Q たくさん採卵できるのに 受精しづらく、着床もしない

 
佐藤 雄一 先生 医学博士・産婦人科専門医・日本産科婦人科内視鏡学会技術認 定医・日本生殖医学会生殖医療専門医。佐藤病院院長・高崎 ARTクリニック理事長を務める。

ドクターアドバイス

●多囊胞性卵巣症候群、 耐糖能異常がないか検査を。
●ビタミンD欠乏症は着床しにくくなるので、補って!
kikiさん(39歳)からの相談 Q.結婚から6年後、35歳から不妊治療を開始。夫婦とも に検査では異常がなく、タイミング療法、人工授精を試 みましたが結果が出ず、顕微授精にステップアップしまし た。22 個採卵できましたが、受精卵は7 個。SEET法、 アシストハッチング二段階胚移植も試みて4回移植し ましたが、陽性判定があったのは1度で、それもすぐに 化学流産しました。担当医は、「染色体異常かな? 1 度 は陽性反応が出たのだから、頑張りましょう」と言うだけ です。その後2年間不妊治療を休み、先月から再開しま したが、結果は同じ。残りの胚は1つなので、移植前に ミトコンドリアを摂取しようと思いますが、ほかにできる ことはあるか。今度ダメだったら転院したほうがいいか、 自然妊娠の可能性も残されているか、教えてください!

タイミング療法から不妊治療をはじめ て4年目。

現在は顕微授精にステップアップし、 22 個を採卵。これまでに 4 回 移植しましたが、結果が出ませんでした。
佐藤先生  移植には、SEET法、アシストハッチング、二段階胚移植など、多 くの方法も試みられたとのことですが、相談者の kiki さんの文面からは、着 床より卵子そのものに問題があると考えられます。どのような排卵誘発方法だったかなどのデータが乏しく、判断材料となるものも少ないので、憶測でしか言えませんが、 1 度の採卵で 22 個も採れたと いうことであれば、かなり数が多いので、この時点で多囊胞性卵巣などの何らかの 障害があるように思えます。

 
多囊胞性卵巣の場合、数こそ十分過ぎるほどに採卵できるのですが、一つひとつの卵子の質に問題があることが多々あります。通院されている病院で一通りの検査は受けられたとのことですが、多囊胞性卵巣や、その引き金となる耐糖能異常といったものがないか、今一度検査を受け、そうと診断されたら、その治療から始めてはいかがでしょうか。

凍結してある胚は残り1つとのこと。 移植前に自身でできることはありますか。

ミトコンドリアなどのサプリメントは、有効と考えられますか。
佐藤先生 ビタミンDが欠乏していないかも、ぜひ検査してください。最近では、「体内のビタミンD値が低いと着床しにくい」という研究報告もあるので、不足しないよう心がけましょう。特に、美白に熱心な女性は不足しがちな傾向にあります。ある程度は紫外線を浴びないと、体内で十分なビタミンD量が産生されないのです。
 
ミトコンドリアに関しては、サプリメントなどの摂取によって妊娠率が上がったという報告は、今のところありません。

今後、自然妊娠の可能性はありますか。

また、新たに採卵から始める場合は、転 院したほうがよいでしょうか。
佐藤先生  kiki さんの場合、検査の 結果でタイミング療法から始められているので、自然妊娠の可能性もゼロではな いでしょう。しかしながら、現在のご年齢からすると、やはり顕微授精のほうが確率的には高いので、どうか前向きに続けていただきたいと思います。

 
転院に関しては、文面からは「染色体異常かな?と告げるだけで、具体的な説明もなく、治療の方向性が見えない」 という、担当医へのご不満も垣間見ることができます。不妊に限らず、治療は医 師と患者の信頼関係が大切ですから、通院や担当医との関係がご負担になっているとしたら、そのまま同じ病院で治療を 繰り返すことが、kiki さんのストレスになるとも考えられます。転院すれば、初診として基本的な検査からやり直しますし、気持ちも新たにできる可能性もあるかもしれません。

 

 

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。本サイトの全ての記事は医師監修です。