不妊治療 はじめて講座②俵史子先生【医師監修】

はじめての不妊治療は わからないことがいっぱい。 今回は「不妊症の初診や検査」について 俵先生がわかりやすく レクチャーしてくれます!

【医師監修】俵 史子 先生 浜松医科大学医学部卒業。総合病院勤務医時 代より不妊治療に携わり、2004 年愛知県の 竹内病院トヨタ不妊センター所長に就任。 2007年、 出身地の静岡に俵史子 IVFクリニッ クを開業。 今年 9月で開院 4 年目を迎えた同 クリニック。今後はさらに幅を広げて、さまざま な治療法を患者さんに提案できるよう、ただい まスタッフ全員で猛勉強中だとか。

内診が苦手です…… どんなことを するんですか?

りえぽんさん(主婦・26 歳) Q.先月、子宮卵管造影検査をしました。 今月から排卵のタイミングをみましょうと いわれましたが、何をするんですか? 基礎体温表を見て、それで判断するんですか? それとも内診ですか? 内診はどうも苦手で……。 妊娠するためならとは思いますが、 何をするのかな? と思ってお聞きしました。

初診では問診票や基礎体温表の 情報をもとに診察していきます

「不妊治療専門クリニックを訪れるのは初めて」という方は、初診で何をするのか不安だと思います。
少しでもその不安が解消できるように、今回は初診の流れをご説明していきましょう。
当院の場合は、来院されたら問診票をお渡しして、記入をしていただきます。
量は4ページほどで、既往症や妊娠歴、ご主人についての質問などがあります。
そして、当日診察でつく看護師が個室にご案内し、問診票に書かれたことについて、もう少し詳しくお話を聞かせ
ていただきます。
その後、診察に入りますが、医師はまず、問診票とお持ちいただいた基礎体温表を見て、そこから推測できることをお話しします。
そして、簡単な診察に入ります。
ここでは、内診といって、子宮、卵巣の大きさや動き、痛みの有無などを膣からとお腹の上から押さえて診断をしたり、超音波を使って子宮や卵巣などに大きな異常がないかを調べます。
腟から超音波の機器を挿入しますが、その機器はかなり細いものなので、痛みはほとんど感じません。
時間も数分で終了します。
その後、もう一度診察室に戻てきていただいて、今日の診察でわかった体の状態をお伝えします。
そして、妊娠の仕組みをお話しし、どのような不妊原因が考えられるのか、その原因を調べるためにこれからどのような検査が必要なのかをご説明していきます。
基本的な検査については後述しますが、当日できる検査があれば初診の日にも行います。
たとえば、前日に性交渉をもたれているようなら、ヒューナーテストをしたり、血液検査を行ったりします。
それと、初診の際はご主人も来ていただいたほうが望ましいですね。
検査や治療の内容など、奥さまと一緒にご理解していただけますから。
精液検査はその日でなく、ご自宅で採って、後日お持ちいただく形でも構いません。
当院での初診はだいたいこのような流れになります。

当院の基本的な検査は4つ。 月経周期に合わせて行います

当院での基本的な検査は以下の4項目です。
女性の月経周期は「低温期」「排卵期」「高温期」があり、それぞれの時期にできる検査が決まっています(左の
表参照)。

❶ホルモン検査

 採血により、血中のホルモンの濃度を測定します。
月経中は基準となるホルモン値(FSHLH・ E2)を、排卵期に近づいたら排卵期に高くなるホルモン値(LH・E2)を、高温期には着床時期の ホルモン値(E2・P4・PRL)を測定する。

❷超音波検査

 腟から超音波プローブを挿入し、子宮の状態や卵胞の大きさなどを確認する。

❸ヒューナーテスト

 性交後、子宮の中の運動精子数を調べる。

❹子宮卵管造影検査

 造影剤を子宮へ注入し、X線写真を撮影して卵管の通過性と子宮の形を確認。
月経の出血が終わってから排卵までの間に行う。
このほかに当院では、クラミジア検査や甲状腺ホルモン検査も併せて行います。
また、ご年齢が 30代後半以降の方、月経のサイクルが短い方、卵巣が小さい方など、卵巣機能の低下が疑われるような場合は、★AMHの値も積極的に調べるようにしています。

★AMHって?

抗ミュラー管ホルモンとも いう。発育卵胞、前胞状 卵胞から分泌されるホル モンのことで、このホルモ ンの値から卵巣の予備能 力を知ることができる。

検査で不妊原因をすべて 解明できるわけではありません

基本的な検査で異常が見つかった場合、たとえばヒューナーテストが不良だったら、抗精子抗体検査や、子宮卵管造影検査で詰まりや癒着があったら、状態によっては腹腔鏡検査など、その先の検査に進むこともあります。
このように一通り検査を行うのですが、残念ながら検査で不妊の原因をすべて解明できるわけではありません。
検査で調べきれない隠れた原因は、治療をしていくことでわかってくる場合もあります。
不妊治療はそのような考え方で進めていく治療なのですが、初めての患者さんにしてみたら、原因と検査と治療というのが全部結びつかないと、もしかしたら納得できないかもしれません。
1回の説明ではなかなか理解していただけないと思うので、当院では資料をお渡しして読み返してもらったり、それを看護師と一緒におさらいしてもらうなどの方法で、しっかりご説明しています。
患者さんそれぞれの背景、不妊原因はまったく異なります。
多くの情報を得ることができる時代ですが、逆にその情報に振り回されてしまう場合もあります。
ですから、まずは一度勇気を出して受診し、ご自分の現在の状態を診てもらうのがいいと思います。
そして、必要があれば検査や治療を受けられることをおすすめします。
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全記事、不妊治療専門医による医師監修

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