人工授精後の生理と漢方の副作用について

人工授精後の経血減少、精子量・運動率低下は服薬による副作用?

nocchiさん(35歳)約1 年前から本格的に人工授精に挑戦しています。フェマーラ®、レトロゾール、クロミッド®と3 回行いましたが妊娠しませんでした。クロミッド®後、経血の量が極端に少なくなり、膜のようなものが出てきたのはホルモン剤の影響か不安です。夫は精子無力症と診断され、精索静脈瘤の疑いもあり3 カ月間漢方(補中益気湯)を服用したものの、精子量や運動率が半分の数値になりました。副作用の説明がないまま体外受精をすすめられ、転院も検討しています。
いくたウィメンズクリニック 生田 克夫 先生 名古屋市立大学医学部卒業。名古屋市立大学産科婦人科学教室助教授、名古屋市立大学看護学部教授などの経歴を重ねたが、不妊に悩む名古屋の方たちの役に立ちたいという思いで、教育者の立場を辞して独立。地元・名古屋の中心部、栄に開院し、1986 年から体外受精の現場を歩いてきた経験と穏やかな人柄で、数多くの患者さんを妊娠に導く。
経血の量が極端に少なくなったのは、ホルモン剤の影響でしょうか?
生田先生● 生理の血液は子宮内膜がはがれ落ちる際の内膜内の血液に加え、子宮筋層内の血管が切れて出血するというメカニズムです。本来はそれほど多いものではありません。年齢とともに減ることが多いので、今回のケースもホルモン剤の影響とは考えにくいですね。
 ご心配なさっている膜のようなものは、はがれ落ちた子宮内膜でしょうから脱落膜化変性と考えられます。つまり最終的に妊娠した場合に赤ちゃんの膜の一部分になるところです。そういう膜が出た時は出血も少ないですね。特別な処置も必要ないでしょう。
漢方薬服用後、精子の状態が悪くなったのは薬の副作用でしょうか?
生田先生●薬の副作用より、検査回数が気になります。精液検査は体調やストレスなどさまざまな要因で変化します。今回は2回の数値を比較して悪くなったと判断されたようですが、実際は4~5回の平均的な結果を比べないとわかりません。前回と今回で一けた違うことも珍しくありませんし、逆に薬を服用して劇的に数値がよくなるというものでもないんです。精子濃度5・34、精子運動率28・13は確かにあまりいいとは言えない数値ですが、これだけで無理とは言い切れないでしょう。
転院も視野に入れた場合、今後の治療について気をつけることはありますか?
生田先生●当院では過排卵刺激を併用して人工授精4回目ぐらいから体外受精に切り替える提案をします。一般不妊治療では卵子と精子が出会って受精しているかどうかが確認できないのですが、体外受精はもう少し詳しくどこに問題があるのかを把握し、突き止めていけるメリットがあります。体外受精に進む場合は治療の段階を説明し、資料も示さなければならないと学会で決まっています。医師が一方的に決めることではないので、きちんと説明してくれる病院を選んだほうがいいですね。
 女性は38~40歳ぐらいにさしかかると妊娠する確率がぐっと下がります。35歳だと今から体外受精に臨んで実際に妊娠・出産に至るのは37歳ぐらいになるでしょう。「2人目も欲しい」という場合は早い段階で体外受精に切り替えたほうがいいかもしれません。そして、赤ちゃんが20歳になる頃には還暦間近。大学生でお金がかかる時期にまだ働けるか、人生をどう設計していくか、お二人で話し合ったうえで治療方法を考えてください。
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全記事、不妊治療専門医による医師監修

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