【Q＆A】高齢出産のリスク～柏崎先生【医師監修】│【医師監修】ジネコ不妊治療情報

すぬーぴーさん　（３７歳）
妻(私)38歳、主人45歳。高齢出産のリスクが怖く妊娠に消極的でしたが、色々あって妊娠に前向きに考えはじめたところです。知識がないので、いろいろと教えてほしいのですが…。1）高齢出産にはどんなリスクがありますか?
2）主人の年齢(45歳)では、精子側にも遺伝子的な欠陥がありますか?
3）医学的に例え1%でもリスクが下がる方法は何かありますか?
4）体外受精なら卵子や精子を人の手で選別してる分、遺伝子的疾患のリスクを減らせますか?
5）今年38歳の年齢なので、タイミング法、人工授精をとばして体外受精にすぐ移行したほうがいいですか?
6）身体の負担的に、体外受精と人工授精で高齢出産のリスク回避率が変わらないなら人工授精からしたいのですが、やっぱり体外受精が一番リスクを回避できますか?

かしわざき産婦人科の柏崎先生に聞いてきました。

【医師監修】かしわざき産婦人科　柏崎祐士　先生
京都府立医科大学医学部卒業。2000 年まで日本大学板橋病院で主に不妊治療に従事し、その間、米国エール大学医学部産婦人科で研修。その後、「かしわざき産婦人科」院長に。日本生殖医学会生殖医療専門医、日本産科婦人科内視鏡学会認定医。

※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

●高齢出産にはどんなリスクがありますか？

元来、高齢出産は20年から30年前までは35歳ことが言われてましたけども、今もう高齢化してますので、35歳を過ぎるともう高齢出産とかはなく、何歳以上が高齢出産という明確なそういう基準はもう設けておりません。妊娠した後の高齢出産のリスクはいろいろあります。
まず一つが産道が硬くなりますので、赤ちゃんがなかなか降りてきにくいで、膣が切れやすく出血しやすくなるということで帝王切開になってしまうことの確率がかなり高いです。
あともう一つですね、妊娠高血圧症とかになりやすくなりますで、腎機能低下新機能低下というリスクもあります。

●主人の年齢（45歳）では精子側にも遺伝的な欠陥がありますか？

卵子の年齢と妊娠率はよく相関します。卵子は年齢とともに妊娠率は低下してきますし、数もどんどん減ってきます。それと比較して精子は、ほとんどそういう年齢の影響を受けてこないと言われてます。というのは精子は割と数が多く、毎日作られますので、いわゆるそのターンオーバーが短く、それそのものが年齢に関して遺伝子異常が出ているというエビデンスがありません。
男性の場合は高齢で妊娠した方はかなりいらっしゃいます。そして、生まれてきたお子さんの方に遺伝性疾患の異常があるという報告もありません。ただし最近は男性の年齢と妊娠率を研究が進んでまして、ある研究では年齢とその妊娠率の相関は出てきているという報告もあります。

●医学的に1%でもリスクが下がる方法はありますか？

遺伝的な異常のリスクという点でお答えしますと、染色体異常を調べる着床前診断PGT-Aという検査があります。この検査では、移植前の胚盤胞の染色体異常を調べることで流産の可能性を下げることができますが、生まれてくる赤ちゃんが完全に遺伝性疾患がないかというと完全にそうではありません。
妊娠後にできることとしては出生前検査NIPTがあります。妊娠初期の血液検査で、お腹の中の胎児に遺伝性疾患があるかないかを調べることが出来ます。
最後に、年齢と関係なく染色体異常の卵子や精子ができやすいかどうかを調べる染色体検査があります。どうしても気になるようでしたら、お二人の染色体を調べてみるというのも手かと思います。

●体外受精なら卵子や精子を人の手で選別しているので、遺伝子的疾患のリスクを減らせますか？

残念ながら、減らせません。通常、体外受精で見分ける方法はありません。ただし、着床前診断PGT-Aの検査をすれば、受精した卵の染色体異常を調べることができます。ですが、この検査は保険適用では認められていないので、PGT-A検査を実施する場合は、費用が完全自費診療になりますので経済的な負担が大変高くなります。

●今年38歳の年齢なので、タイミング法、人工授精を飛ばして体外受精にすぐに移行した方がいいですか？

私の場合、各方法での妊娠率のデータをお示しして、ご夫婦二人の意志を尊重します。お二人の希望がステップ踏みながら妊娠を目指したいということでしたら、タイミング法から始めていきます。
また、お二人が1日でも早く妊娠したいというご希望でしたら、体外受精から始めていきます。ですので、ご夫婦で挙児の希望度合いや妊娠する過程を一つ一つ大事にしたいのかなどよく話し合ってみてもらいたいと思います。ただし、医学的なデータから年齢が高くなればなるほど妊娠は難しくなってきますので、その点も考慮に入れて話し合うのがいいかと思います。

●身体の負担的に体外受精と人工授精で高齢出産のリスクが変わらないのなら人工授精からしたいので、やっぱり体外受精が一番リスクを回避できますか？

この２つの受精のやり方の違いで、高齢出産のリスクは残念ながら変わりません。ただし、受精のやり方による身体的な負担という意味では、体外受精より人工授精の方が妊娠の過程での身体的な負担は低いです。先ほどお答えしたように、どの受精方法を選ぶかはご夫婦で話し合って決めてもらうことが一番後悔がない選択だと思っております。また、人工授精と体外受精のどちらを選択しても生まれてくる赤ちゃんの遺伝性疾患のリスクは同じです。38歳という年齢ですが、当クリニックに来られる一番多い年齢です。多くの方が不妊治療で妊娠し、出産されてますので、怖がることなく、まずは医療機関に相談に行かれるのがいいと思います。