子宮腺筋症でも妊娠は可能?

子宮腺筋症の持病があり AMH 値も低めですが どうすれば妊娠できますか?

吉田 仁秋 先生 獨協医科大学卒業。東北大学医学部産婦人科学教室入局、不妊・体外 受精チーム研究室へ。米国マイアミ大学留学後、竹田総合病院産婦人科 部長、東北公済病院医長を経て、吉田レディースクリニック開設。サッカーな ら、ベガルタ仙台。野球は、東北楽天ゴールデンイーグルスのファンという、 地元仙台LOVEの吉田先生。年間シートをリザーブするものの、「忙しくて自 分は観戦には行かれず、人様に差し上げてばかり」とか。
たけももさん(35歳)からの相談 Q. 子宮腺筋症で8年前からリュープリン®を使って生理を止めていましたが、妊娠を望み、 排卵誘発剤を注射しながら体外受精を試みることにしました。「その前に、できるだけ子 宮を小さくできれば」と、今年2月まではゾラデックス®を注射しましたが、8㎝まで肥大 した子宮は戻らず、「子宮が邪魔をして卵巣がエコー上で確認できないため、採卵もで きない」とのこと。頸管粘液の状態からすると卵胞は育っているようですが、こちらも確 認できない状態です。主治医は「しばらくは様子をみて」とのことですが、AMHの値も 0.32と低く、卵巣年齢も高いようなので、今後どうしたらよいか不安を抱えています。

子宮腺筋症??

まず、子宮腺筋症とは?
吉田先生 子宮腺筋症は子宮内膜症の一種で、本来なら剥がれ落ちて経血となって外に出されるはずの子宮内膜が、何らかの原因で子宮の筋層に入り込んでしまうために、筋層が厚くなり、子宮が肥大化する病気です。
不妊の原因の3割は、子宮腺筋症を含む子宮内膜症であり、子宮内膜症患者の3割が不妊症であるといわれています。

子宮内膜症の治療法

たけももさんは、リュープリン ® 、今年に入ってからはゾラデックス ®などで治療されていました。
吉田先生 8年前当時の治療法としては妥当だったと思いますが、現在では治療の選択肢が増えています。
現在、子宮内膜症の治療には、まず低用量の黄体ホルモン、ルナベル ®やヤーズ ® といった比較的使いやすいピル製剤などが用いられています。
たけももさんの場合、リュープリン ® から、より強力なGnRHアゴニストであるゾラデックス ® に変更されたということは、症状がかなり強く出ていたのかもしれません。

子宮の大きさ

「子宮が8㎝以上」とのこと。
吉田先生 ご質問からははっきりしないのですが、もともと子宮は6〜7㎝ほどで、8㎝というのは特別大きいことはありません。
経腟超音波であれば見ることが十分可能な大きさです。
ただ、もしも「腺筋層の厚さが8㎝」というのであれば、通常は3〜4㎝ほどですから、異常なほど肥大化していることになります。

低AMHが示すこと

AMH値は0・ 32 ですが。
吉田先生 GnRHアゴニストを注射している間に調べたのか、ある程度回復してから調べたのかはわかりませんが、AMHの値が低すぎるのはとても気になります。
卵巣予備能を示すAMHの値が0・ 32 というのは、卵巣年齢が 46 歳以上ということになります。
簡単に言うと「卵子のストックがなくなってきている」ことが疑われます。
これだけ低下していると、卵巣の機能を復活させるのはかなり難しいです。
吉田先生なら、どのように治療されますか。
吉田先生 判断材料が乏しいので何とも言えないのですが、たけももさんは卵巣機能が落ちていて、反応が鈍いと考えられるので、スプレキュア ® などを使用しながらのウルトラロング法、または低刺激周期でマイルドに卵巣機能を復活させながら、クロミッド ® やフェマーラ ® などの排卵誘発剤を用いるなどして、なんとか2〜3個採卵できるようにしたいですね。
もしくは、ディナゲスト ® といった子宮内膜症の治療薬を2、3カ月投与してから、次の周期に採卵に挑むといった方法もありますので、諦めないでください。
ご自身でできることは、とにかく 健康的な生活を心掛けること。
運動やストレッチなどで血流をよくしたり、バランスのよい食事でしっかり栄養をとることは、体全体の回復力を高めますから。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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