不妊治療ABC~不妊治療の主な流れを教えて!

これから不妊治療を始める方に、不妊治療専門・秋山レディースクリニックの 秋山先生が不妊治療の基本をお伝えしていきます。

第 3 回目は、不妊治療の主な流れについて詳しくご説明します。

秋山 芳晃 先生 東京慈恵会医科大学卒業。東京慈恵会医科大学附属 病院、国立大蔵病院に勤務後、父親が営んでいた産科医 院を継ぎ、不妊専門病院として新たに開業。O型・やぎ座。 2014年から診察を予約制にするために準備中。初診の患 者さんは現在、婦人科も含めて10~15人ほど。予約制に したほうが、診察まで長くお待たせすることなく、患者さんにと っても快適なシステムに。

治療を受ける前に知っておこう!

●ケースによって治療の流れは変わってくる
●タイミング法は6回、人工授精は2 ~ 6回が目安
●最初から細かく決めず、結果を見て治療の選択を
ももさん(専業主婦・年齢秘密) Q. 不妊治療に通い始めて5カ月にな ります。昨日、ヒューナーテストの 結果から、「自然妊娠は難しいかも」 と先生に言われました。人工授精は どのように行われるのでしょうか。 麻酔とかするのですか?   もう今か ら不安でいっぱいです。

ファーストステップは タイミング法

まず、不妊治療の流れについてご説明していきましょう。
不妊治療には、一般不妊治療といわれる「タイミング療)法」「人工授精」と、高度生殖医療といわれる「体外受精」「顕微授精」があります。
基本的に、不妊治療を初めて受ける場合はタイミング法からスタートしていきますが、患者さんの年齢や不妊期間、治療歴、卵巣予備能を表すAMH(抗ミュラー管ホルモン)の値、月経中のFSHによる卵巣機能評価の結果などにより、治療のステップが変わってくることがあります。
左右の卵管が両方とも塞がっている場合には卵管の手術を優先したり、最初から体外受精をご提案することもあります。
また、精液の所見が不良であれば、泌尿器科での検査や治療をおすすめしたり、体外受精や顕微授精などを行わざるを得ないこともあります。
また、手術をしたほうがよい子宮筋腫や卵巣嚢腫などがある場合は、先に手術を受けていただくケースもありますね。
 一般的には、ヒューナーテストの結果をみ ながら数周期はタイミング法を行い、ももさんのようにヒューナーテストの結果が不良であれば、やはり人工授精をご提案することになると思います。
ヒューナーテストが良好であれば「人工授精は無意味」と考え、体外受精にステップアップする選択肢もあると思いますが、ヒューナーテストが良好でも、その後の人工授精で妊娠されるご夫婦もいらっしゃるので、当院ではそのようなケースでも人工授精のステップを踏んでいただくようにご提案しています。
次は、一般不妊治療の詳しい治療内容について解説していきましょう。

タイミング法は 6回程度が目安

タイミング法とは?

不妊治療のファーストステップであるタイミング法は、超音波での卵胞径(卵胞の大きさ)の計測やホルモン計測の結果を見て、排卵日と思われる付近に性交渉をもっていただく療法です。
卵胞の成長が見られた時点で、HCGという注射やGnRHアゴニストという薬の点鼻薬で排卵の引き金を引いてタイミングを合わせやすくする方法をとることもあります。
クロミフェンなどの排卵誘発剤を用いることで妊娠率が少し上がるといわれていますが、クロミフェンを長期間使い続けると、頸管粘液が少なくなって精子が入りにくくなったり、子宮内膜が薄くなり、かえって妊娠しにくくなることもあるので注意が必要です。
正常なご夫婦が1回目のタイミングで妊娠される確率は 15 ~ 20 %程度といわれています。
期間としては、だいたい半年、6回くらいが目安。
1年、1年半とタイミング法を続けて妊娠される方もなかにはいらっしゃいますが、あまり長期間にわたると性交渉の回数が減ってしまい、セックスレスになってしまう傾向もあるようです。

人工授精は 2~6回が目安

人工授精とは?

人工授精は、超音波での卵胞径の計測やホルモン計測の結果、排卵日と思われる付近に、管で精子を子宮内に注入するという方法です。
卵管内や卵胞内、腹膜内に注入する方法もありますが、子宮内に注入するのが一般的ですね。
妊娠が成立しやすいのは、排卵の少し前から直後の時期です。
タイミング法と同様に、通常は卵胞の成長が見られた時点で、HCGという注射やGnRHアゴニストという薬の点鼻薬で排卵の引き金を引いて、翌日から 36時間後に行います。
できるだけ動きやすい状態の精子を得ることや、女性側の感染やその後の腹痛などを避けるために、洗浄・濃縮した精子を注入するのが一般的です。
ももさんは、痛みがないか心配されているようですね。
挿入する管や、精子を注入する刺激で、多少の違和感や痛みを訴える患者さんもいらっしゃいますが、ほとんどの場合、麻酔なしでも痛みはありません。
処置後は、感染を抑えるために、念のため抗生剤を内服していただきます。
また、排卵誘発剤を使用して人工授精をすると妊娠率が上がるといわれていますが、多胎妊娠のリスクもあります。

当院では、年齢が若い方であれば最初の3~4回は自然周期でトライして、それで結果が出ない場合は、残りの2~3回は排卵誘発剤を使って行うという形をとることが多いですね。

何回くらいトライすればいいかということですが、人工授精で妊娠した方の 80 %が4~6回目までに妊娠するといわれているので、20 代~ 30 代半ばの方であれば、その回数が人工授精を続けていくかどうかの目安となります。

年齢が高い方、 30 代後半~ 40 歳以上の方は、2回くらいでうまくいかなければ、時間を有効に、より効率的な治療を行うために、体外受精へのステップアップをおすすめしています。

初めから治療の計画を 細かく立てる必要はない

治療を始める前に「この治療を何回やって、何月までにダメだったらこうしよう」などと、細かく計画を立てる必要はないと思います。
不妊治療についてご夫婦で理解を深めて、前もって二人の考えを確認しあうことは大切ですが、治療法の選択やステップアップについては、結果によって状況が変わっていくので、その都度、決めていくほうがいいと思いますね。
基本は奥さまが中心となって、要所要所ではご主人もきちんと参加して二人で決める。
それが理想的なのではと思います。
※AMH(抗ミュラー管ホルモン):発育卵胞、前胞状卵胞から分泌されるホルモン。血液中のAMHの検査値から卵巣の予備能を知ることができる。ミュラー管抑制因子ともいう。年齢によって基準値が異なり、31歳以下で は6.21ng/mL、40歳代半ばでは1.00ng/mL程度といわれる。
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