たぬきさん(31歳)
31歳で2回採卵で移植までいかなかったことから、夫と話し合い精索静脈瘤の手術もすることを検討中。
婦人科の先生のコメントでは「精索静脈瘤の手術で効果は薄く、効果があったとしても6か月後」。
泌尿器科の先生のコメントは「7割良くなり、手術後3か月頃から不妊治療再開できる」でした。
精索静脈瘤の手術で効果が出るのでしょうか?
他にできる治療はありますか?
ハシイ産婦人科の佐藤幸保先生に伺いました。
京都大学医学部附属病院および高松赤十字病院で体外受精など生殖
■検査治療歴を見てどのような印象をもたれましたか?
AMHが1.24と低いのにもかかわらず、体外受精2回とも10個以上の卵子が採取できているのは素晴らしいと思います。ただ、未熟卵が多いのが問題です。
精液量2.4ml(正常値1.4ml以上)、濃度22×10^6/ml(正常値16×10^6/ml以上)、運動率28%(正常値42%以上)と運動率はやや低いですが、計算上の運動精子数は1478万もあり、通常体外受精(ふりかけ)でも受精可能な数字だと感じます。
■乳腺症とブドウ糖境界型(に近い状態)が不妊原因になっていると考えられますか?
乳腺症は不妊とは関係ないと思います。ブドウ糖負荷試験の境界型は、排卵障害の原因となる可能性がありますが、体外受精の不成功とは関係ないと思います。
■精索静脈瘤の手術後、妊娠率は手術前よりも上がりますか?
本症例では、2回目の顕微授精で成熟卵4個中4個すべてが受精していますので、精子の受精能に問題はないのでしょう。ですので、精索静脈瘤手術をしても、妊娠率が上がることはあまり期待できないかもしれません。
■精索静脈瘤の手術後、どのくらい経ってから不妊治療を再開できますか?
精液所見の改善には術後3〜6ヶ月かかるとされているので、少なくとも3ヶ月は待ってから再開するのがいいでしょう。
■先生ならどのような検査や治療を提案されますか?
採卵で成熟卵が多くとれるよう卵巣刺激法を工夫するのがよいでしょう。例えば、トリガーになるHCG投与量を増やす、HCG投与から採卵までの時間をより長くする、アンタゴニスト法に変更しGnRHアゴニストとhCGのダブルトリガーを用いる、卵胞発育にLH含有量の多いHMG製剤を用いる、などです。受精卵が多く得られても胚盤胞まで到達しない場合は、精子の質の低下が一因となっているかもしれません、その場合は、夫の精索静脈瘤の手術を考慮してもよいでしょう。