Q 多囊胞性卵巣ぎみです。 適した刺激法、戻し方は?

永井 泰 先生 東京医科大学医学部卒業。産婦人科・麻酔科認定医。1989年、 埼玉県三郷市に開院。さらに環境を整え、よりよい医療を提供するた めに、2015年に診療所から病院へ改組。産科、婦人科をはじめ、 不妊治療、形成・美容外科、小児科と、女性が生涯かかわる総合 的な医療を、温かく、優しい環境の中で提供。

ドクターアドバイス

●クロミフェン+HMGで少数精鋭、卵子を確実に育てていく方法を。
●排卵時期が予測しにくいPCOの人はホルモン補充周期がおすすめです。
チワワさん(35歳)からの相談 Q.2人目不妊治療中。先日、初めての採卵をしました。生理 不順はありませんが、PCOぎみで33歳時のAMH値は7 ng/mlです。ロング法で採卵し、振りかけで22個採卵 中、10個正常受精、3個異常受精、7個は未受精、2個 は未成熟卵でした。7個も未受精というのは多い? 未成 熟なのは卵子の問題ですか? 凍結は8細胞期を3つ、5 日目で胚盤胞までいったのは1つのみ。明日が6日目なの で、あといくつが胚盤胞になるか。最高でもあと2個とい われています。この成績は平均以下ですか? 移植は自然 周期とホルモン周期、どちらのほうがいいでしょうか。

初回の体外受精はロング法で採卵したそ うですが、その結果についてどう思いま すか。

永井先生 AMH値が7ng/ ml ということ ですね。同年齢の平均値と比べたら少し高めなので、やはりPCO(多囊胞性卵巣)ぎみなのだと思います。

PCOぎみの人の場合、卵子はたくさん採れても、一つひとつがしっかり成熟していない場合が多いようです。チワワ さんも正常受精が採卵数の半数以下でやや確率が低いように感じますが、受精卵を3つ凍結できて、胚盤胞までいったものもあるということですから、それほど悪い結果ではないと思いますね。

こちらのクリニックでもロング法を最初 に選択されますか。

永井先生 ロング法だと卵胞がたくさんできすぎてOHSS(卵巣過剰刺激症候群)になるリスクが高まるので、最初に選択することはないと思います。

また、これまでの私の経験だと、PCOの方は強い刺激を続けていると、その刺激に対してだんだん反応が悪くなってくることが多いようです。ですから、漫然とロング法を続けていくのはおすすめ できませんね。

卵子の数をたくさん採ることだけが体外受精の目的ではありません。1個でもいいから質のよい卵子が採れれば、それが妊娠へとつながります。

当院だったら、次は卵巣刺激法を変えると思いますね。それほど重症なPCOでなければ、クロミフェン+HMGの方法をご提案します。卵胞が 14 mmとか 15 mm の大きさになった時に注射で少しずつ刺激を加えていきます。数は3、4個を目指 し、少ないけれど確実に育てることを狙っていきます。年齢がまだ 30 代なので、よ いものが採れる可能性は十分あるのでは ないでしょうか。

移植についてですが、チワワさんのよう な方の場合、

自然周期とホルモン補充周期、どちらで戻したほうがいいのでしょうか。

永井先生 PCOSやPCOぎみの方だと排卵時期が予測できなかったり、排卵が起きていないことがありますから、自 然経過をみながら移植時期を決めるというのは非常に難しい。ホルモン補充をしてホルモンの状態を安定させてから戻したほうが確実なのでは。移植のスケジュールも立てやすいと思います。

当院ではほとんどの方はホルモン補充周期で胚を戻しています。ただ、絶対というわけではなく、なかにはその方法が合わない方もいますから、うまくいかない時は自然周期で戻すなど、患者さんの状況を見ながら対応しています。

両者の妊娠率は、これまでの印象ではそれほど成績に差があるように感じません。患者さんがやりやすく、その時のベストな方法で戻せたらいいですね。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

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