超音波で診断されたのに 排卵自体がないってあり得る?

生田 克夫 先生 名古屋市立大学医学部卒業。名古屋市立大学産科婦人科学教室助 教授、名古屋市立大学看護学部教授などの経歴を重ねたが、不妊に悩 む名古屋の方たちの役に立ちたいという思いで、教育者の立場を辞して 独立。地元・名古屋の中心部、栄に開院し、1986年から体外受精の 現場を歩いてきた経験と穏やかな人柄で、数多くの患者さんを妊娠に導く。 取材時の冬にはアレルギー性鼻炎に悩まされ、漢方や抗ヒスタミン剤で抑 えているとおっしゃっていた先生。「毎年寒い時期は治まるのですが、今 年は特別。大気汚染もあるのかも…。皆さんもお気をつけください!」

ドクターアドバイス

●排卵予測がずれることはあるが、3カ月排卵しないはあり得ない
●クロミッド Ⓡ以外にも排卵誘発の方法はある。ストレス緩和も大切
ホーリーさん(34歳)からの相談 Q.もともと無排卵で、排卵誘発剤での第1子妊娠後、プラノバー ルⓇ使用で、約45日ベースで3回くらい自発的な生理がき ました。現在2人目妊娠を望み、タイミング療法を行ってい ますが、クロミッド Ⓡ服用後の超音波診断で2~3日後に排 卵の可能性が高いといわれたものの1週間たっても排卵せ ず、再度受診すると排卵するまで育つ卵子がないため、3カ 月ほど排卵しないかもといわれました。その後、生理5日 目から再びクロミッド Ⓡを飲み終わった後の超音波検査では、 排卵直後、またはあと2~3日で排卵するかもといわれま したが、4日目の今も高温期に移行しません。超音波で排 卵しそうだと診断されたにもかかわらず、タイミングが合う 以前に排卵自体がないということはあり得るのでしょうか?

まずは超音波診断について教えてくだ さい。

生田先生 超音波での排卵予測というのは、 卵胞の大きさを見て、黄体化ホルモン(排 卵を促すホルモン)がいつ頃出そうかを予 測するものです。
自然周期であれば、卵胞 が 20 ㎜近辺で排卵の刺激が出ますし、クロ ミッドⓇを服用していれば 24 ~ 25 ㎜くらいま で出ないだろうと考えられます。
卵胞とい うのは、順調にいけば 1 日 1.5 ㎜くらいずつ 大きくなっていきますから、自然周期の 15 ㎜であれば、あと3~4日で性腺刺激ホル モンが出るかなと予想できるわけです。
クロミッドⓇの場合は、そこの誤差が大き いのですが、平均的に、飲み始めてから8 日目から 14 ~ 15 日くらいまでで排卵する確 率が非常に高いので、そのあたりを目安に してみていきます。
ちょうどいい時に排卵 しなければ、注射で排卵を起こすのが一般 的です。
ただ、数日後に排卵の可能性が高いとい われたとしても、ご自分の脳から性腺刺激 ホルモンが出なければ、排卵しないまま卵 胞がどんどん大きくなってしまうことも あり得ます。
卵胞は卵胞刺激ホルモンと黄体化ホルモンの2つによって、成長し、排 卵するわけですが、卵胞が大きくなっても 実際に排卵するかどうかは、排卵を指示す る黄体化ホルモンにかかっているので、そ れを分泌させる中枢が思うように働かなけ れば、いつまでたっても排卵せずに卵胞が30 ㎜を超してしまうということも起き得ま す。
そうなりそうな場合は、注射で排卵を 起こすことになります。

排卵するまで育つ卵子がなくて、3カ月ほ ど排卵はないということはあり得ますか?

生田先生 そんなことはあり得ないと思い ます。
確かに、ひとつの卵胞が成長して排卵 に至るまでには120~150日かかるとい われていますが、発育しつつある卵胞は超音波でみてわかるはずです。
その時たまたま卵 胞がほとんど見えないとしても、3カ月排卵 がないということはなく、いつ卵胞発育が始 まるかわからないだけです。

ホーリーさんのような場合、クロミッドⓇ 以外にどんな排卵誘発法がありますか?

生田先生  もう少し軽めのセキソビットⓇと いう薬もあります。
この薬には、クロミッ ドⓇにあるような頸管粘液が減ってしまうと か子宮内膜が薄くなるという副作用があり ません。
だたし、排卵を起こす力が弱いので、 無排卵周期のように生理はあるけれど排卵 はないというくらいの人に適応です。
なかにはどう転んでも排卵しない場合も ありますが、その時はHMGの注射やゴナー ルエフⓇの自己注射を使います。
これで卵胞 が大きくならないということは卵巣に卵子 がある程度存在すればめったにありません。
要は、今までクロミッドⓇしか使っていない のならまだ方法はあるということです。
また、もともと生理を司る中枢というの は、精神的・身体的なストレスでもうまく 働かなくなってしまうものです。
今までの 通院でストレスが溜まり、余計に排卵がう まく起こらなくなってしまっているなら、 気分を変える意味でセカンドオピニオンを 行うのもおすすめです。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

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