先生から言われた治療法に納得できません

可能であれば人工授精を希望。顕微授精がベストな選択ですか?

高橋ウイメンズクリニック 高橋 敬一 先生 金沢大学医学部卒業。国立病院医療センター( 現・国立国際医療研究センター)、虎の門病院を経て米国ワシントン大学に留学。1996 年虎の門病院に復帰した後、1999 年千葉市に不妊治療専門『高橋ウイメンズクリニック』を開院。2014 年ベストドクター認定( ベストドクターズ社)。
かなっぺさん(38歳)不妊治療を始めるにあたり腹腔鏡手術で直径12㎝を含めて13個の子宮筋腫を摘出しました。そして約半年を経て治療を開始。私の検査は問題ありませんでしたが、夫の精液検査は標準以下(44 歳、精液量0.7㎖、濃度540 万/㎖、運動率9%・直進運動率5%)だったため顕微授精をすすめられました。初めての不妊治療でいきなり顕微授精はとても不安です。少しでも可能性があれば人工授精をやってみたいのですが、選択肢はこれしかありませんか。男性不妊の治療についての意見もお聞きしたいです。

ご主人の検査結果で先生が気になったことは何ですか。

高橋先生●精子の検査は1回だけで断言できませんが、お寄せいただいた結果だけでみると人工授精での妊娠は難しいかもしれません。また、奥様についても問題点が2つあります。
1つは38歳という年齢。第一選択に体外受精を考えてもおかしくない年齢です。
2つめは12㎝の大きな子宮筋腫を含めて13個も摘出する大手術をしたこと。
手術後は卵管造影検査をされたのか不明ですが、おそらく手術によって卵管は癒着したり、子宮の中も影響を受けている可能性が高いのです。手術時の出血や傷は卵管の癒着の原因になるからです。そこで卵管造影検査と子宮鏡検査、ご主人は精液検査をもう1回お受けになり、人工授精の可能性をご確認するのがいいでしょう。今回の精子の結果からは、人工授精で妊娠する可能性は50回に1回程度で、手術の影響も考えると更に低いと推測されます。

やはり顕微授精がベストな選択ということでしょうか。

高橋先生●医師は医学的に正しいことをおすすめしますが、不妊治療はご夫妻の納得した治療をすることがとても重要なのです。ですから「私たちは人工授精をしたいので1、2回させてください」と言っていいのですよ。これから始まる治療に、この考えをぜひ生かしてほしいですね。

かなっぺさんは、いきなり顕微授精ということにも不安を抱いています。

高橋先生●世界的にみて体外受精は、精子を振りかけるc-IVFと顕微授精(ICSI)では1対2の割合で、顕微授精のほうが多いのです。それだけ安全な技術になっている証。かなっぺさんのケースは決して特殊ではないのですね。

ご主人の治療についてはどうですか。

高橋先生●男性の不妊治療はこの30年間あまり進んでおらず、特効薬も出ていません。そのなかで漢方薬やビタミン剤等がよく使われ、有効率は30%くらいです。薬を使用していいのですが、今のご夫妻には時間(年齢)が大切ですから、精子が良くなるのを待つことはおすすめできません。それらを併用しながら治療しましょう。また、良い精子をつくるためには射精することも大切です。治療中はできるだけ性交渉を持っていただくほうがいいでしょう。そして、納得する治療をお受けになってください。
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