AMH値も低く、卵が採れません。何かできることはないでしょうか?

30代後半から始めた不妊治療。AMH値も低く、治療をするもなかなかいい卵が採れません…。何かできることはないのでしょうか?絹谷産婦人科の絹谷正之先生に教えていただきました。

絹谷正之 先生(絹谷産婦人科)愛媛大学医学部卒業。広島大学医学部産科婦人科学教室入局。その 後、東京の山王病院リプロダクションセンターにて高度生殖補助医療研修、顕微授精を修得。1999年にはカナダ、アメリカにて高度生殖補助医療研修を行う。2000年、絹谷産婦人科副院長、2002年より院長に。

 

helenさん(40歳)37歳から不妊治療を始めました(AMH値0,1、FSH値10)。これまで32歳の時に左側のチョコレート嚢腫で腹腔鏡手術をしています。内膜症の他、筋腫が数cmのものが2、3個あります。39歳の時、2度高温期が20日ほど続いたので期待しましたが妊娠せず。クロミッドを使用しましたが卵胞が確認できず、FSH値が78,2まで上昇。カフマン周期を3カ月、FSH値は62,7でした。あと1.2年は治療を続けたいと考えているのですが、何かできることはありますでしょうか?

 

年齢を考慮しても、AMH値0,1は低いのでしょうか?

40歳未満でこの数値だと、やはり低AMH値です。子宮内膜症の手術歴があることも、少なからず影響しているのではないでしょうか。

30歳頃からエストロゲン(E)の分泌量が減少し始め、FSH・LHの分泌量は増加していきます。やがて、過剰分泌されることが常体化します。

 

カウフマン療法について教えてください

卵子の発育の契機となるFSHの存在は、全く無いと卵子が発育せず、常に過剰に分泌されているとうまく機能しません。FSHが恒常的に高い状態ではうまく機能しないことが分かっています。

カウフマン療法は、不足している卵巣ホルモン(エストロゲンやプロゲステロン)を薬で補充して、規則的な月経周期を再現し、長期的な卵巣機能不全によるホルモン欠如状態の改善を目的としています。下垂体機能が抑制されますが、カウフマン療法中止後には視床下部-下垂体の機能が活性化して、卵胞発育とそれに引き続いて排卵が誘発されると推測されています。3~6ヶ月間の治療後、このリバウンド現象によって、その後の自然排卵周期が期待できるとされています。

ただ、卵巣刺激の方法は様々で医師によっても大きく異なります。helenさんのご質問内容からはわかりませんが、当院ではカウフマン療法している方へは卵胞の状態をしっかりとチェックしているのですが、どうなのでしょうか。

 

今後どのような治療を進めるといいでしょうか?

カウフマン療法を行ってもなかなか卵胞が育たないという状態ならば、他の排卵誘発を試してみてはいかがでしょうか。

ここ最近、FSH調整法とよばれている治療法があります。エストロゲンを投与してFSH値が下がるのを待っていると、徐々に卵胞が育ち始めるというものです。カウフマン療法と同じようなことなのですが、FSH調整法による卵巣刺激を行うことで、排卵誘発に成功し、妊娠例が見られるようになってきました。それを期待して、エストロゲンを投与して細めに卵胞をチェックするということです。これが考えられる一つの方法です。

 

もちろん他にどうしても子どもがほしいのであれば、卵子提供や特別養子縁組といった手段もあるかと思います。

helenさんが自分の卵子で子どもを授かりたいと思われているのであれば、FSH調整法を試されてみることをお勧めします。ただし厳しい状況であることに変わりはありません。とはいえ、まだトライする余地は少しあるように思います。

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