子宮筋腫があり移植に失敗。筋腫の治療とERA 検査どちらが有効?
移植をしてもうまくいかない場合は、対応策として「着床の窓」を特定するERA 検査があります。子宮筋腫や40 歳という年齢のハードルもあるなか、ERA 検査ほか着床障害の対策について、厚仁病院の松山先生にお聞きしました。
ドクターアドバイス
「着床の窓」を特定し妊娠率向上を目指すERA検査
――ERA検査とはどのような検査でしょうか。
松山先生● ERA 検査は日本語では子宮内膜着床能検査といいます。子宮内膜には受精卵が着床できるための一定条件があるといわれていて、特定の時期以外には受精卵を受容できない、つまり着床できないといわれています。子宮内膜が受精卵を受け入れるために最適な状態となり、着床可能になるタイミングが「着床の窓」ということになります。
ERA検査では、子宮内膜の組織を解析し、着床能に関連する遺伝子を調べて「着床の窓」を特定します。その「着床の窓」に合わせて胚盤胞移植を行うことで、妊娠率が向上するということがいわれています。ただ、ERA検査だけに頼らず、いろいろな方面からの検査を行い、あらゆる原因と可能性を探ることをおすすめします。
着床がうまくいかない場合には複数の対応策を検討して
――では着床がうまくいかない場合、ERA検査のほかに、どのような検査がありますか。
松山先生●着床がうまくいかない場合、子宮内膜の問題、胚盤胞の問題、子宮内膜と胚盤胞との相関関係の問題等、3つの方面からのプローチが必要かと思われます。
子宮内膜側のアプローチとしては、ERA検査のほかに慢性子宮内膜炎検査や子宮内フローラ検査も視野に入れます。たとえば、検査により慢性子宮内膜炎が認められた場合、当院では抗生剤を投与します。また子宮内フローラ検査では子宮内の複数の菌の割合を調べることができます。子宮内膜の着床環境が悪くなっていないかどうかをみていきます。
また、ひいこさんの場合、妊娠8週で稽留流産となっていることから、胚盤胞の染色体異常の可能性も否定できません。検査費用はかなりかかりますがERA検査だけに絞らずにさまざまな角度から原因を探ることが大切です。
子宮筋腫の治療後は採卵期間に充てる
――筋層内筋腫はどのような症状のことをいいますか。また、不妊に影響を与えるのでしょうか。
松山先生●子宮筋腫はできる場所によりいくつかに分類されます。発生する場所により症状が大きく異なります。筋層内筋腫はその名のとおり子宮の筋肉の中にできるものです。筋腫のできる場所と大きさなどによって着床の邪魔をしているかどうかがかわってきます。小さいとはいえ主治医が疑うくらいなら、やはり見過ごせないと思います。
――子宮筋腫の手術をすると、しばらく不妊治療ができないことを理由に、治療を後回しにする方が多いように思います。
松山先生●今後の主たる治療を体外受精としてお答えします。
たしかに、手術をしてしまうと、数周期は移植ができないので、年齢的に時間がない人の場合は筋腫の切除をせず、体外受精を優先する場合もあります。ですが、筋腫を取った後も採卵はできますから、手術後、移植が可能になるまでの間を採卵時期に充てるという考え方もあります。