AMHが低く O.96ng/mlでした。

閉経が早い…?

浅田 義正 先生 名古屋大学医学部卒業。1993年、米国初の体外受精専門施設に留 学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を用いた顕 微授精による妊娠例を報告。2004 年、浅田レディースクリニック 開院。2006年、生殖医療専門医認定。2010年、浅田レディース名 古屋駅前クリニック開院。浅田先生は国内でAMHをもとに治療方 針を決めた先駆者。「2008年にAMH測定を始め、いろいろ測定法 も変わってきましたが、メーカーもようやくAMHの普及に力を入 れてきています。やっとここまで来たかと感無量です」。

ドクターアドバイス

AMH値はその人の持つ個性。
低いから、異常だ からと悩むよりも、AMH値によってステップ アップのタイミングや治療方針を調整でき、い つまで治療をするかな ど自分の人生設 計にも役立つ ということを 知ってほしい と思います。

AMH

卵巣予備能の評価目安として、近年、 注目されている抗ミュラー管ホルモン のこと。
発育過程の卵胞から分泌され、 血液検査で測定。
その数値によって卵 巣内に残る卵子の数を推測します。

0.96ng/ml

AMH値には非常に個人差がありま す。
年齢による平均値は設定されてい ませんが、Mickingさんの場合は統 計上、かなり低い数値。
年齢とともに AMH値は減少し、逆にあまりに高いと PCOSが疑われます。
Mickingさん(33歳)からの相談 Q.約1年前からタイミング4回、AIH5回で、今周期に初めてIVF をします。先週初めてのAMH検査では0.96ng/ml(45歳以 上)と予想以上に低い数値。先生はこれぐらいの数値でも妊 娠している人はいるといいますが、閉経が早く来るのでは …? この値をもとにクロミッドⓇを加えて、昨日、今日 とHMG注射を2回。タイミング~AIHの間は生理3 日目よりクロミッドⓇ1錠×5日間、AIH3回目後は2 周期クロミッドⓇを休みましたが、自力での排卵はなく、 プラノバールⓇでリセット。通院中の病院はクロミッドⓇ 採卵が基本、無麻酔採卵、成功報酬制で、低刺激でたくさ ん採卵する感じではありません。アドバイスをいただけますか。

そもそもAMHって何?

AMH=抗ミュラー管ホルモンが胎生期に男性ホルモンとともに作用すると、人間は男性として生まれます。
ただ実は、女性でも、妊娠の 32 週くらいからAMHが分泌されていて、それは原始卵胞から少し発育した初期の小さな卵胞からのみ分泌されます。
卵胞は、原始卵胞から一定の割合で常に育っていると考えられているので、小さい卵胞の数が多ければもとの原始卵胞の数も多く、少なければ原始卵胞も少ないだろうと推察でき、AMH値は卵巣に残る卵子の数を反映するといわれます。
不妊治療では、AMHの検査はできるだけ早く行うべきです。
MickingさんのAMH 0 ・ 96ng/ml は簡易刺激法を 選択する数値ですが、簡易刺激法では2~3個しか採卵できないでしょうから、初めてであれば、その前にショート法でできる限り卵子を採ろうと試みることもありえます。
もし、AMHが 2ng/ml 以 上であればアンタゴニスト法で普通の体外受精ができます。
AMH値と採れる卵子の数は非常によく相関しますから、当院では年齢とAMH値を見て、おおよその治療方針を決めます。
また、 0 ・ 96ng/ml ( 45 歳以上)とも あるように、AMH値=卵巣年齢という言葉をよく聞きますが、そういう認識は適切ではありません。
当院の年齢別AMH値分布を見ても、AMH値は個人によって非常に大きなバラつきがあり、 30代でほとんど 0 の人も数多くいます。
AMHに標準はなく、個人差のみというのが正しい認識です。

低AMHは妊娠しづらい

AMHと妊娠率は相関しません。
AMH値が低いということは卵の数の面で不利なのですが、受精卵ができていれ、妊娠率には年齢が一番よく相関します。
ただ、同じ年齢であれば、 2 個の人よりも 10 個、 10 個よりも 20 個の人のほうが、その中によい遺伝子の組み合わせの卵子がある可能性が高いので、妊娠率も高くなります。
アメリカやヨーロッパの体外受精のデータでは、採卵当たり、何個で出生までいけるかというと平均 25 個。
1 個ずつ採っていれば 25 回採卵する必要があります。
つまり、クロミッドⓇ採卵が基本というのは、たまたま良い卵子がそこにめぐり合えばいいけれど、採卵当たりの妊娠率は非常に低いといえます。

AMHが低いと 閉経が早い?

海外のデータによると、 25 歳でAMHが非常に低い人のグループと、逆に非常に高い人のグループの閉経年齢までの推移をグラフ上のラインで引いていくと、AMHが平均的なグループの人に比べて、高い人たちは約 3 年閉経が遅く、低い人たちは約 3 年閉経が早いという結果が出ています。
要するに、その程度の差です。
意外にAMHの数値に比例して、閉経までの期間が極端に短くなるということはないのです。

AMHが低い場合は どんな治療方針になる?

AMHが低いということは、卵巣刺激をしても採れる卵子が少ないということですから、たくさん注射を打っても無駄になることは明らかです。
また、卵子を保存している卵巣の不具合があり、その分、卵子の老化が進んでいる可能性もあります。
さらに、前述のようにものすごく閉経が早くなるということはありませんが、ある程度、早めのステップアップは必要です。
要するに、治療は急ぐ必要があり、採れる卵子が少ないことに合わせた治療方針になります。
クロミフェンがいいのか、注射を打ったほうがいいのかというのは、血液中のFSHLH、エストラジオールのレベルによって決めます。
こういう人はこうすべきというものではなく、その人のその時の状態に合わせて、注射を加えたり、増やしたり減らしたりという調整をしていくべきだと思います。
Mickingさんの場合は、クロミッドⓇを続けていくと子宮内膜が薄くなったりするから、とりあえず少しお休みということだったかもしれませんが、セキソビットⓇやアロマターゼ阻害剤を使うなど、誘発方法を変えてもいいのではないかと思います。
リセットのためのプラノバールⓇも昔の中用量のピルですから、余計に排卵が抑えられて、次の周期にも影響すると思います。
ドクターによって治療方針も違いますから、何回かやってダメであればクリニックを変わることも必要です。
いずれにしても低AMHであれば治療時間はあまりありません。
排卵誘発法を変えることなど早めにセカンドオピニオンを活用してはいかがでしょうか。
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