保険診療が適用されたことで、身近になった不妊治療。妊娠への不安要素を抱えている人は不妊治療について情報収集しておきましょう。そこで、不妊治療の流れなど佐久平エンゼルクリニックの政井先生にお聞きしました。
妊娠率を上げるためにクリニックを味方につけよう
これまでは一部を除き保険適用外の自由診療だった不妊治療が、今春より保険適用になりました。今後は人工授精や体外受精などが保険の適用対象となります。これにより、不妊治療を希望するカップルが以前にも増して、当院にも多く来院されています。
妊娠を望みながら妊娠できるか不安があったり、「赤ちゃんが欲しいのにできない」と思ったらクリニックを受診しましょう。特に35歳以上の方はできるだけ早めの受診をおすすめします。不妊の原因があるかどうか、問診や診察のほか、血液検査や子宮造影検査など基礎検査を行い、原因が特定できなければタイミング法、次に人工授精、結果が出なければ体外受精や顕微授精といった高度不妊治療とよばれる方法へステップアップします。
赤ちゃんを授かりにくいという不妊の原因はさまざまです。それを知ることは妊活を進めるうえでとても大切です。若い人であっても、生理不順や重い生理痛など放置すればするほど重症化し、改善が困難になることもあります。また、妊娠しにくい原因の約50%は男性にあると言われていますので、初診からカップルでの受診をおすすめしています。不妊治療は、妊娠をしない原因を早期に見極め、妊娠に足りない部分を医療でサポートする治療です。そのため検査は重要で、女性だけでなく、男性も精液などの検査は必須です。
不妊治療を始めるカップルに最後にお伝えしたいのは、不妊治療のゴールは妊娠ではないということです。これから受ける治療に後悔がないように、明確なビジョン、意思をもつことが重要ではないかと思います。
最初に受ける基本検査
初診
まずは予約をして来院しましょう。希望に沿った治療を行えるよう、事前にWEB等で提供されている問診票に記入しておくといいでしょう。
基本検査
検査は初診の患者さま(女性)に採血などを行います。男女ともに妊活を進めるうえで、原因を知り、適切な対策をするために必要かつ十分な検査をします。
治療
検査結果などをふまえ、保険診療はもちろん、多くの選択肢の中から患者さまに合った治療法を一緒に考え、提案します。
最初に受ける基本検査
血液・ホルモン検査
排卵誘発剤の投与量や採卵日決定の目的などのため、FSH(卵胞刺激ホルモン)やLH(黄体化ホルモン)などの血液中のホルモン値を測定します。
子宮卵管造影検査
卵管閉塞や卵管狭窄の有無を確認するため、月経終了から排卵前までの間に行う検査。治療を要する場合もあるため早めの検査をおすすめします。
超音波検査
腟内にプローブを入れ、子宮や卵巣を観察します。子宮筋腫の有無や大きさ、子宮内膜症の有無などさまざまなことがわかる大切な検査で痛みもあまりありません。
AMH(抗ミューラー管ホルモン)
卵巣にどのくらいの卵子が残っているか(卵巣予備能)など卵巣の状態を把握するために必要な検査です。採血で測定します。※自費になります。
フーナーテスト
腟内に射精された精子の活動状態を調べる検査です。前日または当日に性交渉をもち、頸管粘液を採取して顕微鏡で観察し、判定します。
精液検査
精子の数や運動率を調べることで男性側の不妊原因の有無を確認する検査です。精液容器を持ち帰り、自宅で採取後に持参しても構いません。
子宮頸管粘液検査
頸管粘液が少なかったり、粘性が高いと子宮腔内へ精子が入っていけません。排卵時期に頸管粘液を採取し、量や性状などを調べます。
一般的な治療の流れ
タイミング法
排卵日の2日前から排卵日までに性交のタイミングを合わせます。自己流と異なり、超音波検査やホルモン検査などでより正確に排卵時期を推測します。
ステップアップのタイミング:6回(半年くらい)で妊娠しなければ
人工授精
採取した精液中から動きの良い精子を取り出して濃縮し、妊娠しやすいタイミングで子宮内に直接注入する方法。子宮頸管粘液の異常などがみられる場合。
ステップアップのタイミング:3~5回が目安。卵管機能や精液所見に問題あり。
体外受精
卵巣から卵子を採り出し(採卵)、卵子と精子を同じ培養液の中で培養して受精させ、得られた受精卵を子宮に戻す(胚移植)方法。
ステップアップのタイミング:高度な乏精子症や受精障害がある場合
顕微授精
動きが良く形の正常な1個の精子を卵子の中に細い針で注入する方法。細い管で確実に精子を卵子に注入するので、少ない精子でも受精が可能。
先生からのアドバイス
検査は万能ではなく、妊娠しない原因のすべてを見つけられるものではありません。しかし、体に何かしらの異常が起こっていた場合に、発見し治療につなげることができます。早めに、検査だけでもきちんと受けましょう。原因に応じた早めの治療は確実に妊娠率を高めます。