採卵しても変性卵ばかりで採卵周期に入れません。

40歳以上の高年齢、低AMHのせいか、なかなか良い受精卵ができず、移植しても着床しない――。もう治療を続けるのは難しい? 継続を望む場合はどのような治療方針を立てていったらいいのでしょうか。さくら・はるねクリニック銀座の大村伸一郎先生と宮本敏伸先生にアドバイスしていただきました。

 

さくら・はるねクリニック銀座 理事長 大村伸一郎 先生
慶應義塾大学医学部卒業。東京衛生病院産婦人科部長などを経て、さくら・はるねクリニック銀座 理事長に就任。働きながらでも安心して不妊治療に取り組めるよう、朝7時から採血や診察を行い、夜は22時まで診察できる体制に。わかりやすい説明も患者さんから好評。日本産科婦人科学会 指導医・専門医、日本専門医機構産婦人科専門医、日本東洋医学会専門医、日本生殖医学会、アメリカ生殖医学会(ASRM)、ヨーロッパ生殖医学会(ESHRE)。
さくら・はるねクリニック銀座 院長 宮本敏伸 先生
旭川医科大学医学部卒業。同大学大学院医学研究科卒業。医学博士、米国NIHで4年間研究に従事した後、旭川医科大学病院産婦人科助教、講師、北海道大学大学院医学研究科准教授、獨協医科大学医学部産婦人科准教授を経て2022年5月にさくら・はるねクリニック銀座の院長に就任。妊娠させることだけでなく、患者さんの立場にたってその先の出産、産後のことも考え、親身になってアドバイスをしてくれる。
相談者:よりさん(42歳)
42歳、顕微授精を行っています。AMH値が0.3ng/mlと低いため、強い注射刺激をしても反応が悪く、今はフェマーラを飲んで採卵しています。採卵しても1、2個しか採卵できません。一度凍結した胚盤胞を移植しましたが着床せず。グレードも2CCと悪かったです。その後、続けて採卵していますが、変性してしまうと凍結できずにいます。今は2回続けて生理2日目の採血の結果が悪く、採卵周期に入れないでいます。1回目はE2値が高く、プレマリン錠とプラノバール配合薬を処方されて服用し、今回E2は下がったのですが、FSH値が40mlU/mlだったためプレマリン錠とプラノバール配合薬が再び処方されました。いよいよ不妊治療をするのも難しくなってきたのかと悩んでいるところです。

フェマーラ服用に加え、FSH注射の連日投与を

42歳というと「高齢でもう不妊治療は難しい」と考える方もいるかもしれませんが、最新のデータ(2021年)によると体外受精を受ける人で一番多い年齢は39歳、その次は40歳、3番目は41歳となっています。42歳までは保険診療で不妊治療ができますから、この方も決してあきらめることはないと思いますね。AMH(抗ミュラー管ホルモン)の値は年齢が上がるとともに低下していくのは当然なので、低値をそれほど気にする必要はないでしょう。

まず、この方は採れる卵子の数が少ないということ。現在、排卵誘発のためにフェマーラを服用されているようですね。保険適用前までこのような方のケースでは1日3錠内服していただくことが多かったのですが、保険診療内の治療では1日2錠しか処方することができません。3錠にすれば採れる卵子の数はもう少し増えると思うのですが。

保険診療で臨むということであれば、当院ならフェマーラ1日2錠×5日間服用のあとにレコベル(リコンビナントFSH製剤)の注射12mgを連日打つことをご提案します。これは自己注射できるので、通院回数も減らせるかと思います。この方法であれば採卵数3~5個くらいまで期待できるのではないでしょうか。

先進医療も利用して万全な状態で顕微授精に臨む

次に卵の質を上げるという観点から考えてみましょう。1つ目の方法として、採れる卵子の数は1個になってしまいますが、薬を一切使わず、自然な形で採っていくという形があります。

2つ目の提案として、採れる卵に対して質を上げるとすれば、デュアルトリガーという方法があります。おそらく今はHCGの注射をトリガーとして使っていると思うのですが、これにスプレキュアなど点鼻薬もプラスして2つのトリガーを引くようにする。そうすると卵の質は良くなると思います。

卵子が採れたらこれまで通り顕微授精で受精させたほうがいいと思いますが、顕微授精の前にカルシウムイオノフォアを実施して卵子を活性化させてあげる。この治療は保険適用で行うことができます。

精子に関しては先進医療としてIMSI(強拡大顕微鏡を用いた形態学的精子選択術)やPICSI(ヒアルロン酸を用いた生理学的精子選択術)を受けることができるので、保険診療でもこれらの治療を駆使して万全な状態で受精に臨めば、より良い受精卵ができる確率が上がるのではないでしょうか。

先進医療は厚生労働省から認可を受けた施設でしか受けることができませんが、東京都の場合は治療費の7割カバーなど、自治体によっては助成金が出るので経済的な負担もそれほど大きくありません。

また、治療にプラスするとすればメラトニンのサプリメントがおすすめです。個人によって効果は異なりますが、受精率が上がったという方もいらっしゃいます。ぜひ試してみてはいかがでしょうか。

PGT-Aを受けて正常胚を戻した場合、妊娠率は約7割

このようにできる方法はすべてトライして、保険が適用される年齢までは保険診療で頑張っていただきたいですね。当院も「患者さんに無駄にお金を使わせないで安価に妊娠を叶えてあげたい」というのが方針。できるだけ保険適用内で行いますが、治療がレベルダウンしないように先進医療もすべて受けられるようにしています。

もし保険が適用される年齢までに妊娠が叶わなかったとしても望みは捨てないでいただきたいですね。自費での診療も考えたいということであれば、一度でいいのでフェマーラを1日3錠服用する排卵誘発を試していただきたいと思います。おそらく採れる卵子の数は増えるのではないでしょうか。

そしてPGT-Aも。これは体外受精によって得られた胚盤胞の染色体数を調べる検査です。当院の場合、異常がないとわかった胚盤胞を移植すれば妊娠率は約7割。43歳の人でも25歳の人と同じ条件になるので、63%以上の方が赤ちゃんを抱けるということになります。この方は簡単な症例ではないと思いますが、まだまだ治療の余地はあるので先生と相談しながら前向きに続けていただきたいですね。

 

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全記事、不妊治療専門医による医師監修

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