泌尿器科での検査を検討。男性側の検査は何回?検査の正確性は?【医師監修】

男性の不妊症検査は、泌尿器科での検査など、 どんなことをするのでしょうか。またその正確性は? 厚仁病院の松山毅彦先生にお話を伺いました。

【医師監修】松山 毅彦 先生 東海大学医学部卒業。小田原市立病院産婦人科医長、 東海大学付属大磯病院産婦人科勤務、永遠幸レディー スクリニック副院長を経て、1996年厚仁病院産婦人 科を開設。日本生殖医学会生殖医療専門医。おひつ じ座のA型。同院では最新医療を積極的に取り入れる 一方、産科併設のメリットを生かし、より安心して出産 を迎えられるよう、不妊治療から出産、育児までをトー タルにサポートする。また、初めて受診される方のため のジネコ無料冊子を新発行。

ドクターアドバイス

◎ 不妊治療に詳しい泌尿器科を選んで
◎ 検査回数は検査結果と医師の判断次第
◎ 検査に抵抗があるならまずはヒューナーテストをしては
hana28さん(31歳) Q.今の病院では、卵がやや小さいけれど特に問題 ないと言われ、タイミング療法で4カ月が経過。 そこでは男性側の検査ができないので、泌尿器 科での検査をすすめられています。夫に検査を お願いしたいのですが、私が1カ月先に転院を考 えているため、夫は二度手間だと言います。男性 側の検査は何回ありますか? 泌尿器科で検査 をして、異常がない場合、転院先で検査をしな くても済みますか? また、どこの泌尿器科でも 検査結果に正確性はあるのでしょうか?

hana28さんの投稿に寄せられたコメント

たまお(主婦・45歳) :私が通っている不妊専門病院では精液検査だけ でした。自宅で採って持ち込んだので、主人は 病院へは行っていません。今は顕微授精をして いるので、毎月、精子の状態は調べられていて、 「ご主人のほうはいつもいい数値が出ているね」 と医師に言われます。
ここいち(主婦・35歳) :男性不妊がわかり不妊治療していましたが、ど この病院も男性は精液検査のみでしたよ。どの 病院も病院から容器をもらい、自宅で採取して 妻が持って行くという感じでした。夫は病院へ 行ったことはありませんでした。私も転院先で の検査でいいと思いますよ。精液検査の結果に より、タイミング療法を続けるか、人工授精な どに移行するか決まると思います。どちらにし ても来月以降になるかと思いますので……。今 回の結果が出たら、すぐに予約を入れたらどう でしょうか?

泌尿器科の現状

男性側の検査は泌尿器科で受けるものなのでしょうか?
松山先生 これには、むずかしい問題もあります。
婦人科の場合は、婦人科医の間でいろいろと連携が取りやすいのですが、泌尿器科は、まだ不妊治療に造詣の深い医師が少ないといった課題もあります。
婦人科も、かつては周産期と腫瘍治療が中心で、不妊治療はメジャーな分野ではありませんでした。
現在の泌尿器科は、当時の婦人科と同じ状況なのでしょうね。
ですから、もしも泌尿器科で検査を受けられるのであれば、まず不妊治療に詳しい先生を選ぶことをおすすめします。
これから泌尿器科における男性不妊分野もメジャーになってくるとは思います。

泌尿器科の役割

そもそも泌尿器科とは、どういった医療が中心なのでしょうか。
松山先生 泌尿器科医をしている友人によると、泌尿器の腫瘍治療が中心だそうです。
泌尿器科といっても対象は外性器だけではありません。
たいていの病院は腎臓・尿管・膀胱などを併せていることが多いですね。その他、STD性感染症の治療などを行っているそうです。
泌尿器科が生殖医療にかかわる内容としては、精液所見の把握とそのレベルをどうやって上げていくか。
さらにPESAやTESEなどの精子採取といった技術的なことのようです。
精巣細胞から精子を造成するまでには、 74 〜 75 日かかるといわれているので、その間の造成機能がもっと解明されてくるといいと思います。

精子の質を向上させる?

