【Q&A】今後の治療方針について~政井先生

りっちゃんさん(38歳)

初めてご相談させていただきます。
不妊治療を始めてから4年経ちます。
片側の卵管が通っておらず、年齢的にも早い段階で体外受精を行なっています。
採卵を6回、うち新鮮胚移植を3回(すべて陰性)、初期胚凍結からの胚移植を1回(着床しかけたが、hCG数値上がらず陰性)、胚盤胞凍結からの融解胚移植を1回(胎嚢確認までいくも2日後には流産)となり、今は流産直後なので、2周期リセットしたらまた採卵からスタートです。
やっとの想いで胎嚢確認までいけたのに、喜びも束の間過ぎるほど、早い段階で完全流産を経験しました。
こんなにも早く流産することはあるのでしょうか?
また私が便秘気味で、流産した当日にトイレでお腹に力を入れてしまったから、出血してしまったのでしょうか?
胎盤の一部の絨毛が病理検査で確認され、「妊娠はしていた」と先生から言われましたが、それは私が「妊娠出来る」という意味で言ってくれたのか、私の身体に問題がある意味だったのか……。
今後の治療方針も恐らく前回同様だと思われますが、モヤモヤしてしまいます。
不育症の検査を行なった方が良いのでしょうか?
他にやってみたら良い検査はあるのでしょうか?

政井先生にお聞きしました。

佐久平エンゼルクリニック 政井 哲兵 先生
鹿児島大学医学部卒業。東京都立府中病院、日本赤十字医 療センター、佐久市立国保浅間総合病院、高崎ARTクリニック 勤務を経て、2014年に佐久平エンゼルクリニックを開院。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください 
拝見いたしました。
これまでの不妊歴や卵管が片側閉塞している状況を考えると、方向性としてはART(体外受精)でよいかと思います。
ただ、これまで同様のやり方を続けても進歩がないように思われるため、違う視点での対策を考えてみたいと思います。

まず、身長160cm、体重81kg以上という状況、かつ、平時より降圧剤(アルドメット)を使用している状況を考えると、明らかに肥満+高血圧合併という状況にあると思います。

(すでに生活習慣病の域に入っているという状況です)
肥満と不妊症は明確な関連があるとされており、卵子の質の低下、排卵障害など妊娠する上で明らかに不利な状況になります。
また、受精卵が着床する上でも肥満は明らかに着床障害の原因になるとされています。
また、妊娠前から肥満や高血圧がある状態は妊娠後の周産期リスクが上がる可能性が高いと思われます。
(妊娠前から高血圧がある状態では高血圧合併妊娠として特別な周産期リスク対応が必要になってきます)これらを総合的に考えると、ただやみくもに体外受精を行うよりも、健康的なダイエットを併用して、減量により体外受精成績の向上を目指しつつ、将来的な妊娠に向けて周産期リスクを下げるための対策も同時に行って行くことを提案したいと思います。

便秘による腹圧と流産の関係、これについては関連性は低いと思います。

子宮は子宮筋という筋肉の塊で出来ていますが、腹圧をかけたからといってその力が直接子宮に作用することは
考えにくいためです。
むしろ、便秘による腹圧はさらなる血圧上昇など別の意味で健康を害するような影響に繋がっていく可能性はあると思われます

不育症検査について、例えば、明らかに良好胚と思われる卵を複数回移植しても着床しない、または流産を2回以上繰り返すなどの状況があれば、不育症検査を検討してもよいかと思います。

ただし、不育症はその範疇が非常に広く、検査を行っても原因が特定できるものは全体のおよそ1/3程度とされ、残り2/3はいわゆる原因不明不育症という分類になります。
原因不明の中には、真の原因不明(あらゆる検査を行ってもその原因が特定できないもの)から、いわゆる受精卵側の染色体異常(染色体異数性)が原因となっているケースも含まれます。
最近では特に、反復での体外受精不成功例についてPGT-A検査(着床前染色体胚異数性検査)を行うことができる施設も増えてきており、もし現在治療中の施設がこの検査の認定施設になっているようであれば、次回の採卵にあたり胚の染色体異常の有無を確認してみるということも一つの方向性になる可能性は考えられます。
染色体異常が原因の着床不全の場合は根本的な治療はありませんが、これまでのなかなかうまく行かない状況の一つの可能性を説明する根拠にはなるかと思います。

私からの提案、方向性としては体外受精を続けていくことでよいと思います。
治療の成果を少しでも高めるため、また将来妊娠した際のリスクを下げるために減量を行ってみてはどうでしょうか?

そうすると、結果的に卵の質が上がる可能性もありますし、着床不全や流産等のリスクも減らせる可能性が出てきます。
年齢的にはまだ十分チャンスのある年齢です。
ぜひ前向きに取り組んでみていただいて、後悔のない治療を進めていただけたらと思います。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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