による移植。どちらがいいか迷っています【医師監修】

【医師監修】堀川 隆 先生 琉球大学医学部卒業。国立国際医療センター、国立成育医療セン ター不妊診療科勤務を経て、2009 年12月より高崎ARTクリニッ ク院長に就任。国際医療センター勤務時より内視鏡手術・生殖補 助医療に従事。成育医療センターでは難治性不妊治療・加齢と不 妊についての研究に取り組む。B 型・みずがめ座。震災後の交通 機関が不自由ななかでも通院される患者さんの姿を見て、患者さん の強い気持ちを再認識。「医師としてもできる限りのことをしたい」 と、よりいっそう使命感が高まったそう。
はにこさん(36歳)からの投稿 Q.自然妊娠で子宮外妊娠を2度経験。両卵管を切除したため、体外受精の治療を しています。今まで4回、合計 6個の胚盤胞を移植。1度だけホルモン補充周 期(HR 周期)で移植した際に妊娠しましたが、6週で流産。排卵はありますが、 子宮内膜が薄く、高温期が9~10日と短いこともありHR 周期を選択している のですが、HR 周期は出血することが多いということで、流産した際も大量に出 血しました。医師からは「子宮内膜の薄さは妊娠とは関係ない。高温期も妊娠 すれば継続する」という説明で、次回は自然周期をすすめられています。残り2 個の凍結胚盤胞の移植、どちらの方法を選択したらいいですか?

自然周期?ホルモン補充?

移植の方法ですが、自然周期とホルモン補充周期(HR周期)、どのような違いがあり、それぞれどんな方に向いているのでしょうか?
堀川先生 ホルモン補充周期と聞くと、抵抗を持つ方もいるかもしれませんが、この周期は自然周期をまねてつくっているものです。
最近では、補充するホルモンも自然と同じようなナチュラルなエストロゲンプロゲステロンが使われるようになってきたので、体への作用は自然周期とほとんど変わりません。
当院では、月経周期が順調な方にはまず自然周期を選択します。
1〜2回トライして、そこで結果が思わしくない場合はHR周期に変えることもあります。
初めからHR周期を選択するケースは、排卵障害があってまったく排卵しない方や、排卵日が予想できず、通院頻度が高くなってしまいそうな方の場合。
また、高齢の方に多いのですが、卵胞の発育がすごく早くて、子宮内膜が厚くなる前に排卵してしまう場合ですね。
そのような時はHR周期で移植のタイミングをコントロールしたほうがいいと思います。

ホルモン補充と出血

はにこさんは、HR周期は出血しやすく、実際に大量に出血したことを心配されているようですが……。
堀川先生 少量の薬でホルモンの補充をすると、代謝の問題で少し出血することがありますが、「HR周期だから出血しやすい」というのは、僕は日常診療で感じたことはないですね。
大量の出血は流産によるもので、HR周期だからということではないと思います。
ホルモンをしっかり補充すれば、トラブルは起こらないのではないでしょうか。

色々な方法を試す

次回の移植、堀川先生だったらどちらをおすすめしますか?
堀川先生 はにこさんは月経周期が28 〜 34 日とまずまず正常で、排卵もあるので、自然周期にもトライできる状態です。
子宮内膜については、HR周期で厚くならないようなら、自然周期で厚くなるということは考えにくい。
つまり、マイナス点を含めても、どちらの方法で移植しても結果に大きな差は出ないのではないかと思います。
ただ、同じ方法をくり返して結果が出なければ、他の方法でチャレンジすることも必要です。
そのような観点で考えれば、主治医の先生がすすめるように自然周期で戻されてみてもいいのでは。
高温期が短いのは移植後、ホルモンを補充すれば解決できます。
妊娠のチャンスは十分あるので、ぜひ前向きにトライしていただきたいですね
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

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