泌尿器科で精子のレベルを上げるということは可能なのですか?
松山先生 精子の状態によると思います。
卵巣が間脳・下垂体からのホルモンに影響されているように、精巣でも同じことがいえます。
ですから、男性のホルモン検査でも、ここを見分けます。
なかでも間脳・視床下部はストレスを受けやすいため、ストレスを受けると、女性の生理が止まってしまうのと同じようなメカニズムで、男性の精巣にも悪影響を及ぼすと考えられています。
ですから、当院では、間脳に支障がある男性にもクロミッ ドⓇを処方することがあります。
男性には生理という現象がないので、わかりにくいという点もあります。
たとえば、正常に勃起して精子も採れているのに、精液検査をすると結果にばらつきがある。
または、精液量が少なくても精子量は十分という場合もあります。
特に、何回か精液検査をすると、量は同じなのに、内容が大きく違うという人は多いですね。
先生の病院では、泌尿器科医と連携を取られているそうですね。
松山先生 泌尿器科医は常勤ではなく、月2回だけですので、ある程度は婦人科医がリードして進めていかなければなりません。
精液検査やホルモン検査の結果によっては、さすがに婦人科医は泌尿器診察ができませんから、そこはお任せするというスタンスで行っています。

男性不妊は、医師のよって方針が分かれる

男性側の検査は、何回行うのでしょうか?
松山先生 正常範囲の所見であれば、2回検査する必要性はないと思います。
1回目の検査結果をもらっておけば、転院先での参考になるかもしれません。
ただ、難しいのは、結果が思わしくなかった場合です。
この場合、転院先の医師の考え方やスタンスによって、判断は違ってくると思います。
同じ精液所見を見ても、再検査するのか、または人工授精や体外受精に進むのかは、医師によって判断がわかれるでしょう。
精液検査に関していえば、生殖医療を行っている婦人科でも、結果をもとに人工授精や体外受精など方向性を決めることはできます。
ただ結果によっては、泌尿器科の受診をすすめるのか、婦人科医でわかる範囲で薬を処方するのか。
ここでも、医師によって判断がわかれるのではないかと思います。
もしかすると、ご主人が泌尿器科の検査をすすめられているということは、精液検査だけでは対策不能なことがあるのかもしれません。
泌尿器科での検査をすすめられる場合、どんな理由が考えられますか?
松山先生 まず、精液所見に異常があるかもしれないということです。
精液所見が思わしくない理由として、泌尿器科的なアプローチで間脳・下垂体― 精巣系のホルモン系統について、何かわかるかもしれません。
さらに精巣を取り巻く環境(精巣上体炎、精索静脈瘤など)に異常がある場合です。
人によっては精巣の大きさを測ることもあります。
精巣が大きいと水腫が溜まっている可能性、小さいと萎縮している可能性があります。
特に後者の場合は、精巣機能が落ちていることが多いため、TESEでの精子採取が難しく、MD―TESEに進むこともあります。
それでも結果が出ない場合は、後期精子細胞やAID(非配偶者間人工授精)を行っている病院を紹介することもあります。

最初はヒューナーテストから

ご主人が検査に抵抗を感じているようにも見受けられますが……。
松山先生 最初は、抵抗されるお気持ちはよくわかります。
最初から精子検査をするつもりで来られる人もなかにはいますが、いきなり夫婦で来て、精液検査になると抵抗を感じる方は多いでしょうね。
ちなみに当院では、初診に近い状態で来られて、前情報もない場合、男性には、まずヒューナーテストを行っていただきます。
精子の存在が確認できれば、とりあえずクリア。
ここでヒューナーテストの所見が悪ければ、精液検査をお願いすることもあるという流れです。
実は、このステップが、男性の抵抗を和らげる突破口の1つになっているのではないかな、と思いますね。
※STD(性感染症):性交渉によって感染する病気で、性器クラミジア感染症、性器ヘルペス、淋菌感染症、尖圭コンジローマ、腟トリコモナス症、性器カンジダ症、梅毒、HIVなどがある。
※TESE(精巣 内精子採取術)、MD-TESE(顕微鏡下精巣内精子採取術):いずれも非閉塞性無精子症の場合に、精巣内から精子を採取する方法。いずれも麻酔をし、精巣を少し切開して採取する。MD-TESE は顕微鏡で精子がいそうな部位を探し採取する。適応が異なる。
※ヒューナーテスト:性交後、子宮頸管粘液を採取して、精子と頸管粘液の相性を調べる検査。採取した粘液中に運動精子数など、精子の状態を顕微鏡で調べる。
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