初めて不妊の検査・治療を受ける方は不安がいっぱいだと思います。
疑問や心配をすっきり解決し、波に乗るようにスムーズに進んでいけるよう、 ファティリティクリニック東京の小田原靖先生がわかりやすくレクチャーします!
月経中に測る基礎値から 卵巣の状態を推測できます
不妊治療の検査では、採血をして血中のホルモン状態を調べます。
体の中で分泌されているいくつかのホルモンは排卵のしくみや妊娠の成り立ちなどに大きく関わっており、これらの値をみることで、卵巣の状態がどのようになっているかということをある程度推測することができます。
ホルモンの値というのは月経周期によって変動があるのですが、月経中というのは、比較的その変動に影響されない時期なんですね。
月経の2日目から3日目くらい、許容範囲として1日目から5日目くらいに測ると基礎値がある程度正しく把握できます。
この時期に調べるホルモンは、エストロゲン(E2)、黄体化ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、プロラクチン(PRL)の4種類になりますが、加齢などで卵巣の機能が落ちてくると、どうしても頑張って卵巣を刺激しようとして、E2やLH、FSHの値が高くなることがあります。
逆に、たとえば下垂体の機能が悪くて生理が起こりにくいな ど、月経障害や排卵障害によってはE2、LH、FSHの値が低くなることも。
また、絶対ではありませんが、多嚢胞性卵巣症候群の場合、LHがFSHに比べて高値を示す場合があります。
このように、ホルモンが示す値は卵巣機能 を評価する基準の一つになり、不妊治療をするうえで不可欠なものとなってきます。
さらに、基礎値以外で、月経のそれぞれの時期でみるべきホルモンというのがあります。
たとえば黄体ホルモンというのは排卵をした後、黄体期に向けて分泌が進んでくるわけですから、排卵をした1週間後くらい、いわゆる黄体期中期に測る必要があるわけですね。
あとは排卵の時期には、排卵に伴ってLHというホルモンの大量放出(LHサージ)が起こります。
この時のホルモン値測定は排卵の時期を予測するための有効な材料に。
排卵のタイミングをはかって行うタイミング療法や人工授精をするような場合には、LHを測定することがあります。
●おもなホルモンの正常値と値からわかること
エストロゲン(E2)
正常値 50pg/ml(月経中)
女性ホルモンや卵胞ホルモンと呼ばれているホルモン。
正常値を下回っ たり、極端に上回った場合は卵巣の機能が低下していることが考えら れる。
黄体化ホルモン(LH)
正常値 10mIU/ml以下(月経中)
成熟した卵胞を排卵させるためのホルモン。
卵巣の機能が低下すると 上昇傾向に、月経や排卵に異常があると値が低くなることがある。
また、 多嚢胞性卵巣(PCO)があると、FSHよりも高値を示す場合も。
卵胞刺激ホルモン(FSH)
正常値 10mIU/ml以下(月経中)
脳下垂体から指令を出して卵胞を刺激し、発育を促すホルモン。
正常 値を上回った場合は卵巣の機能が低下していることが考えられる。
プロラクチン(PRL)
正常値 28ng/ml以下(月経中)※検査方法により差があります
乳汁分泌ホルモン。
値が高くなると排卵障害や着床にも影響を及ぼすと いわれているが、数値に表れないこともあるので、通常の採血ではっき り判断できない時は「TRHテスト」というホルモンの負荷試験を行う。
黄体ホルモン(P4)
正常値 10ng/ml以上(黄体期中期)
周期によって変動しやすいホルモンなので、測る時期が少しずれるだ けで数値に差が出る場合も。
排卵確認後、1週間後くらいに測定する のが一般的。
値が低い場合、着床障害や流産の原因になることも。
一つの値に着目するのではなく 総合的に判断することが必要
それから、比較的新しいホルモン測定で、AMH(抗ミュラー管ホルモン)検査というものがあります。
AMHは、排卵に至る少し前くらいの前胞状卵胞というところから出てくるホルモン。
ですから、前胞状卵胞数が多ければ値は高く出るし、少なければ低く出るということですね。
残りの卵胞数、つまり卵巣の予備能を評価できると考えられていますが、同じ年齢の方でもすごく低い方もいれば高い方もいらっしゃいます。
ある程度参考にはできますが、「AMHが低いからもう妊娠できない」ということではありません。
AMHを含め、一つのホルモン値だけで「妊 娠できる可能性はあるかどうか」ということを判断したり、治療法を絞ってしまうべきではないと思います。
すべてのホルモンの値やその他に行う検査結果を併せて、総合的な評価の中の一基準としてとらえる必要があるでしょう。