甲状腺機能・クラミジア・ 抗精子抗体の検査

自 覚 症 状 が なくても、妊 娠 や 赤 ちゃん の 発 育 を妨 げるホ ル モンの 異 常 が あったり、細 菌 に 感 染し て い たり、抗 体 を もって い ることも。

不 妊 治 療 を 受 ける前 に 必 要 とさ れて い る3つ の 検 査 につ い て、秋 山レディースクリニックの 秋 山 芳晃 先 生に 解 説 をしていただきました。

 

秋山 芳晃 先生  東京慈恵会医科大学卒業。東京慈恵会医科大学附属病院、国立大蔵病 院に勤務後、父親が営んでいた産科医院を継ぎ、不妊症・不育症診療に特 に力を入れたクリニックとして新たに開業。電子カルテを導入してから会計が早 くなるなど、院内の作業効率が大幅にアップ。診察中の入力はまだスタッフの 補助が必要とのことですが、患者さんにとっても良い影響が出ているようです。

ドクターアドバイス

早めの検査・治療が妊娠率を上げます

今回ご紹介した3つの検査はできれば妊娠を考えた時点で、 皆さんに受けていただきたい検査です。早い段階で1つでも 不妊の原因をつきとめられれば、それが妊娠の可能性を高め ることにつながっていくと思います。

不妊治療を受ける前の スクリーニング検査の一つ 「甲状腺機能検査」とは?

適当な量の甲状腺ホルモンが妊娠初期のホルモン調整にかかわっていることから、甲状腺機能は重要な検査項目です。不妊治療を受ける方は、特に自覚症状がなくてもスクリーニング検査として受けることが多いでしょう。この検査は採血により行われます。

甲状腺ホルモンが出すぎている「甲状腺機能亢進症」は、流産や早産率が高くなるほか、早期胎盤剥離や胎児発育不全などに関与すると考えられています。

反対に甲状腺ホルモンの分泌が少ない「甲状腺機能低下症」は、亢進症と同様に流産や早産、胎児発育不全のほか、胎児の脳の発達に影響するのではないかといわれています。

また、甲状腺ホルモンの値が基準値より低い「顕在性機能低下症」、甲状腺ホルモンは正常でも甲状腺を刺激する甲状腺刺激ホルモン(TSH)というホルモンの値が高い「潜在性機能低下症」でも亢進症や低下症と同様の影響があるとされています。

TSHの数値に関しては、アメリカの内分泌学会で推奨されている 2.5µIU /ml 以下にすることが望ましいと考えられており、この数値より高ければ甲状腺ホルモンの補充を検討する必要があるかもしれません。日本人のデータに基づいた決められた治療のガイドラインがないので、潜在性機能低下症の場合はそれぞれの施設における基準で、補充をするかしないか、決めていくことが多いようです。

甲状腺機能検査をして数値に異常が認められた場合は甲状腺の病気が見つかることもあるので、当院では専門科の受診をおすすめしています。異常があっても薬でうまく数値をコントロールしていけば妊娠や出産への影響を抑えることができるので、早めに検査を受けていただきたいですね。

クラミジア検査で 感染が認められたら ご主人も一緒に治療を

クラミジアは卵管や骨盤内の炎症を起こす細菌です。卵管に炎症が起こると卵管性不妊や卵管妊娠の原因になることも。また、妊娠後は流産や早産の原因になりうるといわれています。

クラミジアは性交渉のみで感染する性感染症です。約 90 %は無症状なので、感染したことに気づかずに過ごしている人が多く、決して珍しいものではありません。当院の場合だと、検査をした半数弱の人に感染したことを示す抗体が見つかっています。

検査は子宮の入り口を綿棒でこすり、クラミジア(またはクラミジアのDNA)を直接検出する方法と、採血で血液中の抗体を調べる方法の2種類があります。前者のほうがより正確といえるかもしれませんが、子宮の入り口には菌は存在せず、骨盤内や卵管に菌がいる可能性を想定すると、後者のほうがより漏れの少ない検査といえます。

クラミジアの抗体にはIgGとIgAのタイプがあり、IgGはクラミジアに過去に一度でも感染した人はみんなもっている抗体。一方、IgAは現在感染している人に出やすい抗体といわれています。IgAが検出されたら、クラミジアに効果がある抗菌薬を 10 ~14 日間投与する薬物治療を行います。

クラミジアは性交渉で感染する細菌なので、当院では念のためご主人への治療をおすすめすることも。また、卵管に菌がいると造影剤と一緒にお腹の中に広がってしまう危険性があるので、子宮卵管造影検査を希望する方は必ずその前にクラミジア検査をしていただくようにしています。

精子の侵入を妨げる 抗体の有無を調べる 「抗精子抗体検査」

抗精子抗体検査は、血液中に存在する精子に対する抗体で、主に精子不動化抗体という種類の抗体を調べる検査です。

不妊女性の9~ 12 %くらいに認められるといわれており、この抗体があると精子の子宮内への侵入・受精がうまくいかないといわれています。最近では受精卵の発育や着床にもかかわっているのではないかという説も出ていますが、不妊症ではない女性からも検出されたり、数値が高い人でも自然妊娠することがあり、検証が待たれます。

検査方法は女性に採血を行い、その血清に検査用の精子を混ぜて、どれくらい精子の動きが邪魔されるかを観察し数値化します。

値が低い場合は通常の性交渉や人工授精で妊娠可能なケースも。一般不妊治療の範囲で数回繰り返しても妊娠に至らない時や数値が高い場合は、一般的には体外受精に進むのが望ましいとされています。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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