2回移植で良好胚盤胞を移植するも陰性。通院先の限られた選択肢のなかで、着床率を上げる方法に悩むみかんさん。今後の治療の方向性や検査のタイミングについて、リプロダクション浮田クリニックの浮田祐司先生に教えていただきました。
違う刺激法を試したり卵子の質を高めるサプリの摂取を
Q.みかんさんの治療状況について、どのように思われますか?
ご相談内容の中では、ご主人の精液所見や抗精子抗体は異常がないのに、顕微授精をされている理由が気になります。もう一つは、2回の採卵で胚盤胞が2つだけということです。この方の年齢とA M H(結果は異常なし)を考えると、胚盤胞の個数が少ない印象はありますね。このあたりに改善の余地があるのではないかと思います。
たとえば、採卵は2回とも同じ卵巣刺激法、または1回目と2回目は違う方法でされているかによって、胚盤胞の到達率は変わってきます。もし同じ刺激法でされているなら、次の採卵は違う刺激法に変えてみるのも一つです。それと同時に葉酸やビタミンDのサプリメント以外に、卵子の質の向上が期待できるP Q Qを取り入れてもいいと思います。
必要な治療を受けるために転院を視野に入れるのも一つ
Q.2度の移植は陰性で、通院先では使えるお薬や治療法が限られているそうです。
1回目の移植は自然周期、2回目はホルモン補充周期でされています。もともとお薬を飲まないと月経が来ない方なので、排卵障害があるのかもしれません。この方にはホルモン補充周期が向いていると思います。
いま使われている黄体ホルモン補充は、おそらくルトラールという飲み薬だけですね。これに天然型黄体ホルモンのウトロゲスタン膣剤を組み合わせると着床率、妊娠率が上昇するという報告があります。通院先では取り扱いがないとのことですが、有効な手段の一つですので、保険診療であればルトラールとウトロゲスタン膣剤の併用はおすすめしたいところです。
その他に、飲み薬の量を増やす方法もあります。ただ、保険診療ではこの選択肢は現実的ではないかもしれません。最近は黄体ホルモンの注射もありますが、通院先では移植後の注射は行っていないとのこと。そうなると現状の方法を繰り返すしか選択肢はなくなります。さらに、移植方法(SEET法、2段階移植、2個移植)についても、今の段階で実施するかどうかは別にしても、この先うまくいかない時は、どれも選択肢として検討される治療法です。このことを踏まえると難しい選択にはなりますが、必要な治療を受けるために、転院を視野に入れるのも一つかもしれません。
3回移植して結果が出ないときは積極的に子宮内膜の検査を
着床の窓や反復着床不全の検査は受けたほうがよいですか?
良好胚盤胞を2回移植しても妊娠に至っていないので、検査の考慮はされますが、まずは先にお話しした卵巣刺激法の見直し、卵子の質を上げるサプリメントの摂取、飲み薬と膣剤を併用したホルモン補充周期など、条件をきちんと整えたうえで、3回目の移植をされてみてはどうでしょうか。それで妊娠に至らないときは、積極的にERA検査と採血による反復着床検査、慢性子宮内膜炎検査を受けられるといいと思います。
妊娠や出産に適した体重をめざしましょう
二人目不妊は多いのでしょうか?また、その他のアドバイスをお願いします。
一番多いのは一人目を妊娠してから年数が経ち、女性が年齢を重ねることで不妊症になるケースです。この方はまだ29歳ですし、一人目を授かっておられるので、二人目の妊娠の可能性は十分あります。転院も検討されながら、諦めずにトライしてほしいと思います。
それと身長160cm、体重40kg(BMI 15.6)はかなり細めです。低体重は月経不順や不妊症の原因になります。詳細なデータが分かりませんが、ここに原因が隠れていることも考えられます。食事に気を使っておられるので、高タンパク、低糖質を突き詰めているのかもしれません。体にとっては糖質も必要ですので、偏りすぎると必要な脂肪がつきにくくなります。体重は少なすぎても、多すぎても良くありませんが、妊娠後のことも考えて適正体重(BMI 18.5〜25)を目安に、あと10 kgは増やすようにしたいですね。