体外受精の準備期間中に人工授精をするか迷っています

4回目の人工授精に失敗。

体外受精の準備期間中も 人工授精を続けるべき?

大島 隆史 先生 自治医科大学卒業。1982年、新潟大学医学部産科婦人科学教室入 局。産婦人科医として3年間研修後、県内の地域病院の1人医長とし て4年間勤務。1992年、新潟大学医学部において医学博士号を授 与される。新潟県立がんセンター新潟病院、新潟県立中央病院勤務を 経て、1999年、大島クリニックを開設、院長に就任。昨年から、若い 頃縁があった地への旅を続けている大島先生。先日は、昭和60~61 年の2年間赴任した福島と新潟の県境にある小さな町へ。なじみの店はな くなっていましたが、いまだコンビニのないのどかな風景だったとか。
ジュンさん(26歳)からの相談 Q.不妊治療歴5カ月。なかなか赤ちゃんができなくて検査を受けたら、主人は精子の運動 率が60%、私は片方の卵管が曲がっていて60点とのこと。さらに私は排卵のタイミ ングが人より遅いタイプだそうです。先生から「自然妊娠は難しそうなので、人工授精 をしましょう」といわれてトライしましたが、先日4回目の人工授精に失敗。2回目の時 は「今回は精子の量も数値もいいから、少し希望をもてますよ」とのことで期待して いたのですが……。今月を含めてあと2~3回(合計で6~7回)人工授精をして妊娠 しなかったら、体外受精へのステップアップを考えています。ただ、今は経済的に苦しく、 体外受精ができるのはまだ先になりそう。あと2~3カ月で人工授精をいったんやめて、 体外受精を待つか、体外受精ができるまで人工授精を続けるか迷っています。

排卵障害の可能性

年齢的にはまだ若いのに自然妊娠が難しいのは、精子の運動率や女性側の卵管や排卵に 問題があるからなのでしょうか。
大島先生 精子の運動率は 60 %ということで すね。
WHOの基準だと 40 %以上なら基準値の 範囲となっていますから、それほど気にされる ことはないと思います。
人工授精をする時に洗 浄精子の数が出ると思うのですが、それはどの 程度だったのでしょうか。
重要なのはその数の ほうで、人工授精をする場合、1000万個以 上の運動精子は必要だと思います。
女性側の問題についてですが、よくわから ないのは卵管が曲がっているといわれたとの こと。
卵管というのはもともとぐにゃぐにゃ と曲がっているのが正常で、直線状のほうが 良くない。
詳しい状況がわからないので、こ れについては何ともお答えできません。
排卵のタイミングが遅いことに関しては、 もしかしたらこの方はインスリンの数値が高 い可能性があります。身長158㎝で体重は85kg。
肥満ぎみでBMI値が高い人はインス リンの数値も高い場合が多いんですね。
その ような状態だと排卵に障害をきたすことがあ ります。
調べていないようでしたら、きちん と検査したほうがいいでしょう。

人工授精時の排卵誘発

治療についてですが、これまで人工授精に4回挑戦して結果が出なかったとのこと。こ のご夫婦にとって人工授精は有効だと思われ ますか。
大島先生 人工授精で治療するのは間違って いないと思いますが、ちょっと気になるのは 排卵誘発をしているかどうかということです。
お薬を使うと卵巣が腫れてしまう方もいて、 少しお休みが必要になる場合があるのですが、 この方は毎月人工授精をされているので、お そらく排卵誘発はしていないと思われます。
いくら人工授精をしても、排卵誘発をしな ければ自然妊娠と結果はほとんど変わりませ ん。
1個の排卵で、それがいつもいい卵子と は限らないので、妊娠率は向上しないのでは。
当院のデータだと、 34 歳以下で排卵誘発をし て人工授精を行った場合、1回目、2回目で20% の方が出産までいく妊娠しているんです ね。
ですから、タイミング法でも人工授精でも、 必ず排卵誘発をするようにしています。

20代の人工授精

では、排卵誘発をして人工授精を続ければ、この方も妊娠を期待できますか?
大島先生 体外受精へのステップを考えるの はまだ早いと思いますね。
女性が 26 歳とまだ お若いし、経済的な負担も大きいと思うので、 しばらく排卵誘発をしながらの人工授精で頑 張ってみてもいいのではないでしょうか。
も しインスリン抵抗性があるようなら、インス リンの数値を下げるメトホルミンというお薬 も併用すれば妊娠率をさらに向上できるので はないかと思います。
20 代の方であれば、まだ5回は人工授精で トライできると思います。
体外受精を考える のはその後でも遅くないでしょう。
妊娠している人の平均排卵数は 2.7 個、妊娠 していない人は2個と有意な差があるので、 当院では妊娠のチャンスを高めるためには1 個より、注射による誘発で2~3個排卵する くらいの治療が望ましいと考えています。
た だ排卵数が増える分、双子など多胎のリスク も若干高まるので、そこは医師の説明をきち んと受けて、臨んでいただきたいですね。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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