糖尿病でも妊娠の確率は?

糖尿病で薬を服用、 減量中ですが 妊娠できますか?

石川 弘伸 先生 1991年滋賀医科大学卒業、同大学院修了。泉大津市立病院副医長、 水口市民病院産婦人科医長、野洲病院産婦人科部長を経て、2003年 より醍醐渡辺クリニック副院長。大学院では生殖医学で着床の分野の研 究に携わり、生殖医療の道を志す。大学で2年先輩である同クリニック院 長の渡辺浩彦先生との縁で同クリニックへ。A型・射手座。同クリニック は携帯電話やパソコンから、診察の予約やキャンセルができると好評なイ ンターネットの予約システムや、より迅速できめ細かな診療に役立つ電子 カルテの導入など、患者さんのための先進的な取り組みも特徴。
パルママさん(32歳)からの相談 Q.糖尿病の教育入院をしていました。2型糖尿病、挙児希望ということもあり、インスリ ンのレベミルⓇを朝3単位、メトグルコⓇ錠250を朝1、夕3服用しています。男性ホ ルモンは多めと言われました。現在の血糖値は食前80~130mg/dL、食後130~ 190mg/dLくらいです。体重は入院前より5㎏減って83㎏です。インスリン抵抗性と も言われ、主治医の許可がないと妊娠できないことも知っていますが、きちんと妊娠で きるのでしょうか? また子どもに糖尿病は遺伝してしまいますか?  ※ 嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と診断されたこともあります。今回、入院中に婦人科にかかった時 は、排卵しているみたいなので排卵後の診察と言われました。

糖尿病と妊娠

糖尿病の状態で妊娠・出産すると、どのようなリスクをともないますか?
石川先生 糖尿病の状態のまま出産すると、胎児奇形が起こりやすいとは昔からよくいわれています。
妊娠すると糖尿病は重症化しますので、そうすると赤ちゃんが育ちにくかったり、反対に育ちすぎて巨大児が生まれやすいというリスクが生じます。
実は女性の体にとって妊娠とは、とてもス トレスが多い状態です。
体にストレスがかかることで、中高年になって発症する潜在的な病気が妊娠中に顔を出すともよくいわれます。
健康な方でも妊娠中に一時的な妊娠糖尿病を発症する方が時々いらっしゃいます。
妊娠糖尿病よりも、もともと糖尿病の方のほうが出産のリスクが高いのですか?
石川先生 赤ちゃんの体は妊娠したごく初期の段階ででき上がるので、その時の母体の血糖値が大きく影響します。
赤ちゃんが大きく育ち始めてから発症する妊娠糖尿病の方と異なり、もともと糖尿病の方は、妊娠初期から赤ちゃんが高血糖にさらされるため、奇形のリスクが高まるのです。
血糖コントロールや計画出産の指導が不可欠とされる所以です。

ヘモグロミン

パルママさんの現状の血糖値については、どうご覧になりますか? 妊娠を目指す女性 が指標とするべき目安を教えてください。
石川先生 食前食後の血糖値が指標となることが多いですが、このほかによく使う指標として、ヘモグロビンA1cがあります。
血糖値はその時の血液中の血糖の状態を表 すだけですが、ヘモグロビンA1cは過去1~2カ月間ほどの血糖の平均値を反映したデータで、より正確に血糖の状態を教えてくれます。
できればこの値を正常値に、少なくとも上限の6%以下にしたうえで妊娠を目指しましょう。

体重管理の必要性

新生児への糖尿病の遺伝や、多嚢胞性卵巣症候群の影響についてはいかがですか?
石川先生 ほとんどの日本人は糖尿病の遺伝素因を持ち合わせているといわれます。
特にパルママさんのような2型糖尿病患者の方は、食生活や運動不足など生活習慣の要因が関係して起こる場合が多いのですが、糖尿病そのものが遺伝するわけではありません。
多嚢胞性卵巣症候群は、この2型糖尿病と まるで兄弟のような関係の病気です。
糖尿病を改善するためのメトホルミンという薬は、インスリンの過剰な分泌を抑えて排卵障害を改善する働きがあるとして、最近は多嚢胞性卵巣症候群の治療薬としてよく使用されています。
血糖のコントロールは卵巣の改善にも大きく関与しますので、やはり減量は不可欠です。
理想は3カ月くらいかけて体重を 60 ㎏台を目標に落とすこと。
医師の指導を受けてダイエットも効果が出始めているようですし、この調子でもう少し体重を減らす努力をされるといいと思います。
減量は簡単ではないかもしれませんが、妊娠は十分に可能だと思いますので応援しています。
※妊娠糖尿病:妊娠中に初めて見つかった、あるいは発症した糖尿病には至っていない糖代謝異常。妊娠時に診断された糖尿病は含まれません。
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