排卵誘発剤の投与で、お腹がパンパンに!

排卵誘発剤の使用でお腹が腫れて苦しいほかに有効な治療法は?

高崎ARTクリニック 佐藤 雄一   先生 医学博士・産婦人科専門医・日本生殖医学会生殖医療専門医・日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。2018 年、体づくりができるフィーカレディースクリニック(東京・日本橋) を開院。佐藤病院グループ代表。佐藤病院院長・高崎 ART クリニック・Fika Ladies’ Clinic 理事長を務める。

相談者:BENIBENIさん(32歳)2 人目希望です。卵子がなかなか成長せず注射で治療したのですが、子宮が腫れてしまうため、体外受精をすすめられています。1 人目も注射での治療で授かることができましたが、その時もお腹がパンパンに腫れて苦しみました。やはり、こういった場合は体外受精に切り替えるべきでしょうか? できることなら自然妊娠を希望していますが、その可能性があるかどうかも教えてください。

 

注射(おそらく排卵誘発剤)を投与すると、「お腹がパンパンに腫れて苦しい」とのこと。原因は?

佐藤先生●「子宮が腫れる」とありますが、きっと「卵巣が腫れる」の勘違いでしょう。データが少ないので断言はできませんが、おそらく P C O S(多囊胞性卵巣症候群)ではないかと推察します。この場合、排卵誘発によって卵巣過剰刺激症候群を起こしやすく、卵巣が腫れて苦しいほどお腹がはることがあります。

P C O S は、 脂肪が 悪さをするという報告があるので、肥満ぎみの人は特に注意が必要です。相談者の B E N I B E N I さんは適正体重内ですが、生まれつきの体質としてなりやすい人もいます。適正体重であっても、筋肉量が少なく、体脂肪が多いといった場合ではなりやすい傾向にあるので、食生活に気を配ると同時に、ぜひ定期的な運動も心掛けてください。

第1子を現在と同じ治療法で授かっています。第2子もこのまま同じ方法でよいものでしょうか?

佐藤先生● B E N I B E N I さんの場合、排卵誘発剤の注射量を増やせば多胎妊娠のリスクが高くなり、減らせば排卵しにくくなる、薬ではとてもコントロールしづらいケースのように思われます。「できるだけ早く第2子を授かりたい」、「お腹がパンパンになるといった副作用は避けたい」というのであれば、担当医のおっしゃる通り、体外受精にステップアップされるのが良策ではないでしょうか。

お腹がパンパンになるような排卵誘発法で妊娠すると、妊娠中もお腹の張りで苦しむことが多々あります。

「できれば自然に近い方法で」と望んでいらっしゃいます。

佐藤先生●今年の不妊治療ガイドラインから、レトロゾールというお薬が新しく使用できるようになりました。これは多胎妊娠のリスクが低く、妊娠率が高いというメリットがある排卵誘発作用のあるお薬で、新しいガイドラインを作るにあたって、私も強く使用許可の要請をしたものです。現在は健康保険適用外ではありますが、クロミッドRでは無効の場合 や、注射による排卵誘発が体質的に合わない場合は、有効な選択肢の一つとなると思いますので、ご興味があれば一度担当医と使用について話し合ってみてはいかがでしょうか。 まずはきちんと自身の病状、病名を確認し、適切な治療をしてください。

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