【Q&A】遺残卵胞とERA検査について~井上先生

ソフィアさん(34歳)

質問①
次の生理で自然周期での初めての凍結胚移植を予定しています。
家庭の都合で海外で体外受精を行なっており、1回目の採卵でPGT-A正常胚を6個凍結しています。
以前からプロラクチンの値が高く定期的に血液検査していますが、先日31ng/mLとなり、カバサールを処方されました。高プロラクチン血症排卵障害を引き起こす可能性があるとのことで、自然妊娠を望む場合の問題かとは思いますが、体外受精には何か影響があるのでしょうか?
個人的には排卵障害→遺残卵胞があったらどうしよう、渡航後に移植がキャンセルになってしまわないかが不安です。
排卵前のエコーでは卵胞も育っており、LHも出ていたとのこと。ノビオリも確認、排卵痛もありましたが家では排卵チェックでは一度も陽性にならずとにかく不安です。遺残卵胞の有無は、生理周期はいつ頃確認に行けば良いのでしょうか?
バセドウ病でプロパジールとチラージンを半年以上服用していますが、こちらの数値は基準値に収まって落ち着いています。
質問②
ERA検査について
ジネコのアーカイブをみていると、先生方によって、ERA検査の有効性に対する見解はまちまちであるとお見受けしました。
素人ながら調べた中で気になったことは下記です。
・内膜は毎月違うはずなのに、なぜERAの検査結果がある程度長期間有効なのでしょうか?
・着床の窓に、胚盤胞の成長スピードは関係ないのでしょうか? 例えば私は6ABの5日目胚盤胞は成長が早かったですが、4ABの胚盤胞は未熟卵を1日培養→成熟卵へ、受精→6日目でやっと胚盤胞になりました。
この2つは最低でも1日以上は成長スピードにズレがあると思います。
この2つの、同じ着床の窓に移植しても良いのでしょうか?
今回は自然周期での移植ということもありERAは受けませんでしたが、今後の検討のためにご見解をいただけると幸いです

井上先生に聞いてきました

井上 朋子先生  大阪大学医学部卒業。平成11年カリフォルニア大学サンフランシスコ校研究員勤務。IVFなんばクリニック勤務、副院長。平成26年 HORACグランフロント大阪クリニック勤務、副院長。医学生の頃、帝王切開術での出産シーンに感動し、産婦人科医になることを選択しました。命の誕生と家族の喜びに関わることのできるこの仕事が大好きです。分かりやすい説明と、温かい診療を心がけています。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

新鮮胚移植周期に着床に至らなかったのは残念でしたが、PGT-A正常胚を6個も確保できたのであれば、今後の治療に期待が持てそうですね。

PRL31ng/mlは正常上限くらいの値ですね。これくらいの値だと薬が効きすぎてPRLが低下しすぎることもあるので、定期的に検査を受けることをお勧めします。PRLは生理的変動も大きいので、この値で治療が必要なのかどうかの判断はなかなか難しいと思います。おそらく遺残卵胞との関連もないでしょう。遺残卵胞の有無は月経中にエコーで確認します。

海外の事情は、国によっても治療施設によっても違うので一概にコメントはできませんが、もし日本で準備をしてから渡航し凍結胚移植をするのであれば、自然排卵に合わせて胚移植をするよりは、卵胞発育を抑制しながらホルモン補充周期で胚移植をする場合が多いのではないかと思います。そのほうが移植日の調節がしやすいので。

ERAは再現性があることを前提で検査しますので、基本的には移植周期と同じ処方内容のホルモン補充周期で内膜生検をします。自然周期では、ご指摘の通り、卵胞発育に差がでてくるので、排卵の時期を正確に見極めて生検日を設定するのが比較的困難だからです。もしPGT-A正常胚盤胞を一般的な移植日に移植して着床しないことが続けば、ERAを考えても良いかもしれませんね。また、胚盤胞は移植可能な段階まで培養して凍結しますので、日齢が違う凍結胚盤胞を同じ日に移植しても問題ありません。

